さて、体育祭まで時間がない。
僕が来た!と宣言する為には自分の修行をするべきだが、ここは敢えて他人の世話をする事で、自分自身の格闘技を見直してみる。
他人に教えるという事は、自身がしっかり動きを身に付けている必要があるのだ。
と言うわけで先生から許可を貰い、麗日さんを誘って練習場を借りた。
決してデートではない。何故ならかっちゃんも一緒に修行するからね。
「麗日さんの個性は、相手に触れたら無力化できる強い個性だけど、そもそも触れないと意味が少ないよね」
「うん、この前も思ったよ」
「だから、麗日さんこそ格闘技を学ぶべきなんだ。」
とりあえずは基礎体力、筋力作りが必要かな。後は基本的な型を教えて、散打(組手)をしながら身につけて貰うか。
本来なら套路(連続した型の流れ)を繰り返して攻防方法や歩法、呼吸法を学ぶべきなんだけど、体育祭まで時間がない。
体育祭が終わったら教えるとして、一先ず基本だけでも…。
麗日さんにトレーニングして貰ってる間は、かっちゃんと組手を行う。
個性はなしで、制空圏の感覚を強め相手の動きに合せて流す訓練だ。
反撃は不可。とにかく相手に合せる感覚を掴んで貰う。
次の日から、友達の飯田くん、格闘技仲間の尾白くん、切島くん、余り話した事はなかったけど、同じ増強系の砂藤くんにも声をかけてみた。
4人共、参加してくれたよ。
飯田くんには腕を使った長距離形の拳法、砂藤くんと切島くんには震脚を使った拳法を教えて、個性に合った攻撃方法を考えてみた。
尾白くんは、お互いの格闘スタイルを確認した後、実戦形式で組手をしてみる。
かっちゃんとお茶子ちゃんには、変な癖が付かない様に交互に組手をして、実際の動きを覚えて貰った。
次の日になると、声をかけてない八百万さんや芦戸さんなんかの女性陣、口田くんや上鳴くんの男性陣も加わってきた。あれ?轟くんと青山くん以外、全員来て無いかな??
反撃しないかっちゃんに、こんな機会はないと皆で寄って集って攻撃している。
しかしかっちゃん、躱す躱す。
え?あれ?流水制空圏、物凄く洗練されてないかい!?あれ僕でも拳を当てるの、苦労しそうなんだけど!?
今や、複数で同時に攻撃しているけど、全く当たらない。攻撃している方が疲弊している。後ろからの攻撃も、見ずに躱しているんだけど。
というか目を瞑っている。相手の目を見て動きを捉えろと教えたけど、第1段階を洗練して極めようとしてる?
やがて皆疲れて倒れた後、かっちゃんが目を開けてこっちを見る。
「よう、デク!そろそろ暖まってきたから、組手しようか…!」
あ、はい。組手させて頂きます。全く、天才ってやつは!
訓練が終わって掃除をしていたら、峰田くんが寄ってきた。
「緑谷、麗日と二人っきりを狙っていたんだろうが、残念だったなぁ」
はて?ナンのコトやら。
最初から、かっちゃんも居ましたよ?
「隠さなくて良いぜ?麗日と2人きりでイチャイチャしようったって、そうはいかせないぜ!阻止する為に、皆を集めたんだからよ〜!」
皆が集まった原因は君か!
そりゃ彼女と校内デートは学生時代にやりたい事のトップクラスだけどさ!!
いや、それよりも麗日さんが後ろで聞いてて、真顔で赤面してるんだけど!?その上、芦戸さんや葉隠さんが麗日さんをからかっている!?
麗日さんが反論しているけど、怒ってるんだか恥ずかしがってるんだか、判断が付かない!
峰田君、なんでこう、的確に意識させる事を言ってくるのかなぁ?麗日さんとどう話せば良いか、分からなくなるよ!
授業が終わって教室を出ようとすると、入口が人集りで溢れていた。
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろザコ」
おおう、かっちゃんがヘイトを集める。
それにシビレもしないし、憧れもしないけど。
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
そして喧嘩を盛大に売ってくる、紫髪の普通科のやつ。
凄い!あのかっちゃんに良く吠えた!
しかも僕達に成り代わり、ヒーロー科に這い上がる宣言している!
