「ワン・フォー・オールを受け取るには、ある程度身体ができている必要があるのだが、緑谷少年は既に鍛えてあるな…」
オールマイトから個性「ワン・フォー・オール」を受け継ぐ事になった僕だけど、連れて来られた場所は漂着&不法投棄で有名な海浜公園だった。指で摘める小さなゴミから、冷蔵庫なんかの粗大ゴミまで、様々な種類のゴミが所狭しと海岸線に沿って捨てられている。
「最近のヒーローは派手さばかり追い求めてるがね、ヒーローってのは本来奉仕活動!」
オールマイトはゴミとなっていた冷蔵庫を潰し、少し見通しを良くしながら言う。
「この区画一帯の水平線を蘇らせる!それをワン・フォー・オールを受け継ぐ試験とし、君のヒーローへの第一歩としたい!!」
なるほど、ヒーローはボランティアが基本。
しかし、少し量が多過ぎる様な…。超電磁正拳突きで吹き飛ばすのは駄目かなぁ…。
ひとまず、効率を上げる為に重りを外すか。
僕は両手両足の重りをオールマイトが乗ってきたトラックの横に投げ置いた。
ドスンッドスンッと重量感たっぷりの音が響きわたる。
「緑谷少年、それ、結構な音を立ててるが…重さはどれくらいだい?」
「一つ30キロあります。両手両足と胴体で、150キロですね!」
しっかし、身体が軽い!軽くジャンプすると2メートルは飛び上がる。
久々に重り外して活動するな!
「そ、そうか、緑谷少年…。やっぱり体力的には問題ないな…。では、掃除を始めようか!」
オールマイトは引きつった笑顔を見せながらも、開始の合図をするのだった。
それから、二ヶ月経った。結局、重りはまた身に着けたよ。身体が軽過ぎて、付けないと修行にならないからね?と言うか、師匠達に海浜公園の掃除のボランティア活動をすると報告をしたら、重さが1個40キロに増えたんだけど!
綺麗になった海浜公園を見て、なんともスッキリした気分になる!こんなに綺麗な海岸だったんだ!
まだ早く片付け終わる事はできたんだけど、トラックと産廃処理が間に合わず、これだけの期間が必要となった。
…ゴミの中に、明らかに怪しい青く光る放射性物質とか、ちょっとやばそうな医療廃棄物とかあったのも原因だったりする。オールマイトがいたから、問題なく処分できたけど…。
「オーマイ…グッネス!おつかれ!緑谷少年!!」
ムキムキ状態になったオールマイトが、絶賛してくれる。
「もう少し時間が掛かるかと思ったが、まさかここまでとは!」
海浜公園はチリ一つなく、綺麗に片付けられた。オールマイトが指定した区域以外も、全てだ。
「さぁ授与式だ緑谷出久!肝に銘じておきな、これは君自身が勝ち取ったものだ!食え!!」
プチっと髪を抜いて渡してくるオールマイト。前もってDNAの譲渡と聞いていたから想像していたけど、うん、やっぱり髪の毛かぁ。
しかし、髪以外となると、皮膚?血液?それとも唾液??いや、唾液は違うかな。
どれも嫌だな…。もしかして、髪の毛が一番無難なのかな?お互い痛くないし。
髪の毛を受け取って、思い切って食べる。
別に不味くはない…いや、酸っぱい!飲み込むのに苦労するよ、これ!オールマイト、ちゃんと風呂に入ってますか!?シャンプーで頭を洗ってる!?
ようやく飲み込んで、少し経つと体内に何か、別の力が湧いてきた様な気がする。
これがワン・フォー・オール…?
目を閉じ、臍の下、丹田に力を溜め、全身に回る様に力を制御する。
グルグル回す、速く速く、更に速く!
「静止しながら音速を超える」
とはゼッカ師匠の言葉だが、何の事やらと思っていた。しかし、これは自分は動かず力そのものを高速で回し、身体を強化し…いや、やっぱり音速で回すって何ですか!?
ワン・フォー・オールが全身を巡ったところで、いよいよ試し打ちしてみるか!
「超〜電磁…正拳突きぁあああっ!!」
全身の筋肉を制御し、
ドン!!!!
瞬間、空間が歪み、目の前の海が割れ…いや、底まで破裂する!!
うおお!全身が痺れる!痛みが半端ない!場裏亜空間がなければ手足が持たないぞ!これが制御できないと爆発するっていう、力かぁ!!
前方、百数十メートルに渡り海の底が見える程に割れ、破裂した海水が上昇気流に乗って舞い上がり空を裂き、天候すら変わる!
やや時間が経ち、剥き出しになっていた海底に周囲の海水が入り込み、空高く打ち上がった海水が雨の様に降り出す頃、ようやく俺とオールマイトは再起動を果たした。
「流石はオールマイトの個性!何もかも規格外ですね!」
「ああ、いや、最初からこの威力というか、私より強くないかい?しかも、超電磁って…」
「はい!僕に格闘技を教えてくれた、ゼッカ師匠やドンファー師匠が編み出した、超電磁空手です!」
「シット!ゼッカ、ドンファー、やはりあの二人か!」
頭を抱えるオールマイト。あれ?二人の師匠を知っているのかな?
「あの二人とは昔関わった事があってね…。いや、
いや、何してるんですか師匠。
ゼッカ師匠はともかく、ドンファー師匠もやっちまったのか。今は物凄く大人しいけど。
「それはともかく!手にした力を発揮できる様だな、後は、少しは手加減を覚えようか」
オールマイトは、笑顔でそう締め括るのであった。