――ピン、ポーン。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ?あーなに?出番?うん・・・・・・うん?今何時?
寝起きでろくに回らない頭の歯車に潤滑油をさすように時間を刻む歯車に手を伸ばすと、長い針と短い針は綺麗にそれが本来の姿だとでも言うようにその身を一直線にしていた。
6時って書いてあった。
――ピンポーン、・・・・・ピポピポピポピポ!!!
ブチッッ!!と何かが切れる音が頭の中に鳴り響いた。それは堪忍袋を縛るための紐で、原因は時間と今も尚鳴り響いているどこかのクソッタレがインターホンを連打している音。つまりは俺の眠りを妨げたこと。
「・・・殺す」
まだ十分寝れるじゃねぇかふざけんなどんな了見があって朝っぱらから人様の睡眠を妨害してくらさっちゃってんだよだいたい朝6時にインターホン連打とか朝6時にお宅ほーもんとか常識を知れよありえねーだろ新聞配達だって老人だって散歩に出かけるクソ犬だって少しは気ぃつかって静かにすんだよなのになんだよこの騒音いやいやまったくこんなに常識知らずクソッタレはきっちりかっちり殺して、魅せてやらねえェェェェェェェェとなァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!
感情に任せて玄関へと走り、誰がやったのかだとかそんなことは一切気にせずドアを開け放つ。
「あ、ひさしぶ」
「死ねオラアァァァッ!!」
「きゃあああああああああ!?!?」
そして俺のローリングソバットが綺麗にテスタロッサの側頭部に決まった。
‡ ‡
「で?何でこんな朝っぱらから家に来てんの?何のよう?」
「・・・もう何度も謝ってるんだからいい加減許してくれないかい?」
ああ?許す?
「アルフ・・・、俺がもっともこの世で嫌いなことの一つはな、人に大した理由でもないのに睡眠を妨害されることだ。わかってんのか?ああ?俺は今、その嫌なことをされた・・・こいつはメチャ許せんよなぁぁぁ!?なぁテスタロッサ!」
「ゴメンナサイゴメンサイゴメンナサイゴメンナサイ」
テスタロッサは隅で丸くなって涙目になって壊れたレコーダーみたいにずっと謝ってくる。
・・・人に見られたら実にやばい場面だな(今の俺には知ることの無いことだがアースラのメンバーはばっちり見ていた)。
閑話休題。
「・・・はぁ。でなに?お前らが一緒に来たってことは例のことでいいのか?」
とりあえず壊れたレコーダーを直して、俺の睡眠を妨げた理由を聞く。
これでくだらねーことだったら・・・ねぇ?
「・・・目が怖いよ。例のことは無しになったから違う」
アルフが顔を引きつらせている。なにか怖いものでも見たんだろうか?
「アンタの笑顔が怖いんだよ。口元だけで目が笑ってないから」
「そんなことねーよ」
眠いから目を開けられないだけだぜ?
「で?例のことじゃないなら何?」
「それは・・・」
そう言ったアルフの視線を追うとテスタロッサが意を決したように俺を見ていた。
その目は最後に見たときのように濁っておらず綺麗な目をしていた。どうやら立ち直ったらしい。
「今日は・・・話があってきた」
「話って?」
「あのときの質問の答え」
へー。
んじゃ答えてもらおうか。
お前は誰だ?
「私は――フェイト・テスタロッサ」
お前は誰のために生きている?
「私は――私のために生きる」
おまえは何だ?
「私はプレシア・テスタロッサの――母さんの娘だ」
ふーん。
「そうか」
「うん」
俺はただ頷いて、テスタロッサもただ頷いた。
それ以上は余計で余分だった。
これは結局自分自身が納得するだけの話。俺が納得する意味はないし、俺が決めることでもない。答え合わせは俺に問うべきでなく、自身にしか解けない。それでも訊いたのは俺だから回答は聞くけど。それが合ってるかどうかはこれから本人が決めるんだろう。
「んじゃもう部屋戻っていい?寝たいから」
「だ、ダメ・・・です」
「何でだよ?もう話終わっただろ?俺は寝たいんだよ」
そういうとなぜかテスタロッサは顔を伏せてもじもじし始めた、心なしか若干頬が赤い気もする。
・・・なんですかこのかわいい生き物?あれだ、今すぐ抱きかかえてベットに放りこんで抱き枕にしたい。なんか暖かそうだしいい夢見れそう。
表情には出さず心の中でニヤニヤしながら眺める。何がそんなに言いにくいのか、顔を上げて目が合っては俯くという工程を繰り返している。なんかあれだ小鳥が水を飲む様を模した玩具に似てる。
そしていいかげん見ていて鬱陶しくなったのかアルフがなにやらテスタロッサの耳元で言い背中を軽く叩いた。
そして押し出されたテスタロッサは顔を上げた。
目が合う。
だが今度は顔を伏せない。どうやら覚悟決まったらしい。
まぁまだ顔は若干赤いけど。
「あ、あのっ!」
「お、おう・・・」
声がでかい。
というか何をそんな緊張しとるんだこいつは?
