雄英体育祭、本番当日。1ーA控え室にて。
いや教室じゃなくて、専門の部屋があるのか。広い高校だ。
全員体操服を着用してる。コスチュームは公平を期す為に不可だ。
とりあえず僕は落ち着く為に、呼吸法を用いて深呼吸をしていた。
「緑谷」
「ん?轟くん…なに?」
寡黙でエリートっぽい轟くんとは、今迄あまり話してこなかった。それが向こうから話し掛けてくるとは、何だろ?
「おまえは強い。客観的に見ても、俺より実力があるかも知れない」
「え?あ、はい…」
「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな。…おまえには勝つぞ」
…すこい!宣戦布告を受けたよ!!
切島くんが止めようとするが、それを止める。
「悪いけど、武術的に見たら客観的に僕の方が強いんじゃないかと思うよ。中途半端な気持ちで掛かってきたら、叩きのめすからね」
「こらデク!てめぇを潰すのは俺だ!!」
ああ、うん、かっちゃんは変わらないなぁ。
もはや実家の様に安心するよ…。
そして、体育祭が始まった。
『1年ステージ、生徒の入場だ!!』
いよいよ、入場する。回りを見れば、何千…何万人いるんだ!?
プレゼントマイクが紹介してくれるが、ちょっと偏り過ぎてるよ。もう少しサポート科や普通科にも脚光を…。
「選手宣誓!!」
18禁ヒーローのミッドナイト先生が主審として宣言する。青少年にはかなり刺激的な姿をしている。
峰田くんは肯定しているけど、やっぱり18禁なのに高校にいちゃ駄目なんじゃ…。
それより、この人、お歳は幾つだったか…。
「そこ!選手代表1ーA緑谷出久!!変な事考えないで、早く前へ出る!」
何故かこういう時の女性の勘は鋭すぎる。
一応、入試の首席だからね。選手宣誓の役目を任された。
「宣誓!僕達はヒーローシップに則り正々堂々と戦う事を誓います!」
まずは普通に宣言する。
「そして、宣誓ついでに僕の話を!」
「僕は1年前に個性が発現するまで、無個性として過ごしました!回りからヒーローは無理だ、駄目だ、諦めろと言われてきました」
「しかし、それでもヒーローになる夢を諦めませんでした!」
「ヒーローになる為なら、犯罪以外は何でもやってきました!」
「今、ヒーロー科にだけ脚光を浴び、普通科やサポート科、まして同じヒーロー科の中にも憎々しく思っている人がいるでしょう」
「僕に対しても、運が良かっただけ、大した実力はない、この場から引き摺り下ろしてやると思っている人もいるでしょう」
「しかし、僕がやってきた努力!修行!そして覚悟!!」
「それらは生半可な気持ちでは通用しません!」
「それでも、僕に挑戦してくると言うのなら」
「かかって来い!受けて立つ!!」
ここまで宣言して、礼をして壇上から降りる。
僅かな間、シンとしていた客席から、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
そして、先程まで倦怠感が感じられた選手側から、燃える様な覚悟を感じる事ができた。
うん、多少なりとも闘志を燃やす奴らが出たか。こうでなくては面白くない。
オールマイト、燃える彼らと争い、優勝してみせます!
そして、最初の競技が始まる。
ミッドナイト先生が紹介する、第一種目は障害物競走だった。
計11クラスでの総当たりレース。しかも全長4kmの距離だ。長過ぎる…障害物マラソンじゃないか!?
そして何をしてもいいルール。
『スターーート!!』
一斉に全員でスタートの入口ゲートへ雪崩込む!狭い!!
スタート地点が最初のふるいになってる。
が、入口通路の両脇の壁は高さがある。
壁を蹴って左右に飛び跳ねながら皆の頭上を進むのは、ワン・フォー・オールを使えば簡単な事だ。
そして地面が凍りつく。轟くんの仕業だな?
僕には関係ないし、クラスの皆も何らかの方法で抜け出してきた!
