「出久!ティッシュ持った!?」
心配性で何度も聞いてくる母さんに、カバンの中を見せてあげる。
時間がないのに!いっつもお母さんは優しくて世話焼きで、心配性なんだよな…。
「出久!超カッコイイよ!」
「うん!いってきます!」
そしてたどり着いた雄英高校。でっかい…。
なんか高層ビルの集合体?延床面積どれだけあるんだろう!?
教室のドアもデカいし高い…。いや、天井高さが気になる。ん?さっき高層ビルとか思ったけど、もしかしてショッピングモールの様にワンフロアの階高が高くて、階数そのものは少ないのかな?
しかし多分開ける動作の補助機構があるんだろうけど、普通開けられないよ、こんなドア。
中に入ると、かっちゃんと真面目な眼鏡君が言い争っていた。何やってんだ、かっちゃん…。
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明〜〜!?くそエリートじゃねえか、ブッ殺し甲斐がありそだな」
なんて心温まる会話なんだ…。思わず他人の振りをしたくなるよ!
と、他人の振りをしようとしたら、飯田君に見付かった。
「君はあの時の…!俺は聡明中学出身の…」
「聞いていたよ、飯田君!僕は緑谷出久、宜しくね!ちなみに、あそこのかっちゃんとは幼馴染なんだ!それと、かっちゃんは『どうも!』が『ブッ殺す』に変わる病気を患っているんだ!許してあげて?」
「な、そうだったのか!?済まない、俺とした事が…!」
「だ、だ、誰が病気だぁ!デクぅぅ!!」
うん、言語野的病人は放っといて、回りを見ると…あっ入ってきた!
「あっそのモサモサ頭は!プレゼントマイクの言ってた通り、受かってたんだね!私は麗日お茶子、よろしくね!」
「お、おはよう!僕は緑谷出久。合格は聞いていたんだけど、同じクラスだったんだ…」
うう…やっぱり映像で見るより、実物は可愛いや…。
んん!?レーダーに感あり!誰!?
咄嗟に麗日さんを背中に回し、拳を構える!
星の保育園でヒーローなら護衛任務も必須、とかで陽子ちゃん達を護って師匠の不意討ちに対応する修行をしたせいか、素早く庇う事が癖になってる…。
「良い反射神経だ…。だがお友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ?」
なんか寝袋に入ったおっさんが、液体状の栄養補給食品をじゅっと飲み込んだ。
へ、変質者…?雄英高校に…!?
しかし、実は先生でした…。本気で?
そして入学式ぶっちぎりで、個性把握テストをするらしい…。
騒ぐ生徒を尻目に、強引に体操服を渡してグラウンドに集合させられた。
「緑谷、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」
「99mです!(重し付)」
「んじゃ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい早よ」
「わかりました!とりあえずこれ、外しますね」
と言って身体の重しを外していく。ちなみに重量は増えて1個当たり50kg、計250kgとなってる。
…あれ?見ている皆が若干引いてる?
あ、かっちゃんも驚愕の目で見てる!?もしかして、今まで気付いてなかった…?
それはともかく、ソフトボール投げとなれば…この技を使うか。
ワン・フォー・オール始動!緑の稲妻が身体を駆け巡る!使い慣れてきたら、この稲妻が発生する様になったんだ!
「な、デクぅ!なんだその個性は!!」
「ごめん、かっちゃん、放課後必ず説明するから!」
そういえば、かっちゃんに説明してなかった!仕方ない、だって中々会わなくなったんだもん!!
それはともかく、諸々のパワーを込めて、ボールを放り投げてぶん殴る!!
「超電磁…正拳突きぃ!!」
拳に溜めたパワーが、超音速で繰り出すパンチが、発生した衝撃波を全てボールに封じ込めて、空高々に撃ち出す!
ところで、天候をも変えるオールマイトのワン・フォー・オールを、クレーターを作る威力がある超電磁正拳突きに載せて、全てのパワーを衝撃波と共にボールに詰めるとどうなるか。
答えは「保たない」である。
バアァン!!という破砕音と共にボールが粉々になって跡形も無く、まるで蒸発したかの様に吹き飛んだ。
もちろん、記録なんて出ていない。
「…緑谷、もう少し加減というものを身に着けろ。爆豪、代わりにやってみろ」
落ち込む僕を横に、死ねぇ!とかっちゃんが爆破しながら撃ち出すと、705.2mの記録が出た。
「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
段々皆も分かってきたのか、すげー、面白そうと騒ぎ出す。が、それが面白くなかったのか、最下位の者を除籍処分と先生が言い出した。
ええ〜!?そ、そんな…!
初日から、入学式もせずに除籍処分…?
