またせたな・・・。
ショータイムだ。
早朝。
海鳴の臨海公園の『上』で二人の少女が対峙する。
「フェイトちゃん・・・」
一人は白い服を着た栗色の髪を両側で結んでいる少女――高町なのは。
「――賭けて、互いに持つジュエルシード、全部」
一人は黒いボディースーツにマントを羽織った金色の長い髪を両側で二つ結びにした少女――フェイト・テスタロッサ。
臨海公園の『上』つまり空中で対峙していることからも分かるとおりこの少女達は普通ではない。魔導師――或いは魔法使い――といわれ、発達しすぎた『魔法』と呼ばれる『科学』を駆使する魔法少女である。
「か、母さんが、持ってきてって、言ったから、娘の私に言ったから、・・・娘?私?わた、私は――だれ?」
なのははまっすぐに見つめる、今までのようにまっすぐと、今まで自分を圧倒してきたもう一人の魔法少女を見つめる。その強さに憧れ、その寂しそうな瞳に惹かれた――とてもむかつく女の子。いつも自分を見ているようで見ていない、そのくせつっかかってくる子。
むかついた、ものすごくむかついた。だからぶっ飛ばしたくて、勝ちたくて――振り向かせたくて、見てもらいたくて――今日この日のために魔法を練習してきた。
なのに、
だというのに、
これはないだろう。
これが私が憧れて、追いかけて、尊敬すらしていた女の子?
――ふざけないでほしい。
今のあの子の目は何だ?あの――私を見ないだけならまだしも――何も見てない、見えていないあの目は!あれじゃただのビー玉とかわらない!いや、ビー玉はキレイだからまだビー玉のほうがマシ!!自分すら見えない、見ていないあの目を見ると今までないくらいにむかつく。
だから思いっきり、思いの丈を乗せて、
『Flash Move』
「いいかげん――私を見てよ!!!!」
『Flash Impact』
高町なのははその杖でぶん殴った。
「ッ!?」
咄嗟にバルディッシュで防いだ瞬間、桜色の閃光が迸りフェイトは海面へと吹き飛ばされる。しかし海に落ちる前に体勢を立て直し、上を見上げ、目に映ったものは、
「――シュートッ!!」
追い討ちの桜色の魔弾。
その数五つ。それぞれが真っ直ぐフェイトに向かって飛来する。
「――遅い」
だが、遅い。威力はそこそこありそうだが直射型射撃魔法としては弾速が決定的に遅い。これでは幾らノックバックさせているとはいえ当たらない。これがフェイト自らの射撃魔法である『フォトンランサー』なら回避は間に合わなかったかもしれない。
しかしフェイトは忘れていた――。
「なっ――」
この魔法を一度見ているということを。
この魔法は直射型ではないということを。
「――誘導型ッ!?」
避けたフェイトを追って桜の魔弾の一つが軌道を変える。
避けたフェイトの進路を塞ぐように桜の魔弾の一つが軌道変える。
「アクセルッ!」
さらに進路を塞いだ魔弾の背後にある魔弾の一つが加速してフェイトを強襲する。
「くッ・・・」
とっさに身を捻ってフェイトは避けた。しかしその隙に四つの魔弾がフェイトを取り囲むようにして展開される。魔弾はそれぞれフェイトの動きを阻害するように動き、さまざまな角度からフェイトを襲う。
「――ッ」
避ける、避ける、避ける、四方から襲い来る魔弾を避け続ける。
そして避けるたびにフェイトの頭の中でノイズが走った。
「くっぅ・・・」
数日前、刃の言葉が切欠で走り始めたノイズ。
それはまるで閉じていた扉を開けるような音。
それはまるで見たくないものが吹き出るような音。
――アリ■ア。
「ッ!」
ノイズに気をとられ魔弾を避けきれず左肩を掠る。
僅かとはいえ被弾しダメージを受けたことで焦りが募る。
そしてその時、一つの道が見えた。
魔弾に囲まれたフェイトが抜け出し、尚且つなのはに奇襲をかけることのできる抜け道。
