もちほっぺ転生エーリアス遭難記   作:地球Aから地球Bへ

16 / 28

筆が乗って書いてしまった蛇足ですので、読まなくても小説本編には影響ありません

ビターエンドというか、メリーバッドエンドというか、そんな感じの話なのでその点だけは閲覧注意でお願いします




IFルート エンドB ウイが幸せにしてあげる☆!

 

[※ep.8 モナティアムの逃亡者 からの派生]

 

エルフ達に追われ、モナティアムの市庁舎から飛び降りたわたしは、重力に引っ張られ、急降下する。すさまじい風切り音とともに、コンクリートの地面がみるみるうちに迫ってくるも、残念ながら、落ちるわたしを何処かから見守り、助けてくれる存在はいなかった。

 

ガツン、と激しい衝撃がわたしの頭に響く。

 

「うぅ…痛いぃ……」

 

うめき声が、思わず口から漏れた。それでも意識を繋ぎ止め、どうにか体を起こす。市庁舎の陰から、怯えた目で遠巻きにこちらを見つめるエルフたちの視線が痛いほど突き刺さる。

 

「逃げよう……」

 

逃げるとは言っても、一体どこに逃げればよいのだろう。自身の独り言に突っ込みを入れながら、わたしはモナティアムの外へ向かって走り出した。

 

もはや行き先なんてものはない。この世界にわたしの居場所などないのだ。

逃げ出すわたしの後ろで、エレナがドローン越しに何か声を掛けていたようだったが、その言葉はうまく聞き取れなかった。

 

 

 

 

気がつけば、辺りは一面、木々が覆っており、モナティアムのビル群はもう見えなくなっていた。現在地は分からず、近くに人工物や目印になりそうなものはない。

 

どうやら、わたしはまた森の中で遭難しているようだった。

 

でも、どうでもいい。

 

獣人に追い回され、妖精にも追いかけられ、終いには最も人間らしく暮らせそうだったエルフの街からも追い出されてしまった。

ある程度、文化的に過ごせそうな、魔女たちの街であるベリティエンには行き方が分からない。残る候補地、幽霊の沼は、厄介な幽霊達が居着いており、わたしがまともに暮らせる環境には思えなかった。

 

 

どうしてこうなってしまったんだろう。

人間としての知識とか、『トリッカル』の知識とか、知識チートと呼べそうな恩恵は手元にあるのに、それらが全て裏目に出ているようにさえ感じてしまう。

 

はぁ、と吐き出したため息が、静かに山の中に、森の中に広がっていく。

 

その時、ガサガサ、とわたしの後ろの茂みが揺れた。

無気力にぐるりと振り返ったわたしに向かって、『トリッカル』で聞き覚えのある、特徴的な声が投げ掛けられる。

 

「幽霊さん、ため息なんかついて、どうしたの?」

 

声を聞いたわたしの手が、緊張で強張る。

 

「悩んでいることがあったら、教えて!ウイが幸せにするよ!」

 

『トリッカル』における特別な存在、霧雨の精霊、ウイが巨大なカエルに乗って、茂みの向こうから姿を現した。

 

「あっ、自己紹介がまだだった!ウイはここの近くに住んでいる霧雨の精霊!下にいるのは友達のカエルで、名前はエルだよ!」

 

自己紹介を受けるまでもなく、わたしの目の前にいる、可愛らしい黄色のレインコートを着たキャラクターのことをよく知っていた。自称、霧雨の精霊の彼女は、実際にはただの霧雨の精霊ではない。少なくとも『トリッカル』ではそう描写されていた。

 

ゲーム内では『エルダイン』と呼ばれる特別な使徒である彼女は、超常性溢れるエーリアスの住民の中でも、ひと際強力な、世界や記憶を書き換えるような特別な能力を有している。

 

「エル!挨拶!」

 

「ゲコゲコっ……ゲコっ!」

 

ウイの言葉を受けて、すぐ下でウイを支える巨大な蛙のエルが、理解できない鳴き声でわたしに話しかけた。返事をするべきなのだろうが、今のわたしには、頭を使って回答する余裕がない。

そもそも、挨拶とは言っても、自分がここエーリアスでどんな存在なのかも、確信を持って答えられないのだ。

 

「ぅぅ…………」

 

「びっくりさせてごめんね……。幽霊さんのため息が聞こえて飛んできちゃった。ウイにできることがあったら何でも言ってね!」

 

わたしが言葉を発しない理由を、自分が驚かせてしまったせいだと誤解したウイは、今度は少しテンションを落として謝罪した。目の前の少女の言葉は善意に溢れている。その優しさに触れていると、彼女なら、私をこの泥沼から引き揚げてくれるのではないかと、どうしても期待したくなってしまった。

 

「何に困っているか教えて!不幸の原因を、ウイの力で吹っ飛ばしてあげる☆!」

 

ウイが無邪気に、不幸の原因が何か、わたしに尋ねる。

 

返すべき言葉はもうすでに、わたしの心の中で決まっていた。

 

「わたし、普通の幽霊になりたい!なるべきだったのに……!そうしたらもっと苦しまずにエーリアスに馴染めたかもしれないのに!」

 

その叫びは、間違いなくわたしの本心だった。しかし、すべてじゃない。エーリアスに来てからの何もかもが、悪い記憶というわけではなかったはずだ。とはいえ、今のわたしには圧倒的に負の感情が渦巻いていた。

 

