魔剣の男の娘にさせられて! 作:える
拝啓…この広々とした世界のどこかにいるのかもしれない、転生した僕をこんな姿にしてくれた最高にくそったれな神様へ。
もしも存在しているのなら、いつか絶対、木っ端微塵にぶった斬ってやるから覚悟しておいてください。
はてさて。こんなあられもない姿になってしまったことに関しての復讐は誓ったし、そろそろ落ち着くとしようかな。
あられもない姿と言ったが、僕はいったいどんな姿になったのか。
もし答えが分かった人がいるのなら、ぜひとも教えていただきたい。
一糸も纏わぬ格好の美少女?
エルフとか獣人とかといった亜人?
或いはドラゴンとかみたいなファンタジー的生物?
どれもこれも、否である。そもそもの話、転生先が生物であろうと思っているのなら、確実に答えにはたどり着けないだろうね。
なにせ、今の僕は無機物。
魔剣と言われるような、剣と魔法のある世界のファンタジー武具だからである。
それも神殺しの魔剣と呼ばれる最上級武具だ。
やったね、チートだよ。
転生するのなら、誰もが欲しがるであろう圧倒的チートさ。
いやっふー、最高だぜぇ────なーんて、僕が言うと思ったかい?
言うわけがないだろう?
最高?まったくもって否だよ。
今の僕の気分は最低も最低、三千世界で一番最低さ。
なんでって?そんなの簡単、封印されてるからね。
まったく哀れな転生者もいたものだよね。
せっかく異世界に来たっていうのに、降り立った場所からほとんど動けないんだなんてさ。
ふふっ……僕のことだよくそったれ!!
強いて良かった点を挙げるとするのならば……なんだろうね?人の形になれることくらいかな?
まぁそれも、封印されてる地点からほとんど移動できないって考えたら、みじんもプラスになりはしないんだけども。
まぁそんなこんなで、僕は転生したのであった。
この時の僕はまったく想像していなかった。
こんな退屈だらけの、孤独の日々が千年以上も続くことになることを。
※※※×※※※
✕月●日
ふと思ったのだけれど、人型になる時の容姿を変えることはできないのかな?
今の容姿はなんというか……ものすごく違和感があるから変えたいのだけど。
だって性別は男なのに、見た目は美少女のソレなんだよ?
いわゆる男の娘ってヤツさ。
まぁとにかく頑張ってみよう。
目指せイケメン、脱男の娘だ!!
たぶんきっといるはずの、僕を転生させた神様に目にもの見せてやる!!
▽月☆日
ふっふっふ。
……………無理でした。
男の娘から脱却することはできませんでした、はい。
どうしてさ!!
僕がいったい何をしたっていうんだ!?
こんな横暴、いくらなんでも赦せないぞ!!
#月□日
あまりにも暇すぎるので、魔力操作と女の子らしさを極めることにしました。
魔力操作は分かるけれども、なんで女の子らしさまで極めるんだろうって思いましたか?
そんなのは単純明快ですよ。
いつか封印から解かれた時に、この容姿を使わないのはもったいないでしょう?
そういうわけですから、今日から頑張るとしましょう。
ファイトですよ、これからの僕。
$月▲日
気づけば、魔力操作を極めてしまいました。
今の僕ならば、前世にあった漫画の登場人物である六眼持ち現代最強術師のように魔力操作でのロスが限りなくゼロに近くできるでしょう。
だけど悲しいかな…戦う相手がいないので、そんな技術を持っていても意味がないですね。
はぁ……次はなにを極めましょうか。
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€月✙日
暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇ひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマ
※※※×※※※
「ヒャッハー!!逃げる奴は盗賊だ!逃げない奴は訓練された盗賊だ!!」
白銀の三日月が夜空にて輝いているとある日の森の中。
場所と時間だけ見ればロマンチックな物語が始まりそうな雰囲気なのだが、残念ながら登場人物のイカれた行いのせいでロマンチックとはかけ離れた状況になってしまっている。
いったい誰がどんな行いをしているのか。
下手人は、スライムで造られたコートを着ている十歳児ことシド・カゲノー。
シドがやっている行動は、奇声を上げながら盗賊を狩るという所業。
ロマンチックに見えなくてもしょうがないだろう?
うん、しょうがない。
「やい盗賊ども!!命が惜しければ、金目のものを出せー!!」
そう。何を隠そう、これがシド・カゲノー、十歳である。
こことは異なる世界だったら、友達とやんちゃ遊びをしているような十歳児の姿である。
やんちゃ遊びというのは、盗賊を狩るなどというアタオカ行為などではない。
漫画とかに出てきたら、あっという間にヒーローに倒されるようなキチガイのような言動をとることでもない。
断じて⋯断じて、こんな厨二病みたいな格好をして、近くの森で暴れるなどという遊びではないのだ。
「うーん…。そろそろ陰の実力者しか持ってない特別な武器的なのが欲しいなぁ。」
盗賊たちをスライムで象られたソードを振るい、蹴散らしながら、シドは考える。
求めるものは、ただ一つ。陰の実力者に至るために必要なものである。
説明しよう!!
陰の実力者とは─────
物語の主人公でも、ラスボスでもなく、陰ながら物語に介入し圧倒的な実力を見せつけていく存在。
そして、シド・カゲノーが前世の幼き頃から、なによりも憧れているものである!!
シドは狂人だ⋯良い意味でも、悪い意味でも。
冗談でもなんでもなく、彼は陰の実力者になるためならばなにもかもを捨てる覚悟を持っている。
「おらおらおら、おらおらおらおらあぁ!!」
⋯⋯⋯それ以外の点を見たとしても、狂人と言えるかもしれないが。
まったく隙のない剣戟が飛び、それと同時に鮮血が弾ける。
最初は数十人ほどいた盗賊たちも、いつの間にか全員息絶えてしまっていた。
「えっ?もう全滅しちゃったの?久しぶりの盗賊だったのに⋯⋯もう少し味わうように殺すべきだったかなぁ。」
普通は悔やまないところで悔やむシド。これが陰の実力者クオリティと呼ばれるものである。
「まぁいっか。とりあえず、盗賊くんたちが奪ってきたものを見させてもらおう。戦利品、多いといいんだけどねぇ。」
鼻歌を歌いながら、今にもスキップをし出してしまいそうな様子で、盗賊たちが商人たちから奪ったであろう物品のもとへと歩く。
シドがこれからやることはいつも通り。商人たちの遺産にして、陰の実力者になるための軍資金をいただくだけである。
と、そんな時であった。
シドの人並み外れた感知能力が、ソレを知覚したのは。
「ん?これは⋯⋯今までにない魔力の感じだね。というか、生物なのかどうかも怪しいなぁ⋯。まっ、百聞は一見にしかずだし、見に行ってみよう!!」
そう言って、シドは森の中を一目散に駆け出すのであった。
彼は知らない。
その先で出会うのが、シドの生涯の相棒となるであろう存在であるということを。
その存在が千年以上もの孤独のせいで、だいぶポンコツになっていることを。