あの人、勇者の物語にはいない。【AI翻訳】   作:ゼリ_Xerionic

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第22話 1-22 アンダーアイゼン 1

町から出ることを禁じられ、冒険者ギルドでまた大目玉を食らった後、ようやく二人とも解放された。次の目的地はマリーナの教会だ。

 

「……お邪魔します……」

 

エスタの声はかすかだった。顔色を失った少年少女は、まるで魂が抜けたようにふらふらと歩き、教会の地下にある隠し部屋へと降りていく。重い扉が横にスライドして開くと、リースは外から差し込む光を頼りに、中にある魔術灯に火を点けた。

エスタはマリーナの像の台座まで歩み寄り、ルナリスの神像をそっと横に置いて祈りを捧げる。

 

「ルナリス様……エスタ、神像をお持ちしました……」

 

少女の声は喉の奥でうめくように震えていた。まるで冒険者ギルドのマーラ受付嬢に叱られた記憶がまだ頭にこびりついているかのようだ。リースも同じだった。彼はエスタの隣に膝をつき、そっとその手を取った。

古い魔術陣が描かれた床が、淡い紫がかった青い光を放ち始める。それはルナリス様の色だった。神像の方も目と口の部分から同じ光が漏れ出す。

 

「あ、あの……こんにちは……わたくし、女神ルナリスです」

 

「こんにちはございます」

 

リースは丁寧に頭を下げて挨拶した。

 

「ありがとう……その、わざわざ神像をここまで運んでくれて……せっかく隠しておいたのに……」

 

最後の言葉に、リースはむず痒いものを感じた。彼はエスタを見たが、彼女は視線を逸らしている。仕方なく、リースは率直に尋ねた。

 

「あの……神像を持って帰るよう命じたのは、女神様ご自身じゃなかったんですか?」

 

「あ、いえ……そうじゃなくて……」

 

神像がぱちぱちと瞬きするような音がした。リースはもう一度エスタを見た。今度は完全に顔を背けている。

 

「あの……エスタを怒らないでくださいね……神像を取り戻してくれたのは、結果的にわたくしを助けることになったんですから」

 

「……はい」

 

「だって……泉の中にあるやつ、洪水が起きたら……ここまで流れてきちゃうんですもん……」

 

(女神の領域に水が流れ込むって……?)

それを聞いて、リースは思わず両手で顔を覆った。

 

「とにかく……助けてくれてありがとう。でも……でも、まだ全部じゃないんです……」

 

「全部じゃない、ってどういうことですか?」

 

「ええ……まだ外に、わたくしの古い神像がいくつも残っていて……ほとんどが、ずっと暗い場所に置かれているんです……お姉様が、全部取り戻してって……」

 

それを聞いて、二人は顔を見合わせた。

エスタはルナリス様の直属の信徒ではあるけれど、神像に触れられるのはごく近くにいる時だけ。

それに、ルナリス信仰自体がほとんど途絶えている。他の信徒を探すのは極めて難しい。

 

「実は……この近くに一つあるんです。ずっと暗くて、腐臭がして……獣がうろつきまくっていて、汚物だらけの場所……最近は汚物がさらに増えて、臭いがここまで漂ってくるんです……」

 

(女神だって悩みはあるんだな……)

リースは心の中で呟いたが、返事をする前に、エスタが先に大声で言った。

「下水道イベントだわ!」

 

彼女の顔はげんなりしていた。下水道といえば、リースでさえ行きたくない場所だ。掃除の依頼は最も嫌われる仕事の一つ――狭くて、臭くて、ネズミやゴキブリがわき、時にはモンスターまで出る。

 

「了解しました/です」

 

嫌々ながらも、二人は同時に答えた。

 

「あの……リース、少しエスタと二人だけで話したいんですけど……」

 

「はい」

 

リースは素直に引き下がり、部屋を出る。重い扉が閉まり、エスタと彼女の女神は二人きりになった。

 

「エスタ……ごめんなさい、こっそり見てて……あのね、リースのこと……彼の正体について……」

 

神像の声は、どこかおどおどしていた。

 

────────

リースは礼拝堂の外に出て、一人でエスタを待っていた。昨夜のことを思い出す。

(どうして森の中に教会が? 神官や村人たちはなぜあんな化け物に……

一体何が起きたんだ……?)

