インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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本日3話目です。読み逃しの無いようにお願いします。

残りは後書きに


最終話

「結局今年も本音と数馬とシャルが優勝ね」

 

 端末から投影されてたニュースのホロヴィジョンを消して鈴は嘆息した。

 

「まさか本音とシャルが数馬めぐって対立するとは思ってもみなかったわ。数馬にはもったいないにも程があるでしょうに」

 

 呟きながら放り出した端末が、ふわりと宙に浮く。まさか宇宙で生活する日が来ようとは。なんて考えつつ、無重力に任せて後ろ向きにくるりくるりと回りだす。

 

 本音、シャル、数馬の3人は航空事業の会社を立ち上げ、開発から整備、果ては航空輸送と手広くしつつ、年に一度の鳥人間には欠かさず参加している。本音とシャルの間で話し合いがつき次第、重婚可能な国に移住するだろう。

 

 弾と虚は無事結婚し、五反田食堂から暖簾分けした店を、知り合いの誰もいない街に出した。知り合いのいないところで腕試しをするんだと、夫婦で笑っていたのが印象的だった。

 

 山田先生は鈴たちの世代が卒業した後、体を休めるために一年休業したのちに復職して、今では学年主任だそうだ。

 

 千冬さんの最後は、ひどいものだった。休むことなく戦い続け、限界を超え、歩くことさえままならなくなっていた。一夏が、お疲れ様。と言うと、静かに息を引き取った。

 

 束さんは宇宙ステーション、軌道コロニーをあっさり作り、果てに外宇宙探査コロニーを作って、人を募り、旅立っていく。

 

 一夏と簪は高校を卒業する前に籍を入れ、卒業後に束の外宇宙探査コロニーのメンバーに揃って志願して、皆を置いて行ってしまう。

 

 あたしは蘭と二人で軌道コロニーで宇宙開拓事業に従事している。本当は一夏について行こうと思ったのだけれど、二人の子供を預かり、地球という星をたくさん経験させてから追いかけることにした。

 束さんの探査コロニーは地球から6年ほど離れたところに中継基地を作るらしく、そこの資材運送団に3人して枠を確保している。

 私たちの育った星をしっかり見せて、両親の功績を辿らせて、両親と一緒に更なる旅路をゆく。一夏達親子で充分話し合って決めたそうだから、預かってやることにしたのだ。

 

 

 

「鈴姉さん。下着見えてるよ」

 

 不意にかけられた声に、ついっと視線を向けると、青みがかった髪をした10歳くらいの少年が、顔を赤くして視線を逸らしていた。

 

「マセガキ。あと10年してから言いなさい」

 

「その頃に鈴姉さんが変わらず綺麗だったら言ってあげるよ」

 

「モモのくせに言うじゃない」

 

 勢いをつけて少年に飛びかかり、頭を抱えて力いっぱい撫でまわす。

 

「わっ、わっ。やめてってば」

 

 解放すると、真っ赤になって鈴から距離を取った。

 

(あたしも成長したもんだわ)

 

 高校当時のシャルくらいには膨らんだ胸を見て、二度三度頷く。

 

「本音さんって、あの間延びした感じでしゃべる人でしょ?シャルさんと張り合えるの?あの真っ黒な人と」

 

「あんたどこでそんな知識覚えるのよ。まぁ、問題ないわよ。本音もなんだかんだ言って腹黒だから。まさかあのしゃべりが作ったキャラだなんて思いもしなかったわよ」

 

 少年が空中で膝から崩れ落ちた。淡い幻想でもあったんだろう。

 

「にしてもモモ、あんたも彼女くらいいないの?最近の小学生は進んでるんでしょ?」

 

「いないよ。それより鈴姉さんこそ彼氏いないの?モテそうなのに」

 

「あたしと蘭は一生一人身よ。そう決めてるの」

 

 少年は小さくそっか、そっかぁと呟くと、話題を変えようと大きめの声を出した。

 

「それよりも!モモって言うのやめてよ。女の子みたいで嫌いなんだから」

 

 その言葉に、鈴の目がスッと細くなる。

 

「もも、アンタ母親の名前漢字で書ける?」

 

「え?こうでしょ」

 

 宙を指でなぞるように簪の文字を書き上げていく。

 

「父親の名前は?」

 

 言われるがままに、一夏。と書く。

 

「一夏の夏の字の書き出し二画と、簪の字の最後の日を合わせて百。それに一夏の夏と千冬さんの冬の間を取って春。それで百春」

 

 鈴は少年、百春の両頬を包み、目をしっかり見て続けた。

 

「あんたの名前はね。一夏と簪の宝物だってことと、一夏が千冬さんのことを許すことで乗り越えて、次に進むっていう誓いと、百年きっちりと生きてほしいという願いのもとに付けられたの。みんなで何日も何日も考えて付けたものよ。だから絶対にカッコ悪いものじゃない。誇りなさい。その名前を。あんたはみんなに愛されてるって証なんだから」

 

「……わかった」

 

「わかればよろしい」

 

 鈴は百春の頭をやさしく撫でると、再び無重力に身を任せた。

 

「鈴姉さんも名前考えてくれたの?」

 

「あたしはね、あんたの名前を春にすべきだって言ったの。一夏は千冬さんを許したから、夏と冬の間の季節にしようってことになったのよ。そこであたしは春を押したの。時を遡るんじゃなくて、進むようにって。どんな時でも先に進めるようにってね」

 

 あたしもたまには良いこと言うもんよ。と、百春に背を向けて言った。後ろからでも耳が赤く、照れているのがよくわかる。

 

「わかった。百春って名前、好きになるように頑張るよ」

 

「そうしなさい」

 

 鈴は手をひらりと振って応えた。

 

「あ、そうだ。モモ、面白いこと教えたげるわ」

 

 器用に宙で体をひねると、にんまりと笑って見せた。

 

「一夏って、今でこそ落ち着いて簪といい夫婦してるけど、高校のとき結構溜めてたものが爆発しててね、当時担任だった千冬さんにかなり反抗してたのよ。それも口がよく回るもんだから、ちょっと調子に乗っちゃてね。まぁ、あたしたちもそれに便乗したんだけど、そのせいでアイツ、面白いあだ名がついてたのよ」

 

 思いがけず始まった、父親の高校生の頃の話に、百春の目が輝く。

 

「毒舌と、根回しと、腹黒さを取ってね。こう呼ばれたの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダークサマーって




誤字脱字などありましたら、報告いただけると幸いです。
感想評価などいただけましたら、嬉しいです。
批判、酷評はオブラートに包んでいただけると、心が折れずに受け入れられます。



長いもので、一番初め、にじふぁんの頃に短編としてこの作品の一話目を載せたのは、2011年の終わりごろだったと思います。
にじふぁんがなくなり、ハーメルンに移し、連載化するも放置して、再開して、停滞して。

多くの方の、続きを待ってます。面白かったです。の声に支えられました。

作品も何度か迷走もしました。
文体も安定しない作品ではありましたが、こうして無事、終わりを迎えることが出来ました。

アンチ書くか。という短絡で始まった作品。私自身の初めての二次創作。
楽しく書かせていただきました。
そのせいもあり、自己満足が過ぎるという指摘を頂いたこともあります。
それでも最後まで書き切りたかったので、応援を糧に踏ん張ってきました。
次の作品もきっと亀更新でしょうが、温かく見守っていただけると幸いです。


長い期間ありがとうございました。

11月15日(日) 先勝 kageto
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