一瞬の逡巡。
思い出すのは温泉での■■。
一瞬思い出しかけた何かを遮り、脳裏を走るのは母の言葉。
――ジュエルシードを持ってきて頂戴。私の愛しいフェイト。
「――いくよ」
『Blitz Action』
瞬間、懸念を無理矢理振り払い加速魔法を起動する。
フェイトの体が高速で魔弾の包囲を抜けなのはの元へ繋がる道を疾走する。
『Divine Buster』
「――え?」
しかし、曇った目に映る分かりやすい道など当然なのはにも見えている。いやそもそもこの道を作ったはなのはなのだから当然だ。
移動魔法を起動したフェイトに回避は不可能。あっさりとその身は桜色の光に飲まれ今度こそフェイトは海へと堕ちていった。
‡ ‡
堕ちていくフェイトをなのは見下ろす。
あっけない。
納得いかない。
海に堕ち、沈んでいくフェイトを見てもなのはは満ち足りない。
ただただ空虚なだけ。
『・・・なのは、よくやった。この勝負は君の勝ちだ。あとはこちらで対処するから君はアースラに帰還してくれ』
しばらく見つめていたなのはにクロノ・ハラオウンが管理局の
何時までたっても戦闘態勢を解かないなのはをねぎらう為だ。彼としてはただ実感が沸かないなのはに『君は勝ったんだ』と空気を読んだつもりで念話送ったわけだが――
「――勝った?私が?」
「・・・そうだ。君の勝ちだ」
「――なに言ってるの?」
しかしそれは空気を読まない行動だった。
「なのは?」
「まだ・・・終わってない」
誰がどう見ても決着はついた。なのはの圧勝で勝負は終わった。実際アースラに乗っているクロノやユーノ、フェイトの使い魔であるアルフでさえなのはの圧勝で勝負はついたと思っている。
だがただ一人。
勝負をしていた
勝負はまだ終わっていない。
決着はついていない。
そもそも――。
「――レイジングハート」
『・・・All right」
なのはの呼びかけにレイジングハートが答えると同時に、魔方陣が足元に展開される。
『高町なのは!君はいったい何をしようとしているっ!?』
なにって?そんなの決まってる。
「何時までたっても起きないっていうのなら――私がたたき起こしてやる!!」
『Divine Buster』
言い終わると同時に海面に向けて桜色の砲撃ぶっ放した。
海面に直撃し轟音とともに上がる水柱。
それを見たクロノが再度砲撃を続けて放とうとしているなのはを止めようと声を荒げているが、なのはにその声は届かない。
かまわず二撃目は放たれた。
今度はユーノやアルフ、他の管理局の人たちも止めようと念話を送ってくるが、そんなものは届かない
それほどまでになのはは怒っていた。
キレていた。
もともとなのははあまり怒らない性格の子だ。
精神的に大人びているせいか自分の感情だけを押し付けるようなことはしないし、幼少時の経験から自分をうまく誤魔化すやりかたも知っている。
だからもともと温厚な性格もあって大抵のことは笑って済ませる。
そんななのはは久しぶりに掛け値なしに子供らしくキレていた。
「ふざけないでよっ!貴女がそんな腑抜けてたら私はいったい何のために今日まで努力してきたの!?なんのために寝不足になって、なんのためにアリサちゃんに土下座したの!?すっごく恥ずかしくて床が冷たかったんだよ!?!?」
怒鳴り散らしながら砲撃を撃つ姿は少々危険が過ぎるが癇癪を起こした子供のそれだ。
この一ヶ月なのははフェイトに対して様々想いがあった。
吐き出してぶつけようにも吐き出す前に自分は倒された。
だから今日この日。
死ぬほど特訓して、フェイトに勝つために戦略も練って、絶対に勝てるとまではいかないまでも、それでも、納得いくまで想いをぶつけることはできるとこまで追いついたと確信して臨んだ今日の勝負。
結果は圧勝。
