MIDNIGHT ~Phantasy Star False~ 作:Libby博士
――レヴィは仮眠を終わらせ、ゆっくりと目を覚ます。
辺りにうろつくダーカーはさらに強化されているようで、コア以外の部分が赤色を超えて
「……う……?」
何故か異様な色のダーカーと普通のダーカーが殺し合う不思議な様相を見ながら、レヴィは起き上がった。
時間は……12時45分。大分寝すぎたようだ。
不思議な交戦の音が聞こえ、レヴィは眠気からしっかりと体を起こし走り出す。寝る前にいた、遺跡の最奥から音がする。
ゲッテムハルトが何かしたのだろうか。交戦の音はゲッテムハルトとその強いダーカーなのだろうか……レヴィが陰に隠れ最奥を覗いた瞬間、彼女の目は見開いた。
知らないアークスが三人と……ルビィ。
そして、対峙するのは……ゲッテムハルトのような容姿をした、異様な気配を放つダーカーだ。
(あれがあいつの言ってた強いダーカー……? にしては、……おかしいでしょ……?!)
レヴィの体は完全に固まって動けなかった。
あのダーカーはゲッテムハルトが笑いながら言っているような強さでは到底ない。
この地そのものに繋がっていて、宇宙まで膨れ上がるような、異様な気配を持っていた。
(ど、どうすれば……)
中心にて槍のような武器を構えているキャストが、その強いダーカーに向けて槍を突き刺している。あれは、このままあのキャストによって倒される……
だろうと思った瞬間、横から突然現れた別の存在によってキャストの攻撃は妨害され吹き飛ばされた。
キャストの吹き飛んだ体をルビィと知らない女アークスが庇うように立ち、その別の存在――ゲッテムハルトもどきと似た衣裳の服を着た、男型の生物がじっと見下ろす。
「……」
「何だ、アンタは……! ダークファルス……なのか。だが、そのフォトンの感じは……」
レヴィが考えていると、ふとその剣をもったダークファルスとやらと目が合ったように感じた。
(ッ?!)
レヴィは少し体を乗り出すと、背後のゲッテムハルトもどきもレヴィの存在に気づき、彼女を見下ろす。
「……ッうわッ?!」
レヴィの意識がダークファルスに持っていかれていた中、突然のルビィの声に驚き、目線が彼女の方に向くと、剣を持ったダークファルス……ダークファルス【
「っクソ、……マリアッ!」
ルビィはマリアと呼ぶ女キャストを庇いながら、少しずつ慎重に【仮面】と共に距離を取っていった。
「ルビィ! こりゃ分が悪い……最初の目的は達成した! さっさと退くよ!」
「でも、マリアッ! ここで【
「サラ! ここでアタシ達が居なくなれば、アークスは、……いや、オラクルの未来はもっと暗くなる! 引き際を覚えな!」
サラと呼ばれた女は傷ついてボロボロになった赤髪のある男を見て、頷いた。
「分かったわ! ルビィ、こっち!」
ルビィはその声掛けに頷くと、大きく剣を振りかぶって【仮面】に一太刀入れ、そしてマリアに抱えられた男とサラと共に、全速力で逃げていく。
「……ッ、」
彼らはレヴィには一切気付かずだ。
しかし、レヴィにとって恐ろしいのはルビィ達ではない。
二体のダークファルス。
【
「……」
【仮面】が、瞬時にレヴィに近づき、彼女をじっと見下ろしている。
「誰だ」
「は、……アークス共から見れば雑魚、って言った方が伝わるでしょうね」
「違う。……誰だ、貴様は。……私の歴史の中に、存在しない……」
【仮面】は腰を曲げ、じっとレヴィを見下ろした。
「アンタなりの皮肉のつもり?」
目の前の二人を見ると、その余りの強さに手に力が入らず、武器が構えられなかった。
レヴィはこんなもので怯えているのかと自分に強く嫌悪しながら、表情だけはどうにか取り繕って、【仮面】を強く睨み付ける。
「……どちらでも構わない」
「で? 戦いたいならアッチにいいのが居ますけど?」
レヴィはルビィ達が去っていった方を指さすが、【仮面】はそれを無視してレヴィに背を向けた。
「……」
そして、そのままダーカー特有の転移で消えていく。
残ったのは当然【巨躯】の方であり……
「……ッうわっ?!」
「……ほぉ。あのアークスと反応が同じ……この器の考える通り、血族とやらはどれほど争おうが似偏る部分もあるということか」
【巨躯】に突然殴り掛かられ、レヴィはなんとか恐怖を振り切りアイゼンハートを構え防ぐ。
【巨躯】の一撃は重く、レヴィはそれに押し負けると察知した瞬間飛び上がり、思考をフル回転させアイゼンハートの変化を実行しながら【巨躯】の背後に回り、そして変化させた大剣を握った。
「うっさいなぁ……どいつもこいつも家族だ妹だ……わたしには関係ないでしょう?!」
「貴様が楽しませてくれるというのであれば血族等はもはや関係もない。我と闘い、我と踊り、そしてこの力の全てを取り戻し……完全となった我と熱き闘争を繰り広げようぞ!」
「冗談じゃない……! わたしがやることなんて一つ!」
レヴィはアイゼンハートをグッと握りしめ、叫ぶ。
「わたしが求めんのは成果だけ! いい感じのデータ持って帰ればアイツらだって納得するでしょ?!」
レヴィは【巨躯】に斬りかかるが、当然刃が食い込むことは無い。
【巨躯】によって弾き飛ばされ、レヴィの肢体が宙に浮き上がると、彼女は目を凝らして周りの景色を眺める。ゲッテムハルトが着ていた服――ヘレティックロードのパーツの破片を見た瞬間、レヴィは追撃にやってきた【巨躯】の突き上げを避けるためアイゼンハートの転換で宙にバリアフィールドを出し、それを蹴って急速に降下した。
大剣を放って着地姿勢を取り、地面に着くとワンテンポ遅れてやってきた大剣が、レヴィの背後に突き刺さった。
レヴィはダーカー因子に塗れ異様に変化したヘレティックロードのパーツの破片を掴み、ポケットに捩じ込むと、すぐに大剣を掴んでそれをナイフへと変え、転がってその場から今すぐにと体を全力で動かして離れる。
「ッ!」
レヴィがいた場所には【巨躯】が拳を構えて突っ込んでいた。地面が抉られ、その先にある岩にクレーターが出来ている。もしレヴィがあのまま立ち竦んでいたら、完全に殴られていた。
(一発でも当たったら……死ぬッ!!)