(今回助かったのは、敵が洞窟前の連中ほど強くなかったからだ)

リースは脇腹に手をやる。爪で裂かれた傷は浅いはずなのに、まだ血が滲んでいる。自分自身の治療すら忘れていた。

(次に強敵に出会ったら、エスタを危険に晒すかもしれない)

静かに座っていても、心はまるで平静ではなかった。

ぼんやりしていると、突然鼻をぎゅっと摘まれて強く引っ張られた。顔から火が出そうな勢いだ。

 

「冒険するなって言ったよね?」

 

鋭い声とともに、レナの鷹のような瞳が睨みつけてくる。彼女はリースの前に仁王立ちになり、もう一度大きな声で言った。

 

「体だってまだ万全じゃない、魔力だって完全に回復してないのに、また怪我して帰ってくるなんて当然の報いだよ」

 

「すみませんでした……でもエスタが女神様の許可をもらってて……」

 

「だから冒険者が早く死ぬんだよ」

 

レナがばっさり切り捨てる。

叱られて、リースはただ寂しそうに笑うだけだった。

それを見たレナは舌打ちして、さらに苛立った様子で隣に腰を下ろす。

そして、ほんの数日前に弟子にしたばかりの少年のために、ヒールの魔法をかけ始めた。

レナの手から伝わる温かい癒しの魔力は、けれどリースの胸の焦燥を少しも和らげてくれなかった。

 

「レナさん……僕、もっと強くなれますか?」

 

温かかった手がぴたりと止まる。

彼女は苛立たしげにリースを見た。

彼女にとって彼はまだ這い這いを始めたばかりの子供だ。

それなのに「強さ」を求めている。

こういうタイプの冒険者は山ほど見てきた――熱に浮かされて、ろくな最期を迎えない。

 

「お前は何もできてないよ、リース」

 

言い捨てて、レナは立ち去った。

残されたリースは、その言葉だけを抱えて沈んでいった。

やがてエスタが出てきたが、もうすっかり夜だった。

二人は教会の前で別れ、それぞれの宿に戻った。

 

────────

冒険者ギルドの食堂に懲りたのか、翌朝、エスタは宿の食堂でリースを待っていた。

席に着くと、ニッシャが料理を運んでくる。

しかし彼女がリースに向ける目は、どこか冷たく鋭い。

ニッシャが厨房に戻ると、エスタが口を開いた。

 

「昨日、女神様と話した結果……やっぱり下水道っぽいって」

 

彼女はげんなりした顔でため息をつき、フォークで肉を突つきながら口に運ぶ。

リースは、必死に平静を装う彼女の苦悩を見守ることしかできなかった。

 

「女神様、場所はご存知ですか?」

 

「この辺り一帯ってだけで……遠くても半日歩けば着く距離だって」

 

リースは顎に手を当て、少し考えてから、悲しい現実を告げた。

 

「でも、アッシュエンブルクにはそんな大きな下水道なんてないですよ」

 

「えっ!? ないの!?」

 

エスタが大声で驚き、眉を八の字にして両手で頭を抱え、うめき声を上げる。

 

「今日中に終わらせたかったのにぃ……!」

 

リースは乾いた笑いを漏らした。

もし本当に市内にあったら即クリアできて、しかも出町禁止令にも引っかからないのに。

 

「じゃあ、近隣の別の場所は? たとえば地下牢とか……」

 

エスタの声は力が抜けていた。

リースはまた彼女の希望を打ち砕く。

 

「それもないです。ここは一時的な留置場しかなくて、重犯罪者は即ランタナ市に送られちゃうんです」

 

「じゃあどこに行けばいいのよ……」

 

「そうだな……街の人たちに片っ端から聞いてみれば何か分かるかもしれない」

 

「おっ、いい考え!」

 

エスタの瞳が再び輝いた。

彼女は優雅に立ち上がり、さっきまでの疲れが嘘のように自信たっぷりだ。

 

「リースはギルドの受付嬢さんたちに聞いて! 私は商人と衛兵さんたちに当たる!」

 

許可も取らずに指を突きつけると、彼女は振り返ることなく宿を飛び出していった。

リースにとって、エスタはまさに嵐だった。

突然現れて、昔からの知己であるかのように絡みついてくる不思議な少女。

感情のスイッチの切り替えが異常に速く、リースには彼女の思考が全く読めない。

 

彼女は「リースは死ぬ運命だった」と仄めかした。でも彼女のおかげで助かった。

だから、リースは彼女に大きな借りがある。

だからこそ、彼は朝食の席を立ち、冒険者ギルドへと向かった。

 

受付カウンターの空気は昨日より落ち着いていた。

(あるいは担当が交代したのか? まあどうでもいい)

リースはそんな疑問を頭の隅に流した。

扉をくぐった瞬間、受付嬢の鋭い視線が突き刺さり、一瞬足が止まる。それでも気を取り直して近づいた。

 

「ほどほどにしなさいって言ったはずよね……」

 

彼女はわざとらしいため息をついてみせる。

自分たちのおかげで自分がどれだけ怒られたか、面と向かって言っているのだ。

 

「はい……本当にすみませんでした」

 

リースは深々と頭を下げた。

本心からの謝罪だったが、相手には「もういいから」と言っているようにしか聞こえなかったらしい。

 

「ふん……謝ったってどうにもならないわよ……」

 

それでもリースは顔を上げ、乾いた笑みを浮かべた。

 

