高町家の陰謀によりいろいろ負けた感じになったその日の夜。明日が憂鬱なことなんてお構いなしに相も変わらず犬っ娘二人は晩飯を食って満足げに溜め息を吐いている。
眼福である。
「そういやさー、今日は母親の所に報告しに行ったんじゃないのか?俺んとこになんか来ていいのか?」
本日の戦利品、翠屋のシュークリームを出しながら訊いてみる。だってどう見ても母親に会って来たって雰囲気じゃない。テスタロッサは顔に出ないけど相方は顔に出るからわかりやすい。
「えっと・・・、母さんのために急がなきゃいけないから・・・」
「フェイト・・・・・・」
だからこんな感じで分りやすい『何かがあった』ことなんて丸分りだ。そもそも急がなきゃいけないなら家に来てていいのかよ・・・言わないけど。
「そ、そんなことより!時空管理局がやってきたんだよ!?」
「じくーかんりきょく?」
アルフの露骨な話題転換だけどのってあげることにした。時空なんちゃらも気になるしそれになにより。
――俺には関係ない。
――たとえテスタロッサの袖の下にチラッと蚯蚓腫れの後や包帯があったとしても。
――関係ない。
「えっと時空管理局ていうのは――」
最近おなじみになってきたテスタロッサのパーフェクトマジカル教室によると『時空管理局』とは、一言で言えば”警察を誇大解釈した組織”といったところかな?まぁ概ね警察と変わらないと思ってくれればそのとおりだろう。
まぁ俺はどうにもこの組織が気に入らないけど。概要と名前を聞いただけだから結果は保留にするとしても、第一印象は気に入らない。もともと警察は好きじゃないしそれを抜きにしても名前が気に入らない。名は体を現すなんて素晴らしいことわざあるけれど俺はコレは概ね正しいと思っている、特に
まぁ全部憶測だしただの感想だから『実態』を知らない俺に『結果』は出せない、保留のままだ。まぁ関係ない俺にとっちゃずっと『保留』のままだろうけどねー。
そんなことより。
「おまえら犯罪者じゃね?」
「「・・・・・・」」
「おい、目をそらすんじゃねーよ」
というか余計こんなとこにいていいのかよ?
「だ、大丈夫だって!多次元を経由して追跡を振り切ってきたからさ!」
「それにジンは無関係の一般人だから共犯で逮捕されることもないと思う」
ふむ・・・まぁそれならいいか。本人達もいいって言ってるし。
「ふーんそーなのかー。どうでもいいが食わないのか?シュークリーム」
「「食べる!」」
まぁなんにしても俺には関係ない関係ない。
――まぁでも訊きたい事ができたけど・・・、テスタロッサの食ってる顔が眼福なのでまた今度にしよう。
さてさて次の日、朝起きるのが辛かったから二時限目が終わった頃に登校。
授業が終わり合間の休み時間を思い思いに過ごしている級友達に「社長ー来るの遅いぞー」「ばか!社長だから遅いんだよ!」「遅刻魔ーおそようー」なんていう心温まる声援に迎えられ自分の席に着く。もちろん声援に応えてナメたこと言ったガキどもに一発食らわしてからだけど。というか最近「ありがとうございますッッ!」「もっとッッ!!」とか言ってくるやつが出てきたんだけど・・・もう帰りたいんだけど。
「遅いっ!」
「遅刻はよくないよ?」
そんなことはこの二人が許してくれそうに無い。
というか二人?一人足らなくね?いつもならバニングスと月村と高町の三人組みが文句言いに来るんだけどな・・・まぁどうでもいいか風邪かなんかで休みなんだろ。
「訊きたいことがあんのに遅刻してんじゃないわよ!」
「刃君までお休みかと思って心配したんだからね?」
めんどいなー・・・ったくガキかよ俺は・・・ガキだったよ!ちくしょう!!
つか『刃君も』?ってことは高町はやっぱり休みなのか。
「アンタなのはがなんで休んでるのか知らない?」
「知らない。というか先生はなんて言ってたんだよ」
そもそもなんで俺なら知ってると思ったんだよ。
「先生は家庭の事情でしばらく休みだって言ってたけど・・・」
「じゃあそうなんだろ」
「アンタねぇっ!心配じゃないの!?たぶんなのはがここ数日抱えててた問題が原因なのよ!?」
「心配じゃない」
「なっ――」
頭いいくせになんでこうコイツはアホなんだ?焦りすぎだろ。
「いいか?学校側に休学の連絡が行ってることは親公認ってことだ。少なくともこの時点でおまえららが危惧するようなことは可能性が低い。それに――
あいつが自分で出した答えなんだろうしな。だから俺は心配してねえよ」
「・・・・・・なんかずるい」
なにがだ。
「アンタばっかりなのはのこと分ってる風でずるいあたしだってなのはの友達なのに・・・。そんな風に言われたら信じて待つしかないじゃない・・・・・・・」
あたしだって――ね。
はたして俺は友達なのか?