「どうしたアークスよ……もっと我と闘おうではないか! この余興、貴様程の脆弱なアークス、今の我ならば十分と心得た!」
「ばっか……バカッ! こらッ! メッ! 戦わないって言ってんでしょ?!」
レヴィは見境なく突っ込んでくる【巨躯】の攻撃をひたすら避け、アイゼンハートを何とかウィップに変えて一撃でも入れようとする。
しかし鞭の挙動はすぐに【巨躯】によって跳ね返され、転換によって失われていく岩や人工物は段々レヴィから避ける場所を奪っていく。
どんな武器に変えても、どんな挙動に変えても、【巨躯】に攻撃は一切通用しない。
ギリギリのラインで避ければ周りの建造物が破壊され、風が吹き荒れ、辺りはダーカーの気配に埋め尽くされる。
「どうしたアークスよ……創世器がその程度のポテンシャルとは有り得ないであろう! もっと……もっと我を楽しませるが良い!」
「ッ?!」
逃げる場所もないまま、レヴィの頭上から【巨躯】の拳を振るわれた瞬間、まるで走馬灯のように景色は遅く感じられた。
(こんな所で死ぬの? ……わたし……)
――チームの人間にコキ使われ、後ろから笑われながら遺跡にやって来て、あのアークスにぶん殴られてボコボコにされて、オマケにルビィが勝てそうだったこの【巨躯】とかいう奴に……わたしは手負いで相手してるくせに手も足も出ず殺される?
嫌だ……わたしは生きたいんだ、生きて、アークス全員ぶっ殺して、わたしは最強になって、全員見返して……人として死んでやるんだッ!!――
「ふざけないで……ッ!!」
レヴィはアイゼンハートを手放し、瞬間的に素手で【巨躯】の拳を受け止めた。
体中が淡くピンク色の輝きを放ち、レヴィの肉体を起点にしてナベリウスの地にラインが走ると周りから絶え間なく赤紫色の光の柱が降り注ぐ。
「此は……!!」
レヴィは【巨躯】の拳を弾き返すと、アイゼンハートを握り締めライフルに変えた。
そしてレヴィは【巨躯】を強く睨みつけると、アイゼンハートはピンク色に輝くラインが宇宙の輝きを放ち、辺り一帯が光に包まれていく。
「
極太の光の柱を【巨躯】に向けて撃ち抜き、レヴィはすぐにその場を走り去った。
――極光が晴れ……
【巨躯】は彼女が生み出した光の柱を掴み、レヴィが消えていく後ろ姿を眺めた。
「フォトンが無いものでありながら我をこの一瞬でも止め、撤退を成功させるとは……その底力、天晴れ也!」
パキンと光の柱を割り、【巨躯】は笑うと、背を向け飛び上がった。
「我から力を奪ったあのアークスといい……今代のアークスとは良き闘争を期待出来そうだ! 面白い! 面白いぞ……はははははッ!!」
「はぁッはぁッはぁッ……」
――完全にまぐれだった、偶然に過ぎなかった、絶対勝てなかった……!!――
レヴィはキャンプシップに乗り込み、すぐに惑星ナベリウスから離れる。キャンプシップのアナウンスを聞きながら、脱力してへたりこんだ。
あれはレヴィの全力を超えた攻撃であり、今の自分が出せるポテンシャルを超越したものだったはずだというのに、【巨躯】に効いている様子はなかった。
命を賭けたレベルで手負いの相手をたった一瞬、たった数秒……
レヴィは己の弱さに悔しくなり、思わず地面に拳を叩きつける。
「〜〜ッ、……、こんなんじゃ、ルビィに……勝てない……!!」
生という勝利よりも大きな敗北が、レヴィの心の中を強く支配していた。