「ギルドは獣が消えていることは既に把握してたから、あの依頼を僕に回したんですよね?」

 

「だって遊びに出たいって言うから……」

 

受付嬢の姉さんがそう答えると、視線をそっと逸らした。

頭の中に、苦々しい思いがふっと浮かび上がってきた。

(最初はただの息抜きだと思ったのに、まさか本気で狩りに行くなんて……

帰ってきた姿を見て言葉を失ったわよ……)

 

「まあ、無事に帰ってこれたからいいわ。で、今日はどんな仕事が欲しい? でも町の外はダメよ」

 

「仕事じゃなくて、情報が欲しいんです」

 

「情報?」

 

「はい。この街か近隣に、大きな下水道か地下牢ってありますか?」

 

「ないわね……あるとしたら未踏の遺跡くらいよ」

 

予想通りの答えだった。

次に行くべきは教会だ。

そこにはグレイモアさんたちがいる。

ギルドが知らない場所を、彼なら知っているかもしれない。

 

「ありがとうございます」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

振り返った瞬間、受付嬢が一枚の紙の束を差し出した。

 

「これ、あなたに。預かってて」

 

リースの顔が青ざめる。

 

今、街では祭りの準備が佳境に入っていた。

町の内外から人が集まり、倉庫やキャラバン埠頭への荷物運びが人手不足になっていたのだ。

リースは配達地図を見て、近い場所をまとめ、一度で回れるルートを組み、荷物の量と優先順位を頭に叩き込む。

 

(固まれ、速くなれ、強化する)

 

口には出さず、三つの強化魔法を同時に発動させてから、木箱を軽々と持ち上げた。周囲の視線が痛いほど突き刺さる。

そして、手押し車を引いて街へ飛び出していった。

 

ルートは完璧だったが、量が量だ。空が紫に染まる頃にようやく終了。

ギルドに戻り、報告書の大束を提出すると、受付嬢が目を丸くして叫んだ。

 

「えっ? もう終わったの? これ三日分よ!?」

 

信じられない様子で書類をめくる。

目の前にいるのは、パーティから「弱い」と追放された問題児のはずだ。

(いくら働き者でも、これはやりすぎでしょ!?)

彼女はもう一度、疑わしげにリースを見上げた。

 

「どうやって……?」

 

「魔法で補助して……」

 

長いため息と、背筋が凍るような笑顔。

 

「まあいいわ。よくやった」

 

「ありがとうございます」

────────

 

ニッシャの宿に戻ると、もうすっかり夜だった。

食堂は人で溢れ、ニッシャと従業員たちは大忙し。

 

彼女はちらりと笑顔を見せ、すぐに仕事に戻る。

店内を見回すと、隅のテーブルでエスタが突っ伏していた。

料理は置いてあるのに、手つかずのままだ。

リースは向かいに座った。

 

「どうだった、リース?」

 

顔を上げたエスタの声は、まるで電池切れのぬいぐるみだ。

 

「僕の方は成果ゼロ。エスタは?」

 

「同じくゼロ……」

 

彼女は顔を上げ、子猫のようなうめき声を漏らす。

フォークがようやく動き出すが、目はまだ寝ぼけている。

そこへニッシャが近づいてきた。

一方に紙、一方に炭筆。でも口を開いたのは注文取りではなかった。

 

「ねえ、二人で下水道の場所を聞き回ってたって? 何か用?」

 

「依頼なんです……詳しくは言えなくて」

 

「ふーん。だったら一つ、いいところ知ってるよ」

 

彼女は帳簿で顔を隠し、テーブルに身を乗り出して囁いた。

 

「要塞『アンダーアイゼン』」

 

リースはくすっと笑い、優しい目でニッシャを見た。

 

「アンダーアイゼンって、子供だましの昔話じゃないですか」

 

「ははは、そうだけど、今でも冒険者たちが血眼で探してるじゃない?」

 

二人が子供のようにはしゃぐ。

が、対面の少女は明らかにノリが違う。

フォークを皿に落として、ガチャン!と大きな音を立てた。

 

「アンダーアイゼンって……これインタールードキャラの出番じゃん!!!」

 

「インタールードキャラって?」

 

リースとニッシャが顔を見合わせ、同時に尋ねる。

また変な言葉だ。

「英雄譚の一篇……」

 

「へえ、この街の都市伝説がランタナまで届いてるんだ」

 

ニッシャが軽く笑うが、エスタは真剣に首を振った。

 

「違う! 本物にあるって! ガイドブックに載ってるもん! 神を憎んだ英雄の……!」

 

ニッシャの目が悪戯っぽく細まる。

信じたのか、ただ子供扱いしているのか、リースには分からない。

 

「英雄譚なら、そこを攻略した者は英雄になるってことだよ。リース、攻略したら迎えに来てよね」

 

くすくす笑いながら去っていくニッシャ。残されたエスタは、じとっとした目でリースを睨んだ。

 

 

 

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