魔法少女リリカルなのは~よくある転生記~   作:春夏冬 秋人

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第二十一話 雷光VS星光~俺、やはり出番なし~

 そして、フェイト・テスタロッサは目を見開いた。

「バルディッシュ」

『Yes sir!』

 力強く愛機の名を呼ぶフェイトに憂いはないと愛機は力強く答える。

 フェイトが塞ぎ込んでいたこの数日、もっとも近くでもっともその様子を見てきていたのは他ならぬ愛機(バルディッシュ)である。主人の楯であり刃であり、ありとあらゆる面で主を支え力となることが存在意義のデバイスであるバルディッシュは、この数日の主の様子を見ていた彼が一番歯痒く思っていた。

 だが今の主は吹っ切れており迷いはなく、いつもの――いや、いつも以上に生き生きとして主らしいように思える。主が立ち直ったこの場にたちあい、そしてこの『決戦』の場で主の武器として振るわれることはデバイスとして何にも勝る誇りであり喜びである。

 今の自分たちに負けはない――さぁ、存分に飛ぼうではないか!!!

『Blitz Action』

 速く鋭く、雷光の如くフェイトは飛翔する。

 対するは白い魔導師、高町なのは。先ほどの前哨戦ではこちらが勝ち越しているが――あんなものに価値はない。今ここから本当の勝負であり決戦なのだ。

「勝つよ――レイジングハート!」

『All right!』

 この一ヶ月、なのはがどれほどの努力をしてきたかレイジングハートは知っている。何度も落とされ実力の差を、身の程の差を、たたきつけるかのような敗北に膝を屈してきた。だがこの主はそのたびにそのたびに『それでも』と不屈の心持って立ち上がってきた。すべては今この日この時のために、それこそ身を削る努力をしてきた。

 ただ勝つために。

 今勝つために。

 もう二度と主に不覚は取らせはしない、そのためのデバイス(わたし)だ、そのための(わたし)だ。主を高く高く共にどこまでも――あの空に光る星のようにどこまでも!!!

『Flash Move!』

 高く高く、なのはは飛翔する。

 

 

 

‡  ‡

 

 

 

 互いに高速移動魔法を起動した二人は互いにとって最適な距離、位置を取るために天空を舞う。

 それはまるで舞踏会。

 たった二人きりの舞踏会。

 魅せる物は自分の心。

 互いが互いを鑑賞し、干渉し、観照する。

「ファイヤっ!」

 単純な速度ではなのはもフェイトに負けてはいないが全体的機動力はフェイトに部がある。結果、先手を勝ち取ったのはフェイトだ。

 フェイトの周りに浮いている黄金の発射台(フォトンスフィア)はその数5、そこから槍状の魔力弾が高速で連射される。

「――っ」

 迫りくる雷槍を危なげに回避し射線から逃れようとするが、フェイトの機動力の高さとフォトンスフィアの発射口が傾きなのはを追っているため逃れられない。

(それなら)

 このまま避け続けるのは難しく、有利な位置をフェイトから奪うのは不可能だと分析したなのは、急上昇し空へと駆け上がる。無論フェイトも後に続いて駆け上がる。

「シュート!」

 そして反転そして同時になのは誘導弾(ディバインシューター)を起動。フェイトに向かう魔弾は五つ。

 しかし反転したことで雷槍をよけきれずその身に被弾するが、

 (食らうとわかっていれば耐えられる!)

 防御魔法を起動しやせ我慢。体育は苦手なくせに体育会系な思考回路を持つ少女は魔弾を操作しながら自らもフェイトに突っ込む。

(――え?馬鹿なの?いくら防御に優れてるといっても限界があるし、そう何発も耐えられるわけがない・・・。そもそも中~近距離はこっちの領域なのに・・・)

 対するフェイトはそんななのはの蛮行に呆気に取られる、が同時に警戒もする。

 なぜなら目の前に居るのは強敵、数週間前のなのはならいざ知らず、今ここにいるなのはは自分と同じくらいの魔法戦ができる魔道師だ。

 もう侮ったりしない、油断もしない。

 (なにかある)

 そらならばそれでいい、こんどは思いどおりになんてなってやらない。

 ――翻弄してやる。

 罠。

 戦略。

 (捕まえられると思わないで・・・!)

 魔弾は雷槍を潜りながらフェイトに迫る。

 撃ち落せたのはたったの二つ。

 その精密な魔力操作にフェイト舌打ちしたい思いを堪え回避する。魔弾はフェイトのには当たらない。代わりに撃墜されたのは発射台(フォトンスフィア)

 (最初からこっちを狙って――!?)