昼休み。
いつものように逃げ出した俺はこれまたいつものように裏庭の方に向かいながら今日は考え事をしていた。
さっきはバニングスたちに対してああ言ったけど、まぁ事態の予測はおおよそできてる。どうせジュエルなんちゃらの問題だろう。そこに管理局が絡んできて高町と協力体制を取ったかはたまた捕まったか・・・、でもまぁここは管理外世界――要は管理局の管轄外――らしいから
そんな風に考えてたら裏庭が見えてきた。校舎や木々で影が作られていて薄暗い空間、もちろん人気なんてなくだからこそ隠れるにはもってこいのスペースだ。俺は静かだしベンチも二つあるしわりと気に入っている、たまに寝過ごしてそのまま放課後になるくらいには。
そしてそんなお気に入りの空間に先客が一人。
白。白。白。
短く肩口で乱雑に切りそろえられた白い髪。透き通って血管や骨まで見えるんじゃないかと思うほど白い肌。そして鮮明に鮮やかな紅い瞳。人によっては幻想的あるいは神秘的という印象を持つかもしれない、しかし少なくとも俺はそうは思わない。病的で魔的そう思わせる白――アルビノ。
その少女は日陰に居てもなお白く、ベンチに座って弁当を座って食べている。
ちなみにそこは彼女の指定席らしくいつもそこで一人で食べている。
「・・・・・・・・・」
ちらっとこちらを見て何か言ったような気がするが聞こえなかった。たぶん独り言だろう。
俺も飯を食うためにベンチへ座る。もちろん空いているもう一つのベンチに。俺から見て斜め右に置いてあるベンチのその端で食べてる少女を一瞥してから俺も飯を食い始める。
今日弁当は昨日の晩飯の残りのカレーだ。二重の弁当の片方は白いご飯そしてもう一つの方にはルー・・・が・・・ない、白しかない両方白・・・、米だ・・・。
「やっちまった・・・」
えーマジかよー。さすがに白米だけじゃ食えねーよ、おかずがないと無理だよ。
チラッと少女の方を見てみる。ちょうど唐揚げが口に吸い込まれていくところだった・・・。もらえないかなー。
「・・・・・・」
自分ではちょっと見ていたつもりだったけどどうやら相当飢えた目をしていたらしい。少女は俺と弁当を交互に見てしばらく考えるように目を瞑り止まってから、俺の方に近寄ってきた。
「・・・・・・」
無言で怯えたように弁当を差し出された。なんかカツアゲしてるようだがそんな意図は少しもない。ないったらない。
「くれるのか?」
「・・・(コク)」
頷く少女。顔を上げた瞬間にはもう怯えはあんまりなくその目はかわいそうな子を見る目だった。
ちょうど顔を下げると俺の弁当とこんにちは、その驚きの白さに憐憫の情を覚えられたらしい・・・そ、そんな目で俺を見るなよーぅ。
「んじゃいただきます」
白く小さな弁当に残ってる最後の唐揚げ――というかそれしか入ってない、きっと好きな物は最後に食べる派なんだろう――を取り半分食べる。
「ぁ・・・・・・」
おかずはこれだけなんだ節約せねば――ってんあ?なんで驚いた顔してんの?なんで一目散に逃げてくの?俺なんかしたかしらん?
まぁいいや。しかしこの唐揚げ美味しいな。
弁当を食べながら俺はある噂を思い出していた。
一つ上の先輩に白く美しい先輩がいると、その先輩はアルビノらしく体育などは外に出るものは出ておらずまた登下校は日傘を差している。その姿から正に深窓の令嬢として神聖視されている・・・表向きには。
実際は神聖視とは名ばかりのイジメらしい。外傷的なイジメではなく精神的なやつで無視から始まって物を隠す壊す、あとは子供にありがちな何々菌とかいう感じの。性質が悪いのはこの学校は頭が良いという事だろう、おかげで変に知ってる奴が誤解と偏見をばら撒きそれが原因でイジメに発展。本人が大人しい性格なのもあっていいようにやられてるらしい。
以上情報屋自称する知り合い(クラスメイト)の噂。困ったことにコイツの噂は信憑性が高い。
ちなみにその先輩の名前は
――もちろん俺には関係ない。
オリキャラ投下の十五夜もとい十五話目。
実は白髪銀髪が大好きな作者です。
そしてたぶんアースラに乗ったユーノはなのはにディバインバスターで上手に焼かれているころでしょう。
前後書きで更新が遅くなると書きましたが・・・忙しくなる前にあと一話だけ書けそうだったので頑張って書いてみました。
それとオリジナルの『いつか終わるその日まで』の主人公がこの主人公と同じ名前ですけど・・・、この二人は同一人物であり別人です。平行世界の同一人物的な感じです。
さてさて月の十五夜秋ノ名月、それではウサギでも追いかけますかね・・・二羽ほど。