あの人、勇者の物語にはいない。【AI翻訳】 作:ゼリ_Xerionic
「エスタ…ごめんなさい、君の記憶を勝手に見てしまって…つまり、リースのこと…彼の『本質』が…」
「リースの本質?」
「ええ…彼は…悲しい死を迎えるよう運命づけられていたんです…」
「死ぬ運命に決められてる!? どうして!?」
「落ち着いてください…今はもう助かりました。エスタが運命に介入したからです…でも」
「……」
「だからこそ…リースはエスタが望む形にならなかった。逆に、エスタが…絶対に見たくなかった形になってしまって…そして、エスタがリースに抱くこの気持ちも…」
「私の気持ち?」
「ええ…もしかしたら…『偽物』なのかもしれません」
「……」
「わらわは未来を予見することはできません。でも『色』が見えます…本質の色、感情の色…今のリースの本質は完全に無色です…エスタの気持ちも…完全に無色です」
エスタは昨日、自分の女神が語った言葉を思い返していた。
(ルナリスの言葉は彼女を深い憂鬱に沈めた。私が運命に介入して彼を助けたことが、そんなに間違っていたのか?)
(それならヒロインなんていらないじゃない)
苦々しく涙を拭う。ルナリスは正しい…まだ出会って間もないのに、なぜあんなに強く感じる?
(別の地平線から来た私には前世の記憶があっても、あの時の感情はこんなものじゃなかったはずなのに)
過剰な感情に、自分自身を問い始める。
(それとも…『世界の強制力』が…)
だから彼を試した。
そして結果は惨めだった…彼には価値がなかった。
「リース」は心が弱く、何にでも流される存在。彼女の軽い追放の言葉すら素直に受け入れた。
彼はエスタが夢見た『エス』とは全く別物だった。
(全部偽物…そうなのか…リースまで…)
すべてを知るエスタにとって、この世界はすでに終わっていた。
それが彼女の考えだった。
涙を拭い、振り払い、二度と振り返らないと決意する。
だが、階段を降りきり足を踏み出した瞬間、鼻を突く悪臭。そして足元に何かが。
「ムーンライトサイト」
短い詠唱で瞳に光が宿る。
目の前に広がるのは鉄蜂の巣で見たあの粘液の海。
「違う…こんなはずじゃない。アンダーアイゼンはただの探索クエストのはずなのに」
思わず声を上げた瞬間、奇妙な音が響き、数体の融合モンスターが周囲から現れる。
(くそっ、またソウル系モンスターか!!)
悔しさに歯を食いしばり、短い詠唱。
「シャドウズ」
少女の姿が闇に溶け、背後から一閃で斬り裂く。
鉄蜂の洞窟の本体に比べれば、これらは幼体、強さなどない。
(あのサブボス 、ここを女王を生み出す場に使っている の か。)
心で毒づきながら、静かに進む。
粘液まみれの床は歩きにくく、変異獣の数は多い。
定期的に吊るされた魔灯のせいで、時には真正面からの戦闘も避けられない。
擦り傷程度だが、スタミナは大きく削られる。
前世の記憶を頼りに、目的地の部屋へまっすぐ向かう。
だが、その部屋は明るく、光源で満ちていた。
慎重に中へ入ると、一体の融合モンスターが。
人間の頭部は残っているが、下半身はムカデ、犬、トカゲ、人間の脚が混ざり、吐き気を催す。
上半身からは二対の人間の腕が背中から生え、床を引きずっている。
(サブボスめ! こんなの作る発想は何だよ、趣味最悪!)
悪夢のような姿に吐き気がする。
一撃で終わらせたいが、部屋が明るすぎて隠れる場所がない。
正面戦しか選択肢がない。
領域に足を踏み入れた瞬間、融合体が上半身をねじり向ける。
胸の中央に歪んだ顔が埋まり、頭部上部には口だけ。
「ヒェ~ヒェ~」
腹の顔が甲高い奇音を上げ、体を捻って無重量のように飛びかかる。
エスタは軽やかに飛び避け、壁を蹴って宙返りし、伸びた腕を一閃で斬り落とす。
「シュゥ~ワァ~~」
混乱した悲鳴を上げたが、腕は即座に再生。
「ちっくしょう!!」
苛立ちを爆発させ、再び飛び込むが、
「ワァ~~」
融合体の哄笑とともに魔術陣が輝く。
光の槍が少女めがけて連射され、転がって必死に回避。
だが忘れていた──この粘液は可燃物。
火は瞬く間に広がり、爆発を起こす。
魔灯が次々と消え、緑色の光だけが一本の道を照らす。
爆風で壁に叩きつけられたエスタはよろよろと立ち上がる。
自動消火システムが作動し、青い魔術陣が天井に広がり、水を噴射。
水のカーテンが逃がしてくれると思ったが、違う。
融合体が飛びかかり、彼女を掴んで扉に叩きつける。
「アゥ~~」
すべての光が消え、融合体の残響だけが残った。
—-----------
紫青の影が視界から消えた。
リースはただうなだれ、悲しみを噛みしめる。
(どうして追い出すんだよ…)
踵を返し、広い通路へと歩き出す。
影たちが行き交い、体を通り抜けるたび胸が締めつけられる。
息を荒げて膝をついたその時、目の前に影の足が立ちはだかった。
「おいおい、本当に女の子一人置いて帰る気か?」
頭の中に、まるで四方から響くような声。
「…僕、もう追い出されたんですよ…」
自嘲と情けなさで声が震える。
だが影は鼻で笑い、もっと皮肉に返す。
「だったらなんでお前はその追放を素直に受け入れて逃げるんだ?」
腕を組む影を睨む。
立ち上がろうとするが、他の影たちがぐるりと囲む。
「だって僕……弱くて、役立たずだから……」
影たちは同時に首を振り、同時に深い溜息を漏らす。
まるで同一人物のように息が重なる。
「バカ野郎!! 弱いだの役立たずだの言い訳して、全部の問題から逃げられると思ってんのかよ!!!」
突然の怒号にリースは数歩後ずさる。
影はすぐに冷静さを取り戻し、静かに続ける。
「知ってるか? この場所を作ったバカ野郎は、お前なんかよりずっと弱くて役立たずだったんだぞ」
(偉大な大賢者アイゼンが? そんなはずがない)
「あいつは臆病者で言い訳ばっかり。全部が手遅れになってから後悔して、一人で泣きながらここを建てたんだよ」
肩をすくめ、ふてぶてしく笑う。
「坊主、よく聞け。弱い奴とは、他人の悪口に流される奴だ。役立たずとは、言い訳を探して頭を下げる奴だ」
胸がまた痛む。歯を食いしばるしかない。
(どうして追い出されたと受け入れて……帰れるのに背を向けたんだ……)
影の手が伸び、触れる。孤独と罪悪感が流れ込んでくる。
(これが……アイゼンの気持ち?)
