猫。
メイドさんに案内されて月村の部屋に入った瞬間の感想。女の子っぽいとかそうでもないとか部屋そのものに対する感想は特にない。とういうかでてこない。
ただひたすらに猫。猫猫猫猫猫、所謂もふもふ天国。でもあと三ヶ月するともふもふ地獄。こんがり蒸し焼けましたー。
「遅かったね。お姉ちゃんと何話してたの?」
「お前達が吸血鬼って話し」
「――え?」
すげー猫だらけ・・・。一匹連れ帰りたい・・・、家には犬っぽいのは二匹(人)晩飯食いに来るけど猫はいないからなー。犬が居るなら猫もいないとね。
ところでなんか月村がすごい顔してこっち見てるんだけど。そういやさっきなんか訊かれた気がする・・・なんて答えたっけ?猫に意識いっててなんて答えたか憶えてない。
なんかしらんがやっちゃったか?
「・・・お、お姉ちゃんが教えたの?」
「なにを?」
「・・・だからその、わ、私がきゅ、吸血鬼だって事」
震える掠れた声が室内に響く。空気を読まない猫が数匹「なー」と鳴く。俺も空気を読めていないので誰かなんて書いてあるのか教えてほしい。何でいきなりシリアスになってんの?「なー」知らないですかそうですか。
「おまえが吸血鬼ってのは誘拐犯に聞いた。というかおまえは知らなかったのか?」
なんでシリアスってるのかは知らないけどとりあえず聞かれたことに答えておく。
というかこれはアレか?もう一回話さないといけないの?もう三回目だよいい加減厭きるよ?誰がとは言わないけれど。
「し、っ知らないよ!なんで黙ってたの!?・・・というか怖くないの?私ばけも――」
「どうでもいい。おまえはおまえだろ?俺は気にしないハイおしまい」
聞き飽きた台詞を遮って強制的に終らせる。いいかげん厭きたしめんどくさい気にしないって事だけ言っときゃいいだろ。あとの部分は月村姉が話すだろ。
「――ほんとうに?」
「くどい。第一気にしてんなら来ないから」
「――あり、ありがと・・・ほんとうにありがとう・・・!」
そう言って泣き出す月村。
まぁ・・・あれだ。とりあえず泣き止んでくんないかな?そろそろバニングス達が来るんだろうし、こんなとこ見られたら修羅に撲殺されるですけ――。
「――何してるのかしら?」
錆び付いたロボットのように後ろに振り向く。
そこには見事なフォームの右ストレートを打つ修羅が見えた。
「重い熱い痛い」
「そりゃそんだけ猫に乗られればね」
「にゃはは。刃くん大丈夫?」
大丈夫だったら気絶なんかしてねーよ。
猫に埋もれた体を起こす。乗っていた猫達から盛大なブーイングをされるが無視である、いままでおまえらが俺を蒸してたんだからおあいこだ。でもとりあえずブーイングしなかった黒猫は膝の上に乗せ撫でておく。ゴロゴロ、あらかわいい。
「まったくまぎらわしいのよ。ビックリしたじゃない」
「本当にまぎわらしいの。私もびっくりしたよ」
「俺が悪いのか?あと高町、『まぎわらしい』じゃなくて『まぎらわしい』な」
「う・・・。まぎらわしいってまぎらわしいの・・・」
「あんたうまいこと言うわね」
座布団一枚!なー。いや
「ところでアイツはなんで向こう向いて必死に猫と戯れてんの?」
なんか耳赤いし。
「・・・はぁ~。察しなさいよ」
「刃くんそれはないと思うの」
とりあえず高町には言われたくない。いやなんのことかは知らんけど、なんとなくそこのフェレット見てたらそう思った。心なしかフェレットも高町に非難の目を向けてる気がするし。
「女の子が泣き顔見られて顔あわせられるわけないでしょ?」
「・・・あー、なる」
確かに気まずいな。バニングス達にどんな言い訳したかは知らないけど事実俺が泣かせたようなもんだしな。
「俺帰った方がいいんじゃないか?」
「ダメ!!!!」
いつもの月村からは想像できないくらい大きいこえが空気を揺らす。ビックリした猫が俺の膝の上から飛び降りて、バニングス達は目を丸くしている。
俺は猫が降りたことに微妙にショックを受けていた。
