もう直ぐ、かっちゃんとの決勝戦が始まる。
ん?その前に準決勝はどうしたかって?
飯田くんとの準決勝は、開始10秒で突っ込んできた彼をひょいと投げたら、場外へ飛んで行って終了しました。観客から見たら、飯田くんが走って僕に躓いて場外に転げ落ちた様に見えたそうです。
まだ拳法教えて2週間だもんな…。虚実の少ない攻撃は、拳法家に取って単調です。また一緒に鍛えよ?
僕の心の中では、瀬呂くんよりどんまい飯田です。
決勝戦、何度も壊されちゃ直された競技場で、かっちゃんと対峙している。セメントス先生、毎度ご苦労様です。
僕は申請して、体操服ではなくコスチュームの道着を着ている。
「おいデク!なんでコスチュームなんだ!?」
「超電磁空手を本気で使うと、体操服では保たないんだ。コスチュームはひたすら丈夫で摩擦熱に強いだけで、元々防御力なんて無いから安心して?」
それ以外に、超電磁空手を広めたいって考えもあるけど、これは本当の事だ。
素っ裸で不戦勝させたら、かっちゃん激怒すると思うよ。
「そうかよ…んじゃ、今日は全力って事だな?」
「うん、超電磁空手の奥義を見せてあげるよ」
かっちゃんはニヤリと凶悪面で笑った。
『START!!』
試合は、静かに始まった。
お互い、ある程度手の内は知っているのだ。
最初は個性を使わず拳法を中心に攻め、かっちゃんも爆発せずに受け流す。
普段のかっちゃんを知ってる人からすれば、なんで大人しいのかと不思議がるだろう。
かっちゃんは既に汗だくだった。試合前に運動して身体を暖めて個性を使いやすくし、最小限の体力消費で良い流水制空圏で闘う、理想的なスタイルだった。
最初の1分は観客も退屈だったかも知れないが、段々技の応酬が速くなっていき、ついにかっちゃんが爆破の個性を使い出す!
もちろん、こちらもワン・フォー・オールを起動、超電磁空手に移行する。
「「おおおおおお!!」」
更にドンドン技は速くなり、退屈とか何とかはふっ飛び、最早何をしているのか大半の人には分からない状況になった。
回し、流し、相殺して隙を作り、かっちゃんに攻撃をくわえるが当たらない!流水制空圏、
「デク!あの竜巻の大技は使わんのか!?」
「いや、あんな隙だらけの大技、かっちゃんの前で使えるわけないでしょ!爆殺されるよ!」
第一、あれは激しい温度差があっての技だ。
一旦距離を取るため、超電磁連突きで衝撃波を発生させる。しかしかっちゃんも爆破で相殺してしまった。
強い!轟くんの時は全力を出させるのに傾倒したが、かっちゃんは初っ端から全力運転だ。そして一切の油断も隙もない。
「く〜〜〜!こんなに早く、ここまで強くなるとは!流石はかっちゃん!」
「てめぇもグダグダ言ってないで、そろそろ本気出せ!」
「身体も暖まってきたからね、行くよかっちゃん!!」
「こいや!!」
「超電磁、夫婦手!」
一気に距離を詰める。ここからが本番だ!
夫婦手ってのは、別に技の名前ではない。
両手を夫婦に見立てて、攻防一体の攻撃をする形の事だ。
実のところ、大陸の拳法にもその手の打ち方は沢山あり…と言うより場合に寄っては基本であったりする。左手で拝む様に相手の拳を払いながら、右手でカウンターを決めるとか。
ただ、ゼッカ師匠が正拳突きなんかの対比として好んで使っていたのと、何となく僕の嗜好に合っていたので使う様になった。
かっちゃんも流水制空圏を使って対抗してくるけど、実際に闘ってみて第2段階の半ばって感じがする。まだ、回避特化の段階かな?
かっちゃんの爆破攻撃をする腕を、弧拳を使って流しつつ肘を入れると、かっちゃんは後方に吹き飛んだ!
その吹き飛んだかっちゃんにピッタリ寄り添う様に自分も飛んで、連撃を加える。
現段階では、格闘技については僕に一日の長ありだ。
いや、格闘経験、どんだけ差があるとお思いで!?それが一日の長って、もう、かっちゃんの天才児!!
さっきから何度もヒットさせているのに、かっちゃんの格闘センスのせいで微妙に軸がずれて芯に入らない!
やべー、やべーよ、この試合、師匠達が見てるんだよ、今迄の地獄の様な修行が、極楽みたいに感じられる事態に成りかねないよ!!
『もう手遅れだ』
師匠〜!空耳が!!いや、実際に言ってるかも!