しかも自分の実力ではなく――ただ相手が腑抜けていただけ。
自分をみないで、
戦いもしてくれなかっただけ。
そんな結果で――そんな結末で納得できるわけが無い。
「だいたい、お母さんが望んでるからっ集めるってなに?貴女は集めたくないの?あなたはやりたくないの?ただただ『良い子』に頷いてるだけ?そんなの『人間』じゃない――人形だよ!!何?死ねって言われたら死ぬの!?」
言葉は止まらない。
止められない。
溜まった
「このまえの貴女は強かった、キレイだった!自分の『意思』で動いている『人間』だった!!それが何?今のそれは何?目の前も見ないで、何も見ないで――自分からも目をそらして!!!耳を塞いで目を瞑って蹲ったって何も変わらない・・・それでもって立ち上がって前を見据えて歩くから私たちは『人間』なんだっ!!家族で何かあっても、一人でも寂しくても、私は――私たちは『かわいそう』じゃないんだ!!!!」
もはや自分でもなのはは何を言っているのか分かっていない。
怒りに任せ。
勢いに任せ。
その想いを吐き出すように――ぶつける様に言葉をつむぐ。
「あなたはどっち!?ただ良い子にしてるだけの意思の無い『人形』?それとも自分で意思で選んで動ける『人間』?いったい貴女は誰なの!?教えてよフェイト・テスタロッサちゃんッッッッ!!!!!!」
叫びながら次々と打ち込まれていた砲撃の中でも一際大きい砲撃が言い終わると同時に海へと突き刺さり水柱があがる。
さらに砲撃を撃とうと魔力をレイジングハートにチャージしようとしたとき。
新たな水柱が海面から上がった。
それは金色の――。
‡ ‡
堕ちる。
堕ちる。
堕ちていく。
暗く昏い海の底。まるで絶望のように暗い水底にフェイトは堕ちていく。
まだ五月だというのに海の中にいて寒いとは感じなかった。
冷たいとも感じなかった。
それは
いや、考える気力がないといったほうが正しいだろう。
ただ無気力だった。
今までなにか大切なことがあって、そのためにがんばっていたような気もするけど、もうそんなこともどうでもよかった。
(もう目を瞑ろう・・・疲れた)
海面に見える光から目を逸らすようにその瞳を閉じた。
――ア■シア
もう安らかに眠ろうとしているフェイトの脳裏にノイズが走る。
そのノイズに引きずられるように。
引き裂かれるように。
記憶の扉が開かれる。
それは幸せな風景だった。
親子が花畑で笑いあう、どこにでもある幸せの一幕。
だがそんなどこにでもある幸せを手に入れられないこともよくあることだ。
(母さん・・・)
フェイトはこれが夢だと自覚している。
現在ではありえない過去に消えた泡沫の夢。
これは自分の取り戻したい過去であり、目指すべき理想だ。
母が笑ってくれること。
それだけを目指して今までやってきた。
また笑ってくれれば・・・この頃のやさしい母さんに戻ってくれれば自分をちゃんと見てもらえると信じたから。
だから、前はこの夢を見るたびにがんばろうとフェイトは思えた。
どれだけ怒られても。
どれだけ冷たくされても。
がんばれた。
だが今は違う。
もうこの夢を見てがんばろうとは思えない。
見たいとは思えない。
幸せなはずの一幕は今の自分にとってはただの悪夢にしか映らない。
あの日彼に『おまえは誰だ?』と質問されたあの時から変わってしまった。
幸せそうにに笑う『母』。
幸せそうに笑う『私』。
この風景に『自分』は見ていて違和感しか感じない。
確かにこれは『私』の記憶だ、そうじゃなければ今『自分』はこの風景を思い出すように見ることはできない。それにこの時の感情も情景もちゃんと覚えている。
だからこそ違和感があった。
『自分』はこんな性格の子だっただろうか?
『自分』は記憶の『私』のような笑顔ができる子供だっただろうか?