勇気あるなぁ。
「隣のB組のモンだけどよぅ!敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってんだがよぅ!エラく調子づいっちゃってんなオイ!」
更に凄いのきた!
しかしヘイトを集めたかっちゃんは。
「関係ねえよ…上に上がりゃ、関係ねえ」
そう言い残して教室を出た。
うん、流水制空圏の訓練成果か、まるで無人の野を行くが如く人集りの中をすり抜けていく!
残されたのは、ヘイトを押し付けられた僕達と、ヘイトを向ける群衆。皆、困惑してる。
仕方ないなぁ…。
「ところで!僕達はこれから自主訓練をするんだが、一緒にどうだい?廊下から覗いたって何も分からないだろ?」
「はあ!?そんな事言って、こっちの手の内を調べるつもりだろうが!そんな手には乗らんぞ!」
ん?何を言ってるんだ、そんな事ないのに!
「そんな訳ないよ!ヒーローなんて常に情報が出回った状態で敵と対峙しているんだ!敵に対策されているのを知った上で戦っているんだろ!?手の内を知られるのが何だ!それを乗り越えるのがPlus Ultraじゃないか!!」
そう言うと、流石に反論できないか?
「いや…しかし…」
「しかしもカカシもないよ!特にさっきの紫髪の普通科の人!そんなヒョロガリでヒーロー科が務まると思うのかい!?一緒に鍛えよう、来なよ!!」
ぐっと詰まる紫髪くん。しかし、何とか言葉を吐き出す。
「俺は宣戦布告するって言っているんだぞ!情けなんか要らん!」
「それこそナンセンスだよ!僕達の敵は、何処にいるんだ!?ここには居ないよ!君がヒーロー科に来ると言うなら、それは頼もしい仲間が増えるって事じゃないか!!」
皆、行こう!と合図して廊下に出る。群衆は割れた様に広がり出来た道を、皆を引き連れて歩いて行った。
うん、何人か付いて来ているな。さっきの紫髪も。よし、こんな半端な敵情視察なんてする暇がないくらい、鍛え上げてやろう!
「しかし緑谷くん、君のリーダーシップは素晴らしいな…。俺より、委員長に向いているのではないか…?」
「違うよ飯田くん。今回は、かっちゃんの尻拭いなんだから」
どっちかと言えば、さっきのは扇動に近いし。
さあ、体育祭まで時間がない。
ん?そういえば、ヘイトを集めたかっちゃんも訓練施設にいるんだよね?鉢合わせ?
…うーん……ま、良いか!!
オマケ
「お前、超電磁空手ってのを使うんだって?そいつを教えてくれよ」
「あ、俺も俺も!(こいつの強さを見極めてやるぜ)」
「良いよ!初めてだよ、空手習いたいって奴は!さあ、先ずは筋肉を制御して
「「で、で、で、出来るかぁ!!!!」」
オマケその2 麗日視点
今日、デク君から誘われて、格闘技を習う事にした。
デク君とは入試の時からの知り合いで、まだ短い付き合いだけど、物凄い努力家ってのは知ってるんだ。
個性も凄いけど、それ以上に空手っていう格闘技をずっと続けているって聞いた。
そんなに苦労して身に付けた技術を、私に惜しげも無く教えてくれるって…。
こないだのヒーロー教育の授業で、私はデク君に対して、何の手助けも出来なかった。やっぱり、ヒーローなら強くなればやれる事が増えるんや。
そう言うわけで、デク君が予約したトレーニング室へ向かってる。でも…他に誰も来ない…?
え?もしかして私だけ…??デク君と二人きり…。
「お茶子さん、僕は…初めて会ったその日から、君の事が…!!」
いや、いややわ〜!どうしよ!
あり得る?デク君、真面目だからそんな馬鹿な事はしない…はず…だけど…。
ちょっとだけ…ほんの少しだけ、期待しても良い…かなぁ?
そう思いながら、トレーニング室のドアを開けた。
悪鬼羅刹がいた。
直ぐに閉めた。
え?え?こ、ここよね…?間違ってないよね…?
そっとドアを開ける。悪鬼羅刹と、目が合った。よく見たら、爆豪君だった。
「おい、丸顔!お前もデクに呼ばれたんだろうが!!」
間違ってなかった。間違えて欲しかった。
そっか〜。二人きりじゃなかったんだ…。
そ、そうよね…。考えてみたら…。ガクシッ!