 フォトンスフィアを壊した魔弾をすぐさま鎌で切り裂き魔弾での追撃を防ぐが、

「やあぁぁぁ――!!」

『Flash Impact』

 なのははそこまで期待していない。

 振り下ろされる魔杖。また海に叩き落してやるとそれは桜色の閃光を走らせながらフェイトに迫る。

「そう来ると思ってたよ」

 半身をそらし魔杖の一撃を危なげなくフェイトは避ける。

 そもそもこちらに向かって来た時点でこれは予想通り、そもそも自分のほうが近距離は得意なのだ、なのにそこで勝負をしようなど愚の骨頂。死中に活など見出せるはずなく愚か者は死神の鎌から逃れられない。

「――フェイトちゃんなら」

 ただし。

「これくらい避けるって思ってたよ」

 死中の外にならもちろん活は残せる。

 

 

 

「アクセル」

 

 

 

 なのはが背後に残しておいた六つ目魔弾が今まで一番早い速度をもってフェイトに向かって襲い掛かる。

 打ち落とすのは間に合わない。

 ならば避けるしかない。

「バインド!?」

「逃がさないよ」

 桜色の光輪がフェイトを縛る。

 これでは避けられない。

 これでは打ち落とせない。

「――っ!」

 魔弾はフェイトに直撃し爆発。

「ダメ押し!」

『Divine Buster』

 桜色が粉煙を文字通り吹き飛ばす。

 砲撃が通った後には何も残らない。

「え――」

 そうそこには誰もいない。

「切り裂け!」

『Arc Saber』

 頭上からの声に見上げてみるとそこにはフェイトが黄金に光る刃をこちらに飛ばしてる姿。

 すぐさま避けるため行動を起こすが、

「お、追ってきてる!?」

 黄金の刃は高速回転しながら不規則な起動を描きなのはを追尾する。

「ファイヤ!」

 さらにはなのはの動きを阻害するように雷槍を撃たれ、遂にはその刃がなのはに届く。

「レイジングハートッ!!」

『Round Shield』

 なのは足元に魔方陣が現れ振り上げた手の先に円形の楯が現れギリギリのところで刃を防ぐ。

「なにっ・・・これ・・・・!?」

 だが防がれたとしても刃は回転を止めることなく盾を削る。

 障壁を削りなのはを拘束する。それはまるで強大な口に噛まれたように。

 そしてそんな致命的な隙をフェイト見逃さない。

「あっ!」

 なのはの体が黄金の輪に捕まり驚きの声を上げる。刃は消えたが体は動かないためさっきと現状は何も変わらない。いや、脱出の難易度で言えばこちらのほうが上。

 準備はできた、もう逃がさない。どれだけ相手が堅かろうとこの魔法は耐えられない。

 フェイトは今まで一番魔力を練り上げる。

 

 

「――アルカス・クルタス・エイギアス」

 

 

 

 フェイトが詠唱を唱えると同時に金色の巨大な魔方陣が足元に展開される。

 

 

 

「疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル――」

 

 

 

 フォトンスフィアがフェイトの周りに翼のように形成され、黄昏に染まる空。それはさながら世界の終焉。

 計38基。死を吐き出し破壊を撒き散らす暴力銃口が一人の少女に狙いをつける。

 

 

 

「フォトンランサー・ファランクスシフト――撃ち砕け!!ファイアー!!!」

「お願い!!レイジングハート!!!」

 

 

 

 瞬間、千の雷が降り注いだ。

 気の遠くなるような4秒間。38基すべてが毎秒7発、計1064発の雷槍を撃ちだす。

 もうそれはだだの暴力、だだの暴虐。

 次々と撃ちだされる雷槍、その暴力の嵐はたとえ相手がどんな防御性能を持っていようが粉々に打ち砕く。

 フェイトの師匠が確信を持って教えた魔法であり。

 フェイト自身の最高威力の、自信の魔法。

 (まだ・・・まだだ・・・!)

 だが、この程度では終わらない、

 

 

 この程度では彼女は倒せない。

 

 

 もう一手。

 もう一撃。

 もう一歩。

 完成させた魔法をさらにその先へとシフトさせる。

 スフェイアを束ね合成し融合し巨大な雷の槍を作り出す。

「スパーク――――エンドッッッ!!!!!」

 止めの一撃。

 雷神を思わせる破壊の権化。

 槍は轟音を轟かせながら迫る。

 ゴッバアァァァァァッッッッッ!!!!