これは本気でいかなくては!!
「緑谷、回りに迷惑をかけたら、その種目は最下位とする」
「あ、ハイ」
とにかく、手加減、手加減〜!!
個性把握テストは終わった。
なんて言うか、ワン・フォー・オールを20%に制限、それに超電磁空手を封印すれば、回りに迷惑をかけずに体力測定を行えるし、それでも結果はぶっちぎりだった。
50m走は1秒台、握力は握力計を壊しそうになり、立ち幅跳びは運動場を飛び越え、ボール投げは2000mオーバーだった。
持久走?ゼッカ師匠がバイクで追い掛けてくるのを、町中逃げ廻った僕には物足りないくらいだったよ。
普通だったのは上体起こし、長座体前屈、それに反復横跳びだったよ。
反復横跳びは…本気で蹴ると地面がえぐれるし、手加減でも横滑りして、結局普通の結果に。
でもまあ、身体強化の個性はこういうのには強いよね。
最下位なのは峰田君…あの背の低い男の子?だったけど、合理的虚偽とやらで除籍処分はなくなった。峰田君は泣いて喜んでいたけど、女の子とエッチな事をする青春が〜とか叫んでいたのは、不味いと思うよ。
うーん、しかし先生、結構本気の目してた様な気がするけど。本気でやる気を引き出したかったのかな?
さて、この後は気が重たい、かっちゃんへの個性説明会だ…。
ホームルームが終わって教室を出ると、先に教室を出ていたかっちゃんが待ち構えていた。
ついて来い、とかっちゃんは顎で示すと、校舎の裏に連れて行かれた。
超電磁レーダーで気付いているが、誰かこっそりと着いて来てる。この気配は、飯田君と麗日さんかな。
嬉しいな、心配してくれているのだろうか。
「で、どうなってるんだ?デク!」
「あ~今から10ヶ月くらい前に、突然個性が芽生えたんだ。お医者さんの話じゃ、身体がある一定度の頑丈さを超えないと発揮できない個性じゃないかって」
これはオールマイトと話し合った結果、でっち上げた嘘だ。ゴーリテキキョギってやつ?
「んじゃ、俺を騙して個性を隠していた訳じゃねぇんだな?」
「うん、誓って隠してはない!本当に個性が発生したんだ!」
受け継いだという意味だけど、個性を手に入れたのに間違いはない。
「チッ!いいだろう…。いくら個性を手に入れようが、その個性ごと、お前をブッ殺す!完膚なきまでにな!!」
そういうと、かっちゃんは去って行った。
ここまでライバル扱いされるのは、僕としては嬉しい。
でも、勝負して泥を舐めさせまくったせいなのか、どちらかと言うとライバルって言うか、目の仇にされている様な気もするんだよね…。
僕も帰ろうとすると、飯田君と麗日さんが駆け寄ってきてくれた。
「あの男に呼び出されていたが、大丈夫かい?」
「心配してくれてありがとう!大丈夫、かっちゃんは幼馴染だからね!実は僕の個性は10ヶ月前に突然芽生えてね。受験で余り会わなかったから、かっちゃんが驚いて…説明していたんだよ」
「そうなん!?そんなに遅く出る個性なんてあるんだ!それはそうと、緑谷君はデクってあだ名だったん?」
「ああ、僕の出久って名前をかっちゃんがデクの棒って意味でデクって呼び出したんだ」
「蔑称か…つくづく、あの男は…」
「でもデクって…頑張れって感じで、なんか好きだ私」
「デクです!!」
「緑谷くん!!浅いぞ蔑称なんだろ!?」
「何を言ってるんだ飯田くん!こんな可愛い娘に頑張れって言われたら、蔑称なんて吹き飛んだね!」
「え!?いや!可愛いなんて…えへへ」
「あ!いや、その…つい口から…」
「ううん、ありがとう!よろしくなデクくん!」
こうして波乱の入学式は終わった。
そもそも、入学式に出てないけど。
次の日から、授業が始まった。
内容は普通の授業だった。ランチラッシュのご飯は、無茶苦茶美味かったです。
ヒーロー科って言っても高校である以上、普通科目の授業は当然あるわけで、学習方法は普通科と変わらないんだね。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
そしてヒーロー科の特別な授業、ヒーロー基礎学の時間がやってきた!
教師はオールマイト。
「早速だが今日はコレ!戦闘訓練!!」
オールマイトがカードを見せ、皆の意見と個性に合わせて用意されたコスチュームを出す。
「格好から入るってのも大切な事だぜ少年少女!自覚するのだ!!今日から自分は…ヒーローなんだと!」
僕らはコスチュームを抱え、着替える為に更衣室へ向かったのだった。