「もう動けたか…O型か?」
ステインは瓦礫の中からヨロヨロと立った。流石にダメージを受けたみたいだ。
彼を吹き飛ばした為、動けないグラントリノと飯田君から少し距離を取れた。
「中々良い動きをしている…。ハァ、お前は生かす価値がある…。こいつとは違う」
ステインがちらりと飯田君を見た。飯田君は酷く悔しそうな、そして申し訳なさそうな顔をする。
「勝手な事を言うな!飯田君は、今は負けたかも知れない、迷っているかも知れない。だが、必ず立ち上がってくれる、不屈の魂を持っているんだ!」
「ハァ、無駄だ…。不屈などの言葉で取り繕っても、人間の本質はそうやすやすと変わらない。こいつは私欲を優先させる偽物にしかならない」
ステインが再び刀を構えた。僕も拳を構えた。
「ヒーローをゆがませる社会のガンだ。誰かが正さねばならないんだ」
「…ヒーロー殺しは勘違いをしている。兄弟子の受け売りだけど、不屈と言うのは折れない事を言うんじゃない、折れても尚、立ち上がる者を言うんだ!」
飯田君が間違っていたとしても、間違ったままではない。
「ステイン、お前こそ逃げたんだろ?」
「俺が…逃げた、だと?」
「逃げたからヒーロー殺しなんてするんだ!社会を正すなら、何故ヒーローにならない!?オールマイトの様に偉大なヒーローの姿を見せれば良いじゃないか!周りに正しいヒーローが居ないなら、何故後進を育成しない!?オールマイトは雄英高校に入って教育しているぞ!」
そうだ、こいつはやるべき事から逃げているだけだ。
「お前はどちらからも逃げたんだ!ヒーローを殺しているのは、逃げた事に対する八つ当たりでしかない!!」
「黙れ!お前ごときがオールマイトを量るな!」
ステインが僕に飛び掛かる!味方は後方だ、もう衝撃波で味方を傷付ける心配はない。だから遠慮する必要はない!
「超電磁連突キャーッ!!」
衝撃波を発する超音速の拳が、ステインに炸裂する!個性以外は生身の人間の筈なんだけど、とてもそうは思えない動きで衝撃波をいなした。
だが、僕の本命はこの後だ。
衝撃波で道を作り、ステインまで一直線に向かうと、タラバ師匠直伝の裏拳を放つ!
「
両手を胸に構え、溜めた打撃を前方に撃ち放つ。超甲殻空手の独特な拳打殺法だ。
まともに喰らったステインは、バウンドしながら瓦礫の山に突っ込んだ。
「よし、これで逃げられないだろう」
痺れの取れたグラントリノと一緒に、ステインを縛り上げた。職業体験としては、初日から疲れたよ。
「2人共…僕のせいで傷を負わせた。本当にすまなかった」
飯田君は項垂れていた。あちこち怪我をして、かなり出血していたけど、応急手当でひとまず止血はした。今、スマホで救急隊とヒーローの応援を頼んだけど、飯田君が言っていた様に脳無が暴れていて、こちらへの応援は遅れる様だ。
「こっちこそごめん、僕も様子がおかしい事に気付いてあげて、声をかけてやれたら…」
「いいや、怒りで何も…見えなく…なってしまっていた」
ふう、とグラントリノは息を吐いて、僕達を睨む。
「飯田とか言ったか。デクの同級生だったな。と言う事は、職業体験で来たんじゃないのか?体験先のヒーローはどうした?」
「あ…マニュアルさんは…置いてきてしまい…」
「デクもそうだが、ヒーロー仮免許も持ってないお前らに個性を使って戦わせたら、ワシらが監督不行届として責任を取らんといかん」
そう言われて、初めて自分のやった事の重大さに気付いた。そうか、自分達だけの責任じゃないのか…。
「とにかく、応援を待って…むっ!?伏せろ!!」
グラントリノが叫ぶ。巨大な何かが羽ばたく音が聞こえ、そちらを振り向くと翼を生やした脳剥き出しの生物が、僕に向って突っ込んできた。羽根が生えた脳無だ!
脳無は僕がいた場所を過ぎ去り、唖然とした感じでこちらを見上げた。何故かステインが立ち上がり脳無に向っていったけど、もうこちらも技を出していた。
「超電磁…竜巻真空稲妻蹴りぃぃぃい!!」
竜巻発生は省略したけど、超電磁技術を用いて自らを弾丸とした
残念ながら脳無へ直撃せず、かすって吹き飛ばし地面に激突。凄まじい轟音を上げてクレーターが出来た。三戦法を身に付けてなければ、僕もバラバラだったな。
脳無は吹き飛んで、動かなくなってた。兄弟子が言ってたけど、竜巻真空稲妻蹴りは狙いが難しい…!正確さに欠ける。
……あれ?ステインも吹き飛んで動かない…。えっ?死んでないよね!?
慌てて近付くと、かろうじて息はあった。瀕死だけど!僕の攻撃に巻き込まれたか!
やがて脳無を追って、エンデヴァーや他のヒーロー達や轟君もやってきて、僕とグラントリノ、飯田君は病院に担ぎ込まれる事となった…。
「すまない…緑谷君、俺のせいで…」
入院先で、飯田君に再び謝られたよ。でも、そこまで悪い事なかったしね。
「飯田君には、助けられた方だよ。こちらこそ本当、気付いてあげられなくて…」
お互い、謝り合った時、顔が犬そのものの人が入ってきた。
「いつもお世話になっております!この度はご迷惑を…!」
僕は反射的にベッドから飛び降りて、頭を90°に下げた。彼は警察官の面構犬嗣さん。こちらで署長として来たのだったか?実は、面構さんが警部くらいの頃、師匠と修行と称した
もはや、彼の顔を見ると頭を下げるのが、癖になっていた。
「久し振りだワン、緑谷君。君の師匠が大人しくなったと思ったら、今度は君が暴れ出したのかワン?」
「いえ!そんな今回は巻き込まれただけでありまして、どうか穏便に…」
「…どういうわけか、現場に大きなクレーターが出来てたワン?」
「きっと地中に空洞が出来て陥没したのかと…」
「……言い訳も師匠と同じになってきたワン」
嘘だ、「はっ、地面が脆かったんじゃね〜の?」とか耳を
いや、そんなまさか…ははは…。
嘘だと言ってよバーニィ!
まあとにかく、面構さんの取り計らいにより、手柄は全てグラントリノとエンデヴァーのものと言う事で個性の無断使用による傷害罪も見逃して貰い、丸く収まるみたいだ。良かった〜!
飯田君は数日入院、僕は即日退院出来たけど、グラントリノとマニュアルさんは処分確定と言う事で、職業体験は中止となってしまった…。
本当、申し訳ありません。
強化合宿の所を書いていたら、原作の9巻だけが行方不明に。
家の中の本棚を整理する羽目に…。