かっちゃんに放った裏拳が、僅かに躱された瞬間の隙、かっちゃんの派手な爆破が僕の視界を遮る。
その刹那の時間、かっちゃんの蹴りが、レーダーや場裏亜空間の隙間を突いて、臍の下、丹田に入った。
「しまっ…!」
「通ったぞ、デクぅ!!」
丹田を突かれて力が入らない!技が技にならない!そしてかっちゃんの足は…!
ズドンと足裏が爆発し、僕は吹き飛んだ!
ゴロゴロ転がり、競技場の崖っぷちで耐えきる。
追撃するかっちゃんを迎え撃つため、必死に立ち上がるが足がガクガク震えて力がでない。
「デク、俺の、完膚なき、勝利だ!!」
足元から爆音を立てて襲いかかる、凶悪面したかっちゃん。
迎え撃つ僕は、まだ力が入らない。
力が入らなければ、いっそ入れなければ良い。
ふっと全身の力を抜いて、両手を小さく前に構える。僕は猫に追い詰められたネズミ、窮鼠だ。
ふーーーっ。小さく息を吐きながら、眼前に迫りくる拳にスッと手を添える。
かっちゃんはお構い無しに爆破するが、掌の方向を少しだけ逸らしつつ、柳の様に柔らかく、柔拳を以て受け流す!
そのままかっちゃんを場外に投げた、と言うか本人的には多分、幻を殴って素通りした感覚だと思うけど、とにかく場外にすっ飛んで行った。
うーん、他の人ならこれで終わりなんだが…。
爆破で空を飛んで舞い戻って来るかっちゃん。やっぱりズルくない?それ。
かっちゃんは帰って来る反動まで利用して、踵落としをしてくる。まだ足は回復できてない、場裏亜空間を展開しつつ、両腕でガード!
重い蹴りを受けた途端、爆破で追撃、腕は保っても足が保たなく膝を付いてしまう!
間に合うか!?
「超電磁スピン!」
空間を回転させてかっちゃんに逆撃するも、空中で姿勢を変え、飛び蹴りの様に回転の中心を、掌の爆破を推進剤にして突き進む!その格闘センス、僕も欲しい!
「トドメだ!デク!!」
ぐわぁ!!まだ成功した事ないけど、兄弟子、技を借ります!!
「豪鼠天敵殺しぃ!!」
かっちゃんの蹴りを拳にて僅かに避けつつ、高く上げた蹴りをかっちゃんの胴体に打ち込む!攻撃が入る瞬間、かっちゃんの爆破が僕の身体に炸裂する!
言葉にすれば複雑、実際にはコンマ数秒の極小の時間、お互いに力の粋を尽くした。
僕の拳が決まり、かっちゃんの爆破蹴りが炸裂したのは全く同時だった。僕達は、爆発の閃光の中、気を失ってしまった…。
決勝戦は両者相討ちでひとまず引き分けとなった。
で、かっちゃんは完膚なき勝利じゃないと2位を主張、僕もほとんど勝った感じがしなくて、優勝は辞退した。
しかしどちらかに決めなくては、と言う事で切島くんと鉄哲くんの様に腕相撲対決となった。
…ワン・フォー・オール持ちと純粋な力対決って…。
ああ、うん、瞬殺しました。手加減しようがない。
「では、メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはこの人!」
ミッドナイト先生の司会で、オールマイトがやってきた。
「私がメダルを持って来「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」」
…もう少し打ち合わせしておけば…?
まあ、ヒーローのプロであって、エンターティナーのプロじゃないしな。
飯田くんは家庭の事情で帰宅、常闇くんが表彰された。
「爆豪少年、おめでとう!決勝戦は見応えがあったよ!」
「…うす。次は俺が勝つ!!」
かっちゃんは口数少なく、そして一瞬ギロッとこちらも睨む。
うん、来年どころか来月、いや来週でも危うい…。マジでこの天才児には油断なんてできない。
「そして緑谷少年!選手宣誓で挑戦を受け、そして見事に退けた!」
「いえ、オールマイト。最期は辛勝でした。まだまだ精進が必要です!」
「うむ、向上心があるのは良い事だ!更に成長している姿を見る日を楽しみにしてるよ!」
そして観客に向かってオールマイトは声を上げる。
「今回は彼らだった!!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」
おお、流石はオールマイト、良い締めの言葉だ!
「てな感じで最後に一言!!」
「「「プルス「おつかれさまでした!」ウル…えっ!?」」」
「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!」
「ああいや…疲れたろうなと思って…」
うむ、締まらないな!!やっぱり、せめて打ち合わせするべきだ、社会人として。
※飯田くん、嫌いじゃないと言うか、寧ろ好きなんですが、本作の格闘戦ではまだこんな感じです。