「あ、とその」
もともと赤かった顔をさらに赤くしてしどろもどろともじもじしている月村さんがいた。お持ち帰りしたいと思った俺は悪くないはず。
「・・・むしろ私達が帰った方がいいのかしらん?馬に蹴られたくないし?」
「あ、アリサちゃん!!」
「冗談よ」
「んん?どうして馬に蹴られるの?」
「・・・なのは」
「なのはちゃん・・・」
「どうしてそんなかわいそうな目で私を見るのー!」
「それはね・・・」
「・・・坊やだからよ」
「私は女の子なのーーーっ!」
・・・なんだこの二人の連携。高町弄りの連携合いすぎだろ・・・高町かわいそうに、強く生きろよ。
「刃くんもなんでそんな哀れみの目で見てるの!?」
坊や・・・げふん。
おまえのコレまでの人生をかんがみることができる今の一幕で哀れんでたらなんか勝手に勘違いした高町。うん・・・あの二人の気持ちが分るなおもしろい。
「うにゃーーー!」
どうやら猫が一匹増えたようだ。
そんな感じの楽しいお茶会。
高町を弄ったり猫と戯れたりお菓子食ったり猫と戯れたりしていると。
「あ!ちょっとユーノくん探してくるね!」
そう言って高町がフェレットを追いかけて飛び出していった。というかあのフェレットってユーノって名前なんだ。
「大丈夫かな?」
「十中八九こけるわね」
「俺もそう思う」
高町がどう思われてるかよく分るときである。
あっやべそんなことよりトイレ行きてー。
「月村ートイレ何処?」
「ふぇ!?」
「ちょっと刃!?」
「なんだよ?」
「なんだじゃないわよ!あんたデリカシーてもんがないの?」
「漏らす方が問題だろうが」
「そ、そうだけど・・・」
「あ、と此処でて右の方にあるから・・・」
「ういー」
顔の赤い二人に見送られて部屋を出る。
あれだな若いねー。トイレの場所聞くだけで赤くなるとかねー。
そんなことを考えならトイレに行き無事用を済ませトイレから出る。
「ッ!!」
瞬間世界が変わる。
「これは・・・」
前にも経験したことある現象、おそらくは結界。どうやら高町はジェルシードを見つけたから飛び出したらしい。
これはチャンスか?
以前巻き込まれた時は余裕がなかったけど今ならそんな危険がなさそうだし、これは安全に見物できるんじゃないか?
「行くか」
そうと決まればさっそく行こう。
気配をさぐり人がいる、場所に向かう。
そこには見知った少女が中に浮いていた。
なびく金髪ツインテールに黒いスク水。
フェイト・テスタロッサさんが高町を雷みたいな物で撃ち落していた。
「なのは!!」
フェレットが喋っただとぅ!?高町落とされたことよりそっちの方がビックリだ。さすが魔法ファンタジーだ・・・。
「弱い・・・。やっぱり貴女みたいな未熟な魔導師には任せられない。ジュエルシードは私がもらいます」
そう言って宙に浮いていたジュエルシードを杖の中にしまい飛び去っていった。と同時に世界が元に戻る。結界がおそらく解けたんだろう。
しかしこれはあれか?気絶してる高町は俺が回収しなきゃいけないのか?めんどくせー・・・。
‡ ‡
「猫・・・だよね?」
「猫・・・だね」
猫さんです。
ただいま私こと高町なのはの目の前にはおっきな猫さんがいます。
「えっと・・・なんでなの?」
「たぶんこの猫の大きくなりたいって願いをジュエルシード叶えたからだと思う」
大きくの意味が違うの!
私の友達のフェレットのユーノ君の説明に思わず心の中でツッコム。
「えっと・・・封印していいんだよね?」
「うん。このままだと大変だろうし」
たしかにこのままだとお家に入れないしすずかちゃんも大変そうなの・・・。でも封印する前に一度だけもふもふしたいの・・・!あれだけ大きいときっと気持ちよさも大きいに違いないの!!
「く・・・でも・・・!」
封印しないと大変なことになっちゃうから・・・!もうあの時みたいなことになるのはいやだから・・・!
「・・・諦めるしかっ!ないの・・・」
――セットアップ!
