「ひ…酷い目に遭った…」
僕達が宿泊施設「マタタビ荘」に辿り着いたのは、17時に近い時間だった。
お昼抜きで8時間くらい土塊の魔獣を砕きつつ彷徨ったお陰で、皆ボロボロになっていた。
かく言う僕も、師匠達と(無理矢理)やった120時間耐久組手に比べたら多少マシだけど、誰かを守りながら闘うのは予想以上に疲れる。
「私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ、君ら…特にその4人。躊躇の無さは経験値によるものかしらん?」
とピクシーボブか褒めてくれた。のは良いんだけど、ツバ付けるのは勘弁して欲しいかな。いくら美人のツバでも。その上何故か、僕に重点的にかけられた気がするよ。
…嫌われたかな…?
「それはそうと、ずっと気になってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」
そう、なんか目付きが悪い子供がいたんだ。この目付きの悪さは、幼い頃のかっちゃんを思い出すよ。…今もかっちゃんの目付きは極悪だけど。
聞けば、子供の名前は洸汰くんと言って、マンダレイの従甥だそうだ。
「あ、えと僕、雄英高校ヒーロー科の緑谷、よろしくね」
僕は握手を求めた。そして、完全に油断していた。洸汰くんの正拳突きは、僕の股間にクリーンヒットし、僕は白目をむいてしまったんだ…。
何とか復活した後は、皆で夕飯食べてお風呂だ。夕飯用意してくれるのは今日だけで、明日から自分達で作らないと駄目らしいけどね。
「求められてるのは、この壁の向こうなんスよ…」
夕飯も食べ終わり、温泉に浸かっていたら峰田くんが何か気持ち悪い事を言ってた。もしかして…懲りないなぁ。
飯田くんが止めようとしているけど…。
「峰田くん、上に上がりたいんだろ?手伝ってあげようか?」
「おっ!?緑谷、お前もこっち側にくるか!?」
驚く飯田くんを他所に、僕は喜ぶ峰田くんの両脇を抱え、軽く上に放ると…。
「超電磁、昇◯拳〜!!」
超電磁空手にこんな技ないけど、ゲームで他の空手家が使っていたから大丈夫でしょ。もちろん殴ったんじゃなく、峰田くんの身体を拳に乗せて、カタパルトの様に射出したんだけど。
たちまち上空数百mに打ち上がった峰田くんは、気を失いながら落ちてきたんでキャッチして、横に寝かせた。夏だから風邪ひかないでしょ。
あ〜でも、峰田くんが気を失わなければ、高く上がった時に女湯を覗かれたかも…?
ふと壁の上を見ると、ポカンとした顔の洸汰くんと目が合った。どうやら覗きがないか見張っていたみたいだけど、僕と目が合った為に慌てて動いて、バランス崩してこっちに落ちてきた!
咄嗟に洸汰くんを抱きかかえたんだけど、気を失っていたんで急いでそのまま事務所に駆け込んだよ。
洸汰くんは気絶していただけだったので一安心したけど…。
そこで、マンダレイやピクシーボブから、洸汰くんの両親が殉職した事、それなのに殉職は良い事、素晴らしい事だと誉められて、洸汰くんは両親を失ったのに失った事が良かったと言われた様に感じて…。その為にヒーローに対して大きな不信感を持っている事を聞いた。
僕は、何も言えなかったんだ…。
翌日、合宿二日目の早朝5時半、修行するには少し遅い時間に全員集合して、本格的な強化合宿が始まった。
手始めにかっちゃんが入学直後の体力テストで使ったボールを投げると…記録は709.6m。意外と伸びてない。
僕達は3ヶ月の間、精神面や技術面の成長はしたが、個性そのものの成長はしていない。
そう、これからの訓練は、その個性を伸ばすものになるのだ!
「死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないようにー…」
そう言う、相澤先生の恐ろしい言葉と共に、訓練は始まったのだ!!
さて、僕の個性はワン・フォー・オール。この個性を伸ばすには、フルカウル100%のパワーを出さないといけない。
先ずは身体に付いている重りを外す。今や両手両足と腰にそれぞれ80kgの特注重りが付いている。正直、昨日山中を抜ける時に捨てて行こうと何度思った事か…。
師匠達に怒られるから、何とか思い留まったけど、合計400kgの荷重+体重が足にかかると、硬い岩場以外の道は足が沈むんだよね。
ズドンッ、ズドンと地面に落ちる時に、有り得ない音を響かせる重りを外すと、非常に軽く感じる身体に
「ワン・フォー・オール…フルカウル100%!!」
強力な緑電を全身に纏い、髪の色すら鮮やかに変化した様に見える姿になった。息吹の呼吸と共に、ワン・フォー・オールを体内で回転させる。グルグルと、音速を超える速度で!
「個性、解放!!」
目標は、数十メートル先にある大きな岩だ。
「超電磁…正拳突きぃぃいい!!」
脚に力を入れ踏み出し、真っ直ぐ岩へ向って拳を突き出す!その速度は
僕が殴った岩は粉々に砕け、直撃した部分は真っ赤な溶岩の様に高温化している。そして程なくして、バラバラと上から飛ばされた岩の上部の部分が降ってきた。もし人間を殴ったらパチュンといきそう。所謂、大惨事になるよなぁ…。
「でも…やはり準備に時間がかかるし、完全なテレフォンパンチ。かっちゃんに使ったら、殴る前に三回は爆殺されているよ…」
反省点を考えていると、相澤先生とワイルド・ワイルド・プッシーキャッツのパワー担当の虎さんがやって来た。
「緑谷…。お前はまず、手加減の訓練からだ…」
「流石の我も、これを受けるのは無理であろうよ…!」
「えっ、えええっ!?………はい…」
あー、うん、ほんの少し、やり過ぎたかな…?
師匠ズ「いよう、出久。ガキんちょに白眼剥かされたってなぁ!?お前、地獄の様な特訓を頭に思い浮かべてみろ。浮かべたか?そんなものは、天国だ!!」
出久くんは異常な人々が周りにいる為に、自分の異常値の基準が狂っている事に気付いていません。
相澤先生の教育的指導に期待する事、大です。