昼休み、轟くんに呼び出された。
「それで…話って何かな?」
轟くんは無言で睨んでくる。少しばかり無口で、中々掴めない性格だけど、何となくきっかけがあれば一気に仲良くなれる様な気がする。
「なァ…おまえは、オールマイトの隠し子か何かか?」
んん!?何か、変な疑い掛けられている?
「違うよ!うちの母さんは浮気する様な性格してないよ!」
「まあ良い…」
いや、良いんかい!
それから轟くんは、No.2ヒーローのエンデヴァーが個性婚で母親と結婚した事、オールマイトを超えられない対策として、自分を作った事、母親に「おまえの左側が醜い」と煮え湯を浴びせられた事、そんなクズの道具にはならない事を話してきた。
話だけ聞いたら、エンデヴァー、相当クズな毒親だよ…。まあ、双方の話を聞かないと、真実は見えてこないと思うけど…。
いいや、差し引いても酷いよね!?
「俺がおまえにつっかかんのは見返す為だ。クソ親父の個性を使わず一番になることで、奴を完全否定する」
そこまで話して、時間を取らせたなと轟くんは去ろうとするけど、これだけは言っておかなくては。
「轟くん、君が右だけでやっていくのは構わないと思う。人にはそれぞれ、信念やこだわりがあるもんだ。でも…」
ぐっと拳を握る。
「僕は長らく無個性だった。それでも、ヒーローとなり誰かを助けて自分も生き残る為に何でもしてきた。そんな僕からすれば、君のやってる事は餓死する直前に目の前で、魚嫌いだからと食い物を捨てられる様なものなんだ」
轟くんの人生も辛かったんだろうが、別にこっちも平穏な人生送ってないぞ。
無個性を乗り越えるために、虐待とか拷問とかを飛び越えた修行をしてきたんだ!!
「それに前の競技で僕に負けた様に、いつか右だけでは敵わない敵が出てくるだろう。それでも右に拘るなら良し。でも!その時に犠牲になるであろう人達に、左も使えば守りきれたであろう人達に、俺の信念の為に死んでくれと言える覚悟はあるの?」
轟くんから怒気が発せられる。そんな事にはならないと。しかし甘いと思う!
「僕はヒーローになる為に、どんな事でもやる覚悟でここまできた!そして…最後も君に勝つ!」
僕は勢い余ってだけど、轟くんに宣戦布告をしたのだった。
……そういや、俺の信念(ロマン)のために皆死んでくれ、って言う人物に心当たりがある様な、ない様な…。
「いよ!出久〜」
僕が轟君と別れて戻る途中、通路で声をかけられた。
「あ、エーリカちゃんと陽子ちゃん」
そこには星の保育園の園生である、金髪ストレートのエーリカちゃんと、黒の短髪な陽子ちゃんが立っていた。少し引っ込み思案な陽子ちゃんは、エーリカちゃんの後ろに隠れて僕に手を振ってくれた。
「応援に来てくれたんだね、二人共」
「あんたの師匠達が、何処からか入場チケットを手に入れたからね。もったいないから来てやったよ。中々、活躍しているじゃない?」
「出久…強かったよ!」
「ありがとう、二人共!ヒー姉さんは来てないの?」
「あ〜ヒー姉さんは、アルバイト?」
エーリカちゃんと陽子ちゃんは二人共、
僕はそのヒーローに会ったことないけど、かなり強いって言ってた。どんな人なんだろう?
ヒー姉さんと言うのは、雄英高校生じゃないけど現在高校三年生の星の保育園の先輩で、高校に通いながら、そのヒーローに着いてサイドキックとして学んでいる。
「そっか、忙しいのか…。二人は応援の為にここまで来てくれたの?」
「それもあるけど、出久の彼女の顔を拝みにきたのよ」
「うえ!?か、彼女なんて居ないよ、まだ…」
「ふ~ん…。まあ、いいわ。とりあえずクラスメイトがいる所に案内してよ!」
「ええ〜……。」
僕が二人を連れて競技場に戻ってみると。
「峰田さん上鳴さん!!騙しましたわね!?」
なんか八百万さんが吠えていた。
ん?んん?チアガール?
そんなイベント、あったんだ。エーリカちゃんと陽子ちゃんは怪訝な顔してるけど。
お茶子ちゃんもチアガールになってる。プライベートで僕を応援して欲しい。
「お茶子ちゃん!チアガールやる事になってたんだ!?」
「はひッ、デ、デクくん!?これはあの…」
お茶子ちゃんは恥ずかしそうにモジモジしてる。いやでも、その手のコスチュームって恥ずかしがると余計に可愛さが増すんですけど。
そこで、峰田くんと上鳴くんに騙された事を聞いた。あの2人は一時のエロの為に、今後モテる可能性を捨てるのか…。
よし、こうなったら星の保育園奥義!褒め殺し作戦だ!
「という事は急遽コスチューム作ったのか。八百万さんのセンスは素晴らしいなぁ!こんなにお茶子ちゃんの可愛さが際立つ様に服を調整できるって、個性だけでなくセンスも必要だよ!」
「セ、センスですか!?あ、ありがとうございます…」
「え、そ、可愛いって、デクくん…」
「本当だって!他にも葉隠さんは元気いっぱいな感じだし、芦戸さんや耳郎さんはダンスか音楽やってるのかな?なんかリズム感を感じてカッコイイよね。梅雨ちゃんも普段と違う感じがキュートだし。こんなコスチュームを速攻で作れるなんて、センスある証拠だよ」
八百万さんは恐縮しているものの嬉しそうだ。芦戸さん達も自信が出てきたかな?
よし、その様子を見る限り、皆からの悪い手応えはない。僕の本音でもあるしね。
本当はオリジナルのコスチュームならもっと手放しで褒めるんだけど、アメリカのチアチームと同じ衣装だったから…。少し強引過ぎたけど、ここは勢いで押し切ろう。
「もちろん、お茶子ちゃんも素敵だよ。そんな可憐な姿で他の男を応援するなんて、ちょっと嫉妬しちゃうな」
あ、しまった、言い過ぎた。お茶子ちゃんまた赤面してフリーズした。
芦戸さん、耳郎さんに葉隠さん、緑谷ってタラシなのかなんて噂しない。聞こえてますよ?
星の保育園で叩き込まれただけです…。
特に服装やアクセサリーについては、即座に褒めないとエーリカちゃんやサヤさんから教育的指導が入るし…。
僕はパンパンと手を叩く。
「さあ、せっかく着替えたんだ!観客にプリティでキュアな姿を見せて、1ーA女子は強いだけのヒーローでない事を知らしめようよ!!」
そう言うと芦戸さん、葉隠さんを筆頭に、勇んで連なって行った。あ、お茶子ちゃん真っ赤にフリーズしたまま、連れて行かれた。
これで少しは気分転換になったかな?
ふと横を見ると、峰田くんと上鳴くんが信じられない物を見た目をしてた。
「緑谷…おめえ…俺らを利用して好感度を上げやがった…?」
「どっかのプロデューサー…!?」
うん、まあ、一時の欲に駆られると、碌な事はないよね?少しは反省した方が良いと思うよ?
ふと振り向くと、エーリカちゃんが何とも言えない顔をしてた。
「あんた、また…。サヤ先生も、理想のショタが手に入ったからって、仕込み過ぎでしょ…」
「えへへ…出久、カッコよかったよ?」
エーリカちゃんは呆れた声を出したけど、僕に厳しく指導したのはエーリカちゃんもでしょ!?