違和感が消えない。記憶の『私』を疑うよりも先に今の『自分』が『私』に疑われてる錯角に陥る。
『自分』が『私』だと信じられない。
そんなフェイトの心情などお構いなしに記憶は再生される。
過去は今へと少しだけ近づく。
『私』は花冠を作り『母』へと渡す。
『母』笑いながら受け取りありがとうと微笑み掛ける。
(見たくない)
その言葉に『私』は笑う。
うれしくて幸せで、明るく『自分』が浮かべない笑顔で『私』は笑う。
(聞きたくない)
それを見る『自分』は蹲る。
この先を見たくなくて、聞きたくなくて、必死に蹲って目を瞑って耳を塞ぐ。
こうすればいつもなら夢から覚める。今に戻れる。
起きている間もノイズは頭を掻き毟るけど、この先を見るよりもましだと知っていた。だから目を逸らし続けてた。
だが記憶は進む。
目は覚めず、夢は消えない。
その先を『自分』は強制的に見せられる。
花冠を『母』は頭に載せる、それを見て『私』はキレイだと笑顔で伝える。
「ありがとう――アリシア」
(あ――)
『母』の笑顔、感謝の言葉。
見た瞬間、聞いた瞬間。
『自分』は壊れた。
(あ、あ、あ、あああ。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、ああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああ、ああああああああああああああああああああああああああァッッッッ―――――!!!!!!!!)
『自分』の存在を否定された。
『私』じゃない。
『自分』はいない。
これはなんだ。これはなんだ。コレハナンダ。
自分はダレダ。
なんで『私』の記憶を持っている。なんで『私』をそんな優しい目で見ている。
(なんで――
今まで見ないように、聞かないように――気づかないようにしていたことを見て。向き合って。絶望した。
本当はどこか気づいていた。もしかしたら『私』はいらないんじゃないかって。誰かの代わりなんじゃないかって。気づいてた。
でもそんなことを認めてしまえば『私』はもう立てない。弱い『私』は一人では生きていけない。
自分が誰かワカラナイ恐怖に耐えられない。
だからもう、本当に、目を瞑ろうとフェイトは思った。
もうがんばれない。
もう耐えられない。
もう何もしたくない。
――本当に?
過ぎった何か。
やりたいことは無くても、
会いたい人なら――答えなくちゃいけない事なら。
「私がたたき起こしてやる!!!!」
その声がフェイトを現実へと引き起こした。
迫り来る桜色の極光。夢の残滓も何もかも跡形も無く吹き飛ばすようにフェイトの真横を突き抜けた。
(なに・・・が・・・?)
意味がわからない。わけがわからない。
なぜ自分はここに居るのか。
なぜ自分は攻撃されてるのか。
事態がまったく読み込めない。
だが一つ、たった一つ分かってることがある。
(邪魔された・・・)
もう寝るつもりだったのに。
なにもしたくないのに。
なにも知らない『あの子』に邪魔された。
(・・・・・・)
それはなんだか癪に障った。もうやる気もなにも無いけれど、なぜだか無性にむかついた。
「ふざけないでよっ!貴女がそんな腑抜けてたら私はいったい何のために今日まで努力してきたの!?なんのために寝不足になって、なんのためにアリサちゃんに土下座したの!?すっごく恥ずかしくて床が冷たかったんだよ!?!?」
(そんなの知らない)
努力だって勝手にそっちがしたことだしフェイトはちゃんと手を引けって警告した。土下座とかは本当に関係ない。
(そもそもアリサチャンって誰?)
なんでそんな訳のわからないことで怒鳴られなければいけないんだ。
フェイトの怒りのボルテージはさらに上昇する。というか絶え間なく放たれる砲撃が鬱陶しいことこの上ない。
「だいたい、お母さんが望んでるからっ集めるってなに?貴女は集めたくないの?あなたはやりたくないの?ただただ『良い子』に頷いてるだけ?そんなの『人間』じゃない――人形だよ!!何?死ねって言われたら死ぬの!?」
(何もしらないくせに・・・)
怒られるよりも、冷たくされることよりも。関心を持たれなくなることが――捨てられることの恐怖がどれだけのものか知らないくせにッ!
