「体育祭での力の使い方…。ワン・フォー・オールは充分に使えてるだろう。それを見せてみなさい」
老人とは思えない、機敏な動きで部屋の中を飛び跳ねたグラントリノは、壁に張り付いた状態で僕を見下ろしながら言った。
この人、やっぱりオールマイトの先生だ。
コスチュームを身に纏い、ワン・フォー・オールを起動する。グラントリノの実力がどの程度か分からないけど、師匠達と同じと考えるなら、全力運転をするべきだ!
丹田を中心に、ワン・フォー・オールが身体中を駆け巡る!100%運転!
緑色の電撃がバチバチと唸り出す。
「押忍!よろしくお願いします!」
「うむ、ワン・フォー・オールを使いこなしているな。ならば、本気でかかっても大丈夫か!(と言うか本気でやらんと危ないかもな)」
そう言うと…グラントリノは再び猛スピードで部屋中を跳ね回る!速い!が、目で追えないほどではない!!
僕は拳法の構えを取り、攻撃の機会を探す(超電磁空手は封印、こんなオンボロビル内で使ったら、ビルが崩壊して生き埋めになるよ!)。
「そこ!」
僕が放った手刀を、グラントリノはギリギリで見極め反撃、しかし手刀に添えた逆手で反撃を振り払う!
こういう時、拳法では総じて余り動かない。
腰を下ろし、歩法で躱す程度に動く。
己は泰山の如く動かず、敵を木の葉の如く散らす。
背後からの攻撃に、力をそのまま受け流しグラントリノの体幹を乱して反撃!
対人戦で微細な手加減が必要な時は、星の保育園のクーさんやサヤさんから教わった
グラントリノが僕の身体に触れた機を逃さず、身体の軸の移動だけで受け流し、投げ飛ばす。
これができるまで、サヤさんに徹底的に痛めつけられました…。サヤさん、あんなに優しそうな笑顔で接してくれるのに、まっっっったく情容赦なくブチのめしてくるから…!!
本当の悪魔は、恐ろしい姿ではなく輝く様な笑顔でやって来るものです…。
それは兎も角、グラントリノは投げ飛ばされた先でヒラリと身を翻すと、今度は正面から飛び掛ってきた。
僕もまた、正面から受けて立つ。
ワン・フォー・オールで身体を補強し、機を見付け更にグラントリノを投げ飛ばす!
「…どうやら、ワン・フォー・オールの制御も上手くやれている様だな。体育祭を見て分かっていたつもりだが、これほどとは!」
「あ、ありがとうございます!」
「これだけ使えたら、直ぐにフェーズ2に移行しても問題ないな。…その前に、そういや朝飯食ってないな」
そう言うと、グラントリノはにやりと笑った。
「まさか人身事故で新幹線が止まるとは…」
朝食を食べて向かった先は、東京渋谷。
僕はグラントリノに連れられて、早速
矢張り
が、昼前から乗った新幹線が、途中で人身事故が発生して停止してしまう。現場検証なんかを含めると、数時間は足止めを食らう事になってしまった。
「この街は…保須市でしたね」
「仕方ない。新幹線が復旧する迄、ボーッとしているのも勿体ない。ここでパトロールの訓練をするか!」
グラントリノは電話にて関係各所に連絡を行い、パトロールの手続きを済ませたと言って、ビルの谷間になる路地裏へ向かった。
「表で騒ぐ
確かに、元々はビル間の遊歩道として作られたと思うけど、車も通れない狭さで日もほとんど当たらず、中途半端に植えられた木も枯れ、閑散とした雰囲気を醸し出している。
あちこちにある大きなゴミ収集用のスチールボックスや植物が、人が隠れる場所を作ると共により淋しい、そして怪しい感じがして、余計に人を寄せ付けない。
「人が来ないから廃れる。廃れた場所には
そんな裏通りを、グラントリノから気を付けるべき注意点を聞きながらパトロールをしていると、確かに雰囲気の悪そうな人物がチラホラ見かけた。彼等が
巡回もかなり奥まで行き、そろそろ引き返す頃合いかと思ったぐらいの時、ふと何か気配を感じてビルの上を見た。
晴れていて明るい筈の屋上のタンクの上に、黒い靄がかかっていて…あれは…!
「グラントリノ!」
鋭く、名前だけを叫んで靄を睨む。あれは、USJで僕らを襲った、霧状の
僕の声と目線で察したグラントリノは、即座に臨戦態勢に入る。
黒い靄から出てきたのは…ボロ布の様なマスクをし、刀を背負った禍々しい姿の男だった。
「俺は為すべきことを為す。この
男は、そう言ってこちらを見た。う、動けない。なんて迫力なんだ…!
「ヒーローとは、偉業を成した者にのみ許される称号!お前らは偽物か…?」
「あれは…ヒーロー殺しステインか!?構えろ、来るぞ!」
グラントリノが叫ぶのと、ヒーロー殺しが飛び掛ってくるのは全くの同時だった。
「この世が自ら誤りに気付くまで、俺は現れ続ける」
「はっちゃけやがって!ガチ戦闘は何年振りかな」
凄まじい速度で迫りくるヒーロー殺し!迎え撃つグラントリノも、負けない速度で応戦する。
僕は両頬を、自分で叩いた!よく見ろ!確かに異常な迄の気迫だが、師匠達を思い浮かべるんだ…!!
あ、うん、何とかなるな。
ワン・フォー・オールを身体中に張り巡らせ、気合いを入れた僕は、二人の戦闘の間に突入したのだった!!