僕もスタートから飛び出し、氷を砕きつつ先行する轟くんを追いかける。
うう、カッコつけて後方に居た分だけ、先頭に立っていた轟くんに中々追い付かない。
何をしてもいいって言っても、回りの人達を吹き飛ばしたら駄目だよね~。
と思いつつ前に出る事ができた!が、眼前立ちはだかる壁、0Pロボットの群れ!
直ぐにロボットはアンバランスな格好で凍りつく。轟くんだね!自分の通過と妨害を兼ねてロボットを凍らせたか。
うーん、ここで素早く通過するには…他の人達も得するが、一つ派手に行こう!
「超電磁正拳突き!」
ワン・フォー・オールを使いつつ、目前のロボット達をまとめて吹き飛ばす!ついでに飛ばした先は、轟くんの所!
あ、ロボットが切島くんとB組の鉄哲くんを巻き込んで倒れた。
「「うわあ、緑谷ァァァ!?」」
ごめんね!ま、大丈夫でしょ、あの2人なら。
一気に開けた会場を走り抜けると、轟くんが飛んできたロボットを再度凍らせていた。
「デクうぅ!待てや〜!!」
ちなみに直ぐ後ろから、鬼の様な悪魔の様な顔の幼馴染が追い掛けてきてる。ちょっと怖いよ、ナタとか持ってないけどホラーだよ!
轟くんに追い付いた所が、次の障害物ザ・フォール!?
この地形、直径数百mかある大穴に柱状の足場が何本もあって、太いロープでつなぎ合ってる。コースいっぱいに大穴があるから、ロープを渡らないと進めない。
いや、こんな地形無かったよね!個性でやったんだろうけど、金をかけ過ぎ!
しかし、僕には余り関係ない。
拳法家に大切な身体能力として、筋力、体力、柔軟に続いて体幹というものがある。
いわばバランス感覚みたいなものなんだけど、体幹がしっかりしてないと突きも蹴りも本来の威力を出せないし、防御しても直ぐに倒れてしまう。
体幹をしっかり鍛えた僕に取って、こんな太いロープは平均台より簡単なものだ。
ほとんど地上と同じ速度で駆け抜ける。
「轟くんより前に出たけど、今度はかっちゃんが真っ直ぐ飛んで行く!」
いや、空を飛ぶのはちょっとズルくない!?
僕も飛びたい!…ん?なんか飛べるアイデアが…。
それよりも、最後の障害物は地雷原!?雄英、何してんの!?
轟くんも直ぐ後ろに迫ってきてる、かっちゃんはやや先行してる、今やトップ3人で1位争いだ。
この中で2人を妨害しつつ先を急ぐには!
「何も考えず突っ走る」
次々に爆発する地雷、回りの地雷も誘爆してかっちゃんや轟くんにも被害を及ぼす。
しかし超甲殻三戦法をマスターし、場裏亜空間を自在に使える僕にはそよ風の如く!
むしろ推進剤にしてやる!
「デク!てめぇ…ぶわぁ!!」
「み、緑谷ぁ!」
ハッハッハッ強者の悲鳴は心地良いよ!
地雷原を抜けて回りに誰も居なくなれば、もう遠慮なく超電磁空手を使える。
「超電磁蹴りぃ!」
超音速の蹴りを地面に水平に近い角度で撃ち出し、場裏亜空間を円錐状にして拳と共に前へ出す。飛び出す姿は地表すれすれを飛ぶ、身長40mの赤と銀色の宇宙人だ。
もちろん蹴った瓦礫と衝撃波は後方の二人へ。
ほとんど最後っ屁である。
『さァ雄英体育祭1年ステージ!1位は1ーA緑谷出久だー!!』
ゴールをくぐった途端、プレゼントマイクの声が聞こえてきた。どうやら、競技に集中し過ぎていたらしい。
まずは緒戦を制覇したぞ!!予選だけどね。