(大体、死ねって言われて死ぬわけが無い。私だっておいしいもの食べたいし、友達だって欲しいし、まだジンに友達になって伝えてないし。・・・そもそも親からもらった命を亡くすのが『良い子』なわけがない!!)
この子はバカなんじゃないか?
フェイトは珍しく率直に相手に対して悪感情を持った。
「このまえの貴女は強かった、キレイだった!自分の『意思』で動いている『人間』だった!!それが何?今のそれは何?目の前も見ないで、何も見ないで――自分からも目をそらして!!!耳を塞いで目を瞑って蹲ったって何も変わらない・・・それでもって立ち上がって前を見据えて歩くから私たちは『人間』なんだっ!!家族で何かあっても、一人でも寂しくても、私は――私たちは『かわいそう』じゃないんだ!!!!」
(なにを・・・知った風に・・・!)
向き合ったら痛いじゃないか、壊れるじゃないか!自分の存在そのものを否定された痛みをしらないで・・・!!そもそも私が強い?そんなわけない、強かったら私は蹲ってなんかいない!!自分で答えを見つけている!あなたが私の何を知っている?じゃあ向き合ったら変わるのか?変わらない変わらない変わらない・・・、
(でも『かわいそう』じゃない・・・。それだけは貴女が正しい。)
辛いかもしれない、不幸かもしれない、不運かもしれない。でも決して『かわいそう』ではなかった。それだけは認められない。そこはフェイトも同じだった。
だけどむかつくことには変わりない。ここまですき放題言われては温厚なフェイトも黙っていられない。大体、一目見たときからどこと無く気に入らなかったのは確かなのだ。
「あなたはどっち!?ただ良い子にしてるだけの意思の無い『人形』?それとも自分で意思で選んで動ける『人間』?いったい貴女は誰なの!?教えてよフェイト・テスタロッサちゃんッッッッ!!!!!!」
(――――あ)
一際大きい桜色の光がフェイトの真横を通り過ぎていく。
そのときにはすでにフェイトは動き出していた。
自らの
起動する魔法は自分が一番よく使う魔法でありもっとも信用してる魔法。
『Photon Lancer』
雷の槍が海面へと飛んでいき、そしてフェイトも迂回して海面へと飛翔する。
(やっぱりむかつく。・・・ジンと同じこと言うなんて)
飛翔しながら思い出すのはジンと最後にあったときのこと、そこでフェイトは自分はだれだと問われた。そのときは答えられなかった。
でも今なら答えられる。
そもそもあの時もちゃんとジンの言葉を聞いて、ちゃんと向き合ってれば答えられた。
(彼はあの時こう言った)
「なぁ
(――もう答え言ってるよ)
それに自力で気づけず同じようなことをあの子に言われて気づいた、それが何よりもむかつく。同じようなことを言えたあの子に、自分で気づけなかった自分に。
(私は――確かに、ここに居る。今まで生きてきた経験、体験、記憶、想い。その全てはたしかにあった。なら・・・私は、私は――!!)
海面を抜け空へと飛び立つ。
目の前にはさっきほど撃った射撃魔法に気を取られてるあの子の後姿。
(とりあえずまずはさっきのお返し!!)
