「闇の饗宴…」
常闇くんの言葉に、ちょっとブルッとくる。
1人だもんな…。怖くて肝が潰れる所を他の人に見られる事がない…いや、B組の人に見られるか。しかも語り草になるやつ。
遠くから悲鳴が響き渡る。結構、距離があると思うのに、こんなに響くもんなんだなって感心するよ。この声は…耳郎さんと、葉隠さんかな?
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんのペアも出発して、僕は一人ぼっちを満喫してます…。
等と、自分の順番を待っていると、ブルルッと相澤先生の携帯が鳴った。先生は取り出して眺め、目をカッと見開く。
なんだ?と思っていたら直ぐに隣にいたマンダレイに話しかけた。
「
え?え?襲撃!?また、USJみたいな!?
途端に頭の中にマンダレイのテレパスが響く。
『
やはり
決意を固めたところで、超電磁レーダーに感アリ!
「ピクシーボブ!!」
瞬歩と言われる歩法で距離を詰め、少し離れたところに1人でいたピクシーボブを護る様に構え、更に向こうからくる悪意に立ち向かう!
「ちょっ、緑谷くん!?」
「超電磁連突きぃぃぃ!!」
向こうには二人分の悪意以外に気配なし!衝撃波で30メートル離れたコンクリートを粉砕する連撃で、遠慮なく殴りまくる!扇状に撃ちまくった正拳突きの衝撃波で、闇の向こう側からぐはっと声が聞こえてきた。
多分、不意を打つつもりで襲来し、逆に不意を打たれたから思わぬ直撃を食らったのかも。
流石にこれで戦闘不能とまではいかないと思うけど、それよりも!
「こ、こら!交戦するなって言ったでしょ!?」
「すみません!急に突きの練習がしたくなって!それよりもマンダレイ、僕、知っています!!」
マンダレイには、それで通じた様だ。
ここにはプッシーキャッツ三人に、相澤先生までいるんだ、問題ないだろう。
マンダレイの許可を得て、僕は洸汰くんのところへ飛ぶように走った!!
道を走らず、木々の間を真っ直ぐ突っ走ると、2メートルはありそうな大男が、洸汰くんを殴ろうとしている場面に遭遇した!咄嗟に間に飛び込んで大男の拳を受け、洸汰くんへの軌道を反らせるが、踏ん張りが効かずに僕が岩肌にめり込んだ!
「お、お前…なんで…!?」
「大丈夫…救けにきたよ!」
ガラガラと崩れる岩場から出て、
「ん?お前は…連れて来いリストにあったな」
連れて来いリスト!?
「まあ良い。手足ぶち折っても、連れて帰った事になるよなぁ!」
みるみると筋肉が膨らんで…と言うより纏わせていく。こいつは、見た事がある。確か、ウォーターホースを殺害した
「お前が、緑谷って奴だろ?安心しろ、お前は生きて連れて来いと言われているんでな!」
なんで僕が!?いや、今はそんな事はどうでも良い。
「大丈夫だよ、洸汰くん!僕が必ず救けるから!」
「必ず救ける…って?はぁはは…。さすがヒーロー希望者って感じだな。どこにでも現れて、正義面しやがる」
マスキュラーは殴りかかってくる。速い!が、師匠達に比べたら全然遅い。
回し受けで力を反らしながら、反撃の機会を待つ。…が、かなりの衝撃だ、強いぞこの
「そうそう、知ってたら教えてくれよ。爆豪ってガキはどこにいる?一応、仕事はしなくちゃあ…」
かっちゃん!?僕といい、かっちゃんも目的なのか!?と考える間も無く、再びマスキュラーが襲い掛かる!
僕はすいっとマスキュラーの右腕の内側に入り、裏拳で軽く肘の下を掴む。相手の機を読み取り、重心をずらして崖下へ投げ落とした。
「合機投げ!」
マスキュラーは「おおおっ」と叫びながら、崖下へ落ちて行った。この程度じゃ死なないどころか、直ぐに復帰してくるだろう。
「な、なんだ!?今の、個性か!?」
「違うよ洸汰くん。合機柔術って言う、武術だよ。個性を使わなくても、訓練すれば使える技なんだ。それよりも、早く隠れて!あの
洸汰くんを少し離れた洞窟っぽい場所へ避難させる。と、同時に崖下から駆け登ってきたマスキュラーが、僕の前に再び立ちはだかった。
「今のがお前の個性か?力を受け流すタイプか」
マスキュラーの筋肉が更に増え続け、腕の太さだけで大木みたいになっていった。筋力が増大すると言うより、人工的な筋繊維が身体に巻き付いている感じだ。ちょっと、気色悪い。
「俺の個性は筋肉増強。皮下に収まんねえ程の筋繊維で底上げされる速さ!!力!!何が言いてぇかって!?自慢だよ!」
マスキュラーは心底楽しそうに喋り続けた。
本当に楽しいんだろうな。弱い者を虐めるのが。
確かにこいつは強い。筋肉の鎧を突破するのは、かなり厳しいだろう。普通なら。
僕はワン・フォー・オールを起動させ、空手の基本の構え、組手立ちをする。
「おっやるか!?お前みたいな奴がどうやって勝つ!?どうやって救ける!?実現不可のキレイ事のたまってんじゃねぇよ!」
ぐんっとマスキュラーは蹴りを繰り出してくる。岩を粉砕し、正確に僕を狙ってきた。
しかし、歩法には上半身を揺らさず、まるで横に瞬間移動したかの様な技法がある。マスキュラーの蹴りは僕の横を通過し、お互いの距離は一気に縮まる!
「超電磁…正拳突き!」
ぼすっ。そんな音を立てて、僕の正拳突きがマスキュラーの胴部にぶち当たる。
「…なんだ?そのパンチは!?速さだけはあるが、力が全然足りてねぇ!」
そう言って、再び腕を振り上げて…マスキュラーの行動は、そこまでだった。
「ぐげほぉお!!!?な、なんだ!?」
血を吐いてのたうち回るマスキュラー。
僕の衝撃波を出さない超音速の突きは、マスキュラーの腹の中で衝撃波を出しまくったのだ。
例え筋肉の鎧を纏おうとも、全て無意味だ。
「力だけを求めて、『武』を知らな過ぎるよ」
トドメに超電磁下突きで、蹲ったマスキュラーをぶん殴る。キリキリ舞いながら、再び崖下へ落ちていった。これで戦闘不能だろう。
「大丈夫かい?洸汰くん?」
「う、うん…。あ、ありがとう…」
「怪我はないかな…。施設に行こう。こっからは近い…」
ガラガラと音がして、マスキュラーが這い上がってきた。口から血を吐いているが、まだ健在な様だ。しぶとい!
「やるなあ!緑谷…!おまえ強いもんな。やめるよ!遊びは終いだ!こっからは…本気の
「洸汰くん、つかまって!」
咄嗟に洸汰くんを抱きかかえ、その場から飛び去る!マスキュラーの攻撃で、岩どころか崖そのものが崩壊した!!
さっきまでとは比べものにならない…!速さも力も…!!
本当に、遊び感覚で殺そうとしてたんだ。
少しでも離れて、洸汰くんを安全な場所に…!
マスキュラーとの第二ラウンドは、奴の本気で始まったんだ…。