 落雷を思わせる轟音が響く。

 なのはが立つ場所には煙が立ち込めどうなったかは見えない。だが自信はあった確信もあった、フェイトは勝ちを確信していた。

「え?」

 だがそれもフェイト自信に起きた異変によって欠き消える。

 右腕と右足に桜色の正方形(キューブ)がフェイトを拘束する。だがフェイトは最初は何が起きたのか理解できなかった。

 どうして自分は拘束されてる?

 誰がやった?

 そんなものは考えるまでも無い。

 

 

 

 桜色。

 

 

 

 その色をした魔力光の持ち主は一人しか知らない。

 

 

 

 桜色の魔方陣が展開され煙が晴れる。

 そこに高町なのはが立っている。

 バリアジャケットはボロボロで服としては最低限しか役割を果たしておらず、肩で息をして見るから満身創痍。

 だが、

 それでも、

 高町なのはは立っている。

「――今度はこっちの番」

 フェイトに向けた杖の先に魔力が集まる。

 いつもよりも、

 今までよりも、

 大量に濃密に、

 魔力をチャージする。

「くっ・・・・」

 チャージされる魔力の量にフェイトは顔がゆがむ。

 今までだってアホみたいに魔力が多かったのにさらに魔力が多い。こんな砲撃は受けきれない、そもそも防御性能はこちらはなのはに比べれば紙と同義だ。そんな自分にあれは受けきれない。

 ならば、やることはひとつ。

 (このバインドを抜け出して避ける。幸いむこうは発動まで時間がかかる)

 ほとんどのマルチタスクによる思考をバインド破壊につぎ込む。脳髄が溶け神経が焼ききれる錯覚に負荷による現実の痛みが付随して、倒れそうになるが奥歯を噛み締め意識を保つ。

「いくよ。ディバイィィィン――――!!!」

『Buster!!!!』

 しかし無常にも時間が足らない。

 魔力が足らない。

 桜色の放流がフェイトへと突き進む。

 (なら――受ける。あの子にだってできたんだ。なら・・・意地でも私が堕ちるわけにはいかない!!私は――負けたくない!!!!)

「バルディッシュッッ!!!!」

『Yes――sir!!!!』

 フェイトが防御魔法を起動するのと同時に砲撃がフェイトにたどり着く。

「あ―――が、・・・ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!」

 雄たけびを上げ、防御の上から尚ダメージを与えてくるおかげで、バリアジャケットは裂けていき、残り少ない魔力が削られブラックアウトしそうになる意識を必死に保つ。

 そもそももうフェイトは限界だ。いや、限界なんて当に振りきっておりもはやこの刹那を耐えているのはありえない。

 (負けたくない負けたくない負けたくない負けたくない負けたくない負けたくない負けたくない負けたくないッッ!!勝って――帰るんだ、母さんの下へ!!ジンの所に!!!)

 だが、強い意思と思いと決意。それらを総動員し限界を、限界超えた先まで行った者の起こしたそれを――。

 

 

 

 

 人は『奇跡』と呼ぶ。

 

 

 

 そうしてフェイトは耐え切り、『奇跡』を成した。

 だが――。

 

 

 

「うん、わかってた。フェイトちゃんはこれくらいじゃ倒せない。――だから!これも受けて見せて、ディバインバスターのバリエーション!これが私の全力全開!!!」

 

 

 

 奇跡が起こせたからといって事態が好転するとは限らない。

 杖の先、光輝く桜の星。

 その星は周りの小さな桜と金の星を飲み込みながら大きく、さらに鮮烈に光り輝く。とても綺麗な星光、だがこの光を浴びるものは絶望の二文字しか浮かばない。メルヘンもロマンもまとめて押し流し破壊する凶星。

 収束砲撃魔法。

 周りにある使用済みの魔力を一点に集め放つ砲撃魔法。

 なのはの切り札であり、フェイトを完膚なきまでに叩き潰すために生み出された凶悪な魔法。

 この一撃をこのシュチエーションで撃つために意図的に収束しやすいように魔力をばら撒きながら戦ってきた。

 勝てないのなら戦略で相手を絡め、圧倒的な力で押しつぶす。レイジングハートと共に勝つために考え出した答え。

 睡眠不足の恨み辛みが混ざっているのはご愛嬌。

「スタァァーーーーーライトォーーーーーーッッ」

 だが、フェイトも諦めない。

 この程度の絶望では膝屈するには足らない。

 さっきまで自分はもっと酷い絶望の中でもがいて、足掻いて、這い上がってきた。そんな自分に『まだどうにかなる』可能性がある現状はまだまだ希望が満ち溢れている。

 それがつらく厳しく、細い一筋の脆い物だとしても、それでも、最速でそれを駆け抜け手にいれる!!

「ブレイカァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 名前のどおり星すら破壊できそうな光が、星がフェイトに向かって堕ちる。

 その光景を見ながらフェイトは脳を酷使しバインドを解こうと解析する。

 奇跡は二度起こらない。

 それをフェイトは理解している。もう一度――今度はさらに威力の高い――砲撃を耐え切るなんて不可能だ。

 だからこそ、防御は捨てた、飛行魔法すら起動していない。

 今度こそ全マルチタスクをバインド破壊につぎ込む。

 あまりの思考速度に世界がスローになり、色を無くして音が消えた。

 耳鳴りがする。

 視界が狭まる。

 吐き気が止まらない。

 頭が熱い。

 神経が焼き切れる。

 (はやくはやくはやくはやくはやくッッッッ)

 ゆっくりと近づく破壊の光に気持ちが焦る。

 

 

 

 パキッ!

 

 

 

「っ!」

 バインドにヒビが入った瞬間、フェイトは光に飲まれた。

 

 

 

 その様子をなのは凶星の反動を抑えながら見ていた。

 信じて見ていた。

 あの子はきっと――。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!」

 これでも倒せないと。

 ボロボロのバリアジャケット、もはやただ最低限布を貼り付けただけの格好になりながらも、あの破壊の光の中を突き進みこうして鎌を振り上げ目の前にいる。

 

 

 

 そう、予想通りに。

 

 

 

 死神の鎌が振り下ろされるよりも先に。

 

 

 

 

「降れよ明け星。破壊の雨となり、我が敵に降り注げッッ!!!」

 

 

 

 

 なのはの奥の手、切り札ならぬ伏せ札が、

 

 

 

 

「スタァーダストォォーー!!ブレイカァァァーーーーーッッッ!!!!!!」

 

 

 

 起動した。

 

 

 周りにある魔力の残滓が流れ星のようにフェイトに降り注ぐ。

 フェイトはそれを気にしない、相手の魔法よりも自分の刃を届かせればいいだけだ!!!

「ハアァァァァッッッ!!!」

「イヤアァァァァァァァッッ!!!」

 両者の咆哮を星の欠片が爆音と共にかき消した。

 

 

 

‡   ‡

 

 

 

 アースラに乗りこの決闘のを見ていた管理局所属の執務官、クロノ・ハラオウンは戦慄していた。

 まだ年端もいかない少女がこれだけの魔法戦をしたことに、

 なにより。

「女の子って怖い・・・」

 その気迫に。

「え?知らなかったの?クロノくん・・・」

 ショートセミの栗色髪、なによりアホつむじあたりから生えているアホ毛が特徴の女性が黒い髪の少年、実年齢以下に見られやすい身長の上司に呆れたように返した。

「エイミィ、できれば僕は一生知りたく無かったよ・・・」

 ため息を吐いて目元を押さえるクロノ、少年はこうして世界の真理を知った。

「世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばかりだ・・・・」

 そう言って落ち込むクロノに対してエイミィはそんなことよりとモニターに目を向ける。

「どっちが勝ったと思う?」

 モニターには二人の少女が共に爆発に巻き込まれた場面が映っている。

「・・・そうだね。僕は予想がついてるけど、それはここで答えるのは野暮って物だよ。大人しく見ていよう、結末を」

「・・・そうだね」

 珍しく空気を読んだクロノに若干驚きながら画面を大人しく見守る。

 やがて煙が晴れる

 そこには、

 

 

 

 気絶したフェイトを抱えたなのはの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして――

 決闘の幕を下ろすように、

 その瞬間、雷撃がアースラを襲った。




それでは桜が舞い落ちる今日この頃、21話です。
今回は無印の見せ場にして大一番、フェイトVSなのはです。いやはや、やっぱりこういう見せ場を書いていると自然とテンションがあがって胸が熱くなりますね。
しかしこの勝負、原作を壊す気が無いまま書くとなると結果がわかっている部分なんですよね。なので結果がわかっていても楽しめる戦闘を目指して見ましたがどうでしょう?
ちなみに自信はありません。
だって嘘だもの。
まぁ数日遅れのエイプリルフールってことで一つ。


さて学年が一個上がって後輩ができ、いろいろ本格的に動かなければいけない作者ですが・・・、まるで成長もしていなければ、自覚も、実感もありません。
まぁとりあえずあと数ヶ月で酒が飲めるので、それを切欠に自覚くらいはしたいものです。








それじゃ遅いことは知っているけど。
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