「さよなら。次あったら必ずもふもふするからっ!ジュエルシード封い――!?」
「ふにゃあぁぁぁぁ!!」
目の前の猫さんが黄色に光る何かに貫かれる。
「え?」
信じられない光景、現実ではありえない。あんな魔法みたいな――魔法!?
「なのは気をつけて!魔導師が!」
「――ジュエルシード封印」
猫さんの中から出てきたジュエルシードが封印される。魔法のあとを追ってみるとそこにいたのはかわいい・・・でも寂しそうな目をした女の子。
二つに結んだ金色の髪をなびかせて、黒い服をきてたたずむ女の子。
・・・なんか睨まれてるような気がするの。
「なのは!猫は無事だよ!」
ユーノ君の声にハッとする。
と、とりあえずおはなししなくちゃ。
「えっと貴方も魔法少女なの?」
「・・・・・・」
うう・・・沈黙が痛いの・・・。でも負けない!
「あの・・・、貴女も集めてるの?そのジュエルシードはユーノ君の大切な物で」
「ジュエルシード、渡して」
「・・・えっとその、これはユーノ君の」
「あなたじゃちゃんと集められない」
「む・・・。そんなことないの!いままでだって集めてきたし」
ちょっとカチンてきたの。人の話も聞かないで・・・!
「被害をちゃんと抑えられてないのに?」
「――――」
蘇るのは数日前の記憶。女の子の願いによって暴走したジュエルシード、壊れる街並。
気づいていたのに、防げるはずだったのに・・・!私が気のせいだって見逃したからっ!!
「未熟な魔導師には任せて置けない」
「―――――」
未熟・・・未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟未熟。
言葉が私に突き刺さる。もっとちゃんとしていればもっと上手く魔法が使えればもっと事態をちゃんと分っていればもっと私に覚悟があれば!!
「あぶないなのは!」
「――え?きゃあ!!」
目の前に迫る黄色い魔法が弾け、私は吹き飛ばされた。
「・・・あ、ありがとうレイジングハート」
『どういたしまして』
プロテクションを咄嗟に張ってくれたレイジングハートにお礼を言う。
やられっぱなしは嫌だ!刃くんだって「やられたらやりかえせ」って言ってるしいきなり攻撃されて黙ってられるほどいい子じゃない!
それに――。
「私が未熟なのは知ってる。でもだからって貴女には関係ない!・・・私が勝ったらどうして集めてるのかお話してもらうからね!!」
私だってあれから特訓したんだ。何も知らない子に未熟なんて言われたくない!!
「関係ならある・・・!」
「――え?」
女の子が目の前から消えて次の瞬間、私の体に電気のような衝撃が走り。そこで私の目の前は黒く塗りつぶされた。
‡ ‡
「う、ううーん」
「起きたか?」
後ろに背負った高町に声を掛けてみる。
「ふぇ・・・?――あの子は!?」
「うるせー耳元で叫ぶな!」
「あ・・・こめんなさい・・・。てふぇえええ!?なんであたし背負われてるの!?」
「だから耳元で叫ぶなつってんだろうが!!つか起きたんなら降りろ!重いんだよ!」
「お、重くないよ!?これでもすずかちゃんより軽いんだからね!?」
そーなのかー。あとで月村に言っておこう。
「それよりなんで私刃君におんぶされてたの?たしか私・・・」
「俺が行ったらお前が倒れてたんだよ、大方こけて気でも失ったんだろ。おまえドジだし」
俺の背中から降りるなりそう訊いてきた高町に答えてやる。助け舟もだしといたから。
「ああ・・・うん。そうそう、もうやんなっちゃうよね!刃君ありがとう!」
予想どうり乗っかってくれた。
これが一番めんどくさくないからいいだろ。下手に巻き込まれると嫌だしな。
「ほれ、んじゃさっさと戻るぞ」
「次は・・・負けない・・・!あ、待ってよー」
先に歩き出した俺の後ろからそんな声が聞こえてくる。
まぁがんばりたまえ、俺はどっちの味方でもないから両方均等に応援してやるよ。
「あう!」
とりあえずそのドジを直さないと勝てないんじゃないか?
隣でこけてる高町を見ながらそう思いましたまる。
やっと魔法少女達が出てきました。
でもなぜだろう・・・すずかの方がヒロインに見える・・・不思議!