わたしの言葉を聞いたウイは、一瞬目を伏せる。

しかし、すぐに、覚悟を決めたかのように、わたしの目を見つめた。

 

「それなら任せて!ウイが幸せにしてあげる☆!」

 

言葉と共に、ウイが振るう巨大な四葉のクローバーが光り始める。

 

その光を最期に、わたしは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、教主さま!今、何しているのかって……?竹馬に乗っているの。人間って背が高いから、わたしも背が高くないとね!」

 

雨の中、幽霊の沼をパカパカと竹馬で歩き回る幽霊を見つけて、私は思わず声を掛けてしまった。彼女は器用にも、傘を差しながら竹馬を乗りこなしており、その目線は人間である私と同じくらいの高さにある。

 

「教主さまが来てから、人間の理解が深まって楽しいよ!人間はとても背が高いらしいってリム様に聞いて、昔は無理をして、もっと高い竹馬に乗ってたんだから!」

 

彼女は自称、人間性の幽霊。自分はニンゲンだと言いながら、人間の真似に全力を掛ける比較的無害な幽霊である。ただ、人間性をテーマにした幽霊の癖に、人間が何か、という大事なことを最近までよく知らなかったらしく、たまに予測できない珍妙なことをやらかすことがある。とはいえ、当の人間である私であっても、人間が何か、という問いに上手く答えるのは難しいのだが。

 

「それ、バランス崩して転んだりしないの?」

 

「エルフの本で読んだけど、人間って長い竹馬に乗って、ジャグリングしながら綱渡りができる生き物なんでしょ!じゃあ、人間であるわたしも出来て当然だよ!」

 

「できるのは極一部の人間だけだけどね……。私はできないし」

 

彼女は頑張り屋だが、どこか努力の方向性を間違えていることが多い。だが、頭が回らないわけではなく、計算高く悪戯を計画する一面もある。先日も、人間の侵入者を装って暴れ回ったモナティアムで、要注意外来種として何度目かの指名手配をされていたはずだ。ここエーリアスでは『人間』というと、教主の私だけが該当するため、彼女がモナティアムでやらかす度に、私と世界樹教団にクレームがくるのは困ったものだ。

 

「ほら!ジャグリングもできるように練習したんだから!」

 

彼女は肩掛けの鞄から数挺の拳銃を取り出すと、それらでジャグリングを始めた。拳銃とは言っても、人間は銃を武器にしているらしい、というあやふやな言葉を誰かから聞いて作り出した、それっぽい形の鉄の塊に過ぎない。

 

最初の遭遇の際、急に銃を向けられた時には驚いたが、次の瞬間には、それをこちらに投げてきたのでさらに驚かされた。まあ、銃で撃たれるより、鉄の塊を投げられた方が痛いのがエーリアスなので、合理的な攻撃手段なのかもしれない。

 

「あ!……あ~~~~!」

 

そうこうしているうちに、彼女はジャグリングを途中で失敗して、投擲用の拳銃を足元に落としてしまった。しかも、竹馬の上からでは手が届かず、上手く拾えないようだ。気が付けば、雨の中、差していた傘も落としており、彼女のブルーグレーの長髪がぐっしょりと濡れてしまっている。

 

「ありがとう!世界樹教団の教主に傘を持たせるなんて、わたしも偉くなったね!」

 

可哀想なので、傘を拾い、差してあげると生意気なことを言い出したので、没収することにした。

 

「あ~~!傘返してよ!ウイからのプレゼントなのに!」

 

竹馬を器用に操り、彼女は私から傘を奪い取って、自分で差す。しかし、どうやら雨はもうすぐ止むようで、遠くの雨雲の隙間からは日光が顔を覗かせている。

 

「あ、虹だ……。虹はどこでも変わらずに、綺麗だね……」

 

彼女の言葉通り、幽霊の沼の向こうに、綺麗な虹が掛かっていた。黙り込み、じっと虹を眺め続けている彼女は、失くしてしまった何かを悼むような、どこかもの悲しい顔をしている。おそらく本人も自覚していないのだろう。私といると、彼女は時々ふと、そんな顔を見せることがあった。

 

「幸福の虹だよ!今日は教主さまとも会えるし、運がいいね!」

 

すぐに彼女は、いつもの楽しそうな顔に戻り、屈託のない笑顔で私を見つめながら、そう言った。

 

 




たとえ不幸な出来事があったとしても、ご安心ください。
雨が上がれば、やがて晴れの日が訪れます。






やっぱり、エルダインのイベストはいいですね!(アプリの8/13更新分の方)
甘いのと苦いのが混ざっている感じの塩梅が特に好きです


ちなみに、このエンド、IFにIFを幾つか重ねちゃっているので、小説本編通りの設定と流れだと、ep.8の分岐、そしてウイとの接触後のフェードアウトから、素直に最後の描写(教主との交流)には繋がりません。そこも含めて、ウイの力のおかげかもしれません。


そういえば、主人公の見た目について、これまで断片的に触れてはいたものの、まとめて明示していませんでしたのでここで書き出しておきます。
具体的に例を示すと、シェイディの過激ファン(冷静)に過激ファン(憂鬱)のワンピースを着せた感じの容姿として書いています。そのため、髪色はブルーグレーで、衣装の色は紫がかった黒。サイズ的にはヨミやギデオンよりほんの少し大きく、竜族の平均ちょい下くらいの背丈です。
本編だと性格は冷静と憂鬱を行き来している感じですが、このエンドだと活発になってそう……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。