見上げると影が頷き、鋭く問う。
「もう一度聞くぞ! 女の子一人を死なせる気か!!」
その声が心を抉る。
「仰る通りです……エスタは強い。ルナリスの使徒になってさらに強い。でも……彼女は『女の子一人』なんです!!」
踵を返す。胸が裂けそうな叫び。
(僕が強くなくても、『女の子一人』を置いていくのは正しいのか!?)
「速くなれ」
魔法をかけ、来た道を全力で駆け戻る。体が罪悪感の炎で焼ける。
(追い出されたんじゃない。僕が彼女を捨てようとしてるんだ!!!!!)
(ここで死なせて、将来どれだけ強くなっても、エスタの墓前に立てないじゃないか!)
「固まれ」「強化する」
さらに魔法を重ね、エスタが開けた穴に飛び込む。
階段の中ほどを掴み、急降下するように降りる。
(僕とエンジェリカの夢は偉大な冒険者になることだ。だから仲間を死なせるなんて、最初から選択肢じゃない!)
(これがエスタの言ってた運命なら…僕の運命をエスタが背負ってるなら…それを受け止めるのは僕しかいない!!)
腐臭が鼻を突く。粘液が靴を濡らす。
「くそっ、ここもか!?」
焦りながらグレイモアからもらったもう一つの魔灯を掲げる。
「ルミネイト!!」
灯が青白く輝き、胸に吊るす。
粘液は滑る。走れない。全力で急ぐ。
道中には融合モンスターの死体が転がる。原型を留めない肉片ばかり。
まだ息のあるものは剣で刺し、完全体は戦いながら進む。鉄蜂の巣の個体に比べれば圧倒的に弱い。
ドオオオン!!
爆音。すべての灯が消え、緑色の誘導灯だけが一本の道を示す。天井から激しい水が降り注ぐ。
盾を掲げ、水を防ぎながら突き進む。
そして──何かが飛んできた。
「エスタ!!!」
剣を収め、全力で飛びつき、間一髪で受け止める。彼女の体はボロボロだった。
「ヒェ~ ヒェ~」
背後から不気味な奇声。振り返ると異形の融合体。
中央に腫れ上がった眼鏡の男の顔。頭部は髪と口だけ。
ムカデのように無数の脚が蠢き、道中の個体より整然としているが、より悍ましい。
「シュ~ワァァァ」
中央の顔が哄笑し、膨大な魔力が渦巻く。
横に巨大な魔術陣が出現。
(まずい──!)
エスタを転がして避難させ、盾を構え詠唱。
「固まれ!!」
光の槍が無数に降り注ぐ。
魔法強化された鉄盾でも瞬時に赤熱し、変形。
最初の連射が止まるや否や盾を投げ捨てる。
転がってエスタを抱え、全力で逃げる。
だが融合体は追わない。
爆発した部屋へ戻り、何かを守るように立ち塞がる。
安堵の息を吐き、安全そうな部屋へ運び込む。
モンスターはいないが、粘液と水でぬかるんでいる。
水のおかげで腐臭は薄い。
壁にエスタを寄せかけ、胸当てからポーションを取り出し──
「ヒール」
回復魔法をポーションに注ぎ込む。
以前は魔力の序列を知らなかった。今は違う。
それでも成功は数えるほどだった。
だが今回は──女神が味方したのか、ポーションが眩い青に輝く。
十回以上重ねがけし、ランタンの老司祭並みの光量に。
外傷に慎重にかけ、残りを無理やり飲ませる。
体から青い光が漏れ、回復が始まる。
「リース…リース…」
ゆっくりと目を開け、震える手で頰に触れる。
「本物の…リースだ…」
微笑む彼女に、リースの涙が溢れる。
罪悪感で顔が歪む。
「エスタ…エスタ…ごめん…!」
強く抱きしめ嗚咽する。
エスタも抱き返し、優しく頭を撫でる。
「よしよし、もう大丈夫。いい子ね」
その瞬間──周囲の空気が一変した。
腐臭の部屋が、神聖で荘厳な力に包まれる。
白い虚空が広がり、神域が出現。
「あ、あの…す…すみません…お邪魔しちゃって…」
声の方向に目をやると、
ルナリスの女神とマリーナの女神が、照れくさそうに立っていた。