「撃ち抜け、轟雷!!」
‡ ‡
「きゃああああ!?」
フェイトが放った金色の砲撃をまともにくらい、なのはは悲鳴を上げる。
咄嗟に防御魔法を起動させたが。気休め程度にしかなっていない。
「お返し・・・これで条件は平等ね」
砲撃を放ったフェイトは追撃をするでもなくそう言った。
その瞳は先ほどまでと違い、生気あり、意思がある。
『人形』ではなく『人間』の目だ。
「・・・いきなり、不意打ちで撃つって卑怯じゃないかな?」
砲撃を受けたなのはは痛みと苛立ちで顔をしかめながらフェイトを睨む。
「先に不意打ちしたのはそっち」
負けじとフェイトも睨み返す。
「だいたい、初めてあった時も不意打ちしてきたよね?なに?まともにやったら勝てる気がしないの?」
「戦場で気を抜いてるほうが悪い。第一あのときは決闘じゃなかった文句を言われる筋合いはない。・・・それよりも忘れたの?温泉旅館で会ったときに正々堂々やってそっちが負けたよね?鳥頭なの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
互いに譲らぬ舌戦。嫌味の応酬。
ありていに言えば子供の口喧嘩。
「・・・ふふふっ」
「・・・?」
にらみ合い牽制していたなのはが唐突に笑い出し、フェイトは怪訝な顔を――いやもうぶっちゃけこの子頭大丈夫?て気味悪がる目でなのはを見る。
「ねぇ・・・、口ってなんのためにあるか知ってる?」
「頭大丈夫?」
いきなり変なことを言ってきたなのはについに我慢できず口出して言ってしまうフェイト。
はやく管理局にもどって治療を受けたほうがいいんじゃないかな・・・?私の砲撃がきっといい感じに脳細胞をスパークさせたに違いない。ざまぁみろ。
そんな誰も想像できないであろう悪態をフェイトが内心浮かべてるとは知らずに、なのはは楽しそうにことばを紡ぐ。
「知らないんだ?じゃあ教えてあげる。って言っても私もずっとまえに大切な人に教えてもらったんだけどね?」
実にうれしそうに。
大切な思い出を語るように。
これが真理だと自信を持って、
「口はね?喧嘩するためにあるの」
そう言った。
「・・・おもしろいね」
実に彼が言いそうな台詞だ。
「じゃあ、私たちは今ちゃんとした用途で口を使ってるんだ」
「うん、そうだよ」
二人してにやりと笑う。
自分たちでもわからないけど楽しくてしょうがない。
素直にぶつかり合うのは楽しい。
きっと人と人はここから始まるんだ。
(ああ・・・だとすると、私は確かに今までちゃんと口を使ってなかったのかも)
逃げていた私は、思いをぶつけず人形のように頷くだけだった。喧嘩のひとつでもちゃんと母さんとしてれば何か変わっていたのかもしれないとフェイトは思う。少なくともここにこうしていなかった。
「じゃあそろそろ始めようよ」
「そうだね、一番初めの真剣勝負」
フェイトが構えながら言うと、なのはも構えて答える。
「買ったほうがジュエルシードをもらう」
「ついでに勝っても負けても友達なの」
「・・・いいよ」
魔法少女は互いを見据える。
「私は――フェイト・テスタロッサ」
(もう・・・迷わない。そうだ私はフェイトだ。フェイト・テスタロッサだ。たとえ何があろうと私は母さんの――プレシア・テスタロッサの娘だ!)
「――高町なのは」
(やっと追いついた。やっと振り向かせた。ここからは真剣勝負、やっと――今までの借りが返せるの・・・」
開戦の狼煙をあげる様に名乗りあう。
だがこれはそんなもんじゃない、もっとありふれていて、よくあること。
「「はじめまして」」
最初に『出会った』ときの自己紹介。
さぁここまでが
ここからが
前書きで調子に乗りましたすいません。
いやはや記念すべき二十話です。おまたせしました。
今回は我等が主人公、刃君は出てきません。というか次も出てきません。・・・あれー?まぁいいや。だって主人公らしくないし、魔法いまだに使えないし。
さてここからが本編、もとい本題。
PCが壊れたというまことに嘘くさい勝手な理由で遅れてしまってもうしわけございません。バイト代を生贄に安いPCを召喚したのでもう大丈夫です。
書けます。
待ち続けてくれている人が何人いるのか・・・そもそも存在してるのか疑わしい(疑わしいのはおまえだ)ですが。これからも読んでいただければ幸いです。
ではこれからちょっとリンクスタートしてきます。
失踪はしないので安心してください。