「私とっ!と、友達になってくださいっっ!!」
・・・・・・・・・ハッ!
なんだ?どうした何が起こった!?これは新手の奇襲か!?それともスタ○ド能力か!?きっとザ・ワ○ルドかキング○リムゾンだな・・・。
いや、そんなことはどうでもいいんだよ。
いきなりだ・・・実にいきなりだ。まぁいや、家に上げといて今更なにを?とか言われるかも知れないが(誰にかは知らない)、それでも俺とテスタロッサ間に『関係』はなかった――だからこそと言うのもおかしいけど――俺は今回のことについては何もしなかった。まぁ何かしようとしても足を引っ張るだけで何かが変わることはあっても良くなることは無かったと思うけど。
というかそもそも俺と『友達』になりたいなんて言う奴が居るとは思っていなかった。一応自分がどれだけ性格悪いかはそこそこ理解してる。クラスで浮いてるのも理解してる。野次を飛ばすやつや笑い者にするやつは居ても普通に話そうとしてくる奴はあの三人以外には二人だけだ。あとは殆ど遠巻きに見るだけ、中には明確な嫌悪と怯えの宿った目で見るやつもいる。
そもそも友達どころか人と関係を持とうとしないようなやつに人が好意を抱くわけが無い。
そんな奴と『友達』になりたくなんて無い。
誰だってそう思う。
俺だってそう思う。
「・・・・・・・・・」
「・・・どう・・・かな?」
無言でフリーズする俺にテスタロッサは不安そうな上目使いで俺を見る。涙が今にも落ちそうだ。
断られたらどうしようと本気で心配し不安に思っている目だ。
無論ただの俺の勘違い、正確には俺の希望的観測、願望。人の目見て感情そんな詳細にわかるかよ、俺はエスパーかっ!
やばい、いい感じに混乱してるのがわかる。というか今自分で答え言わなかったか?
・・・うんあれだな、いい加減逃げられなくなったということだな。
「・・・あーあれだ、うん・・・いいぜ?」
きめぇ・・・俺きめぇ・・・やべえ死にたい・・・・。
「うん!・・・え?なんでそんな落ち込んでるの?」
いや、うん自分の反応のキモさに自爆した。もう墓穴掘って入りたいぜ。
「穴があったら入りたいって奴だね!もちろんあたしとも友達になってくれるんだろうね?」
「あーうんそりゃあね。だからアルフさんいい笑顔で拳振り上げないで怖いから」
「え?拳で語り合ったら友達なんじゃないのかい?」
どこの青春ドラマだよ。いやだよそんな暑苦しいの。
「え?でもフェイトはそれで友達作ったんだがねぇ・・・?」
え、なにそれ怖い。
「というかそんなんで友達なわけないだろ。友達は・・・あれだ、うん・・・どうしたら友達なんだ?友達なんて作ったことねーからわからん」
「え?ジン友達いないの・・・!?」
「いねーよ?」
つかなんだその目は?驚きすぎだろ、ありえないモノを見た目だぜそれ。ボッチはこの世に確かに存在すんだよ!ありえなくなんか無いんだよ!!
「・・・じゃあ私が教えてあげる」
「ほう・・・どうすんだ?」
これからのためにご教授願おうか。
「――名前を呼んで」
あっけないし簡単だった。でもだからこそそれは正しくて、神聖だった。
目から鱗ってのはこういうことを言うんだろうな。
というかこんなことも知らなかった俺は相当ヤバイんじゃないんですかね・・・?
「――フェイト」
結構はずい。
とりあえず後頭部をがりがりと掻きながら言う俺は初々しすぎてキモい。普通の小学生ならまだしも前世と合わせて20そこそこだからな・・・。
「うん!」
でもまぁ・・・嫌じゃない。少なくともフェイトの笑顔はかわいいしな。
‡ ‡
眠い。教師の睡眠魔法がガリガリと俺の精神力を削ってくる。
あののあと、フェイトから一度故郷に帰って迷惑かけた償いやらなんやらとかを決着つけるとかいう話を聞き、また絶対ここに帰ってくるから待っててとか言われ、朝のイベントをこなした身としては学校は午後から行きたかったが、ちょうど2時間目と3時間目の間の長い休み時間に着く時間に起きてしまったため登校した。
ちなみに教室に入ったらなんか歓声と罵声が飛んできた。なんか俺がいつ来るか賭けてたらしい。むろんすばらしい発案者(女子)の頭をグリグリしといた。あいつはなんでやられるって分かってて変なことしたり余計な一言いったりすんのかね?
閑話休題。
さてさて、午前の授業が終わり昼休みになった。
休み時間に約束した目的の人物達は先に屋上に言ったらしいな、俺も弁当を持って屋上に向かうとしますかね。
転生者。
前世の記憶と生まれた直後から自信を理解していた俺はそれだと自分を認識した――が、もちろんそれで納得したわけでもないし混乱しなかったわけでもない。フェイトに訊いといてなんだが最初、俺は『俺』が誰だか分からなかった・・・というか認められなかった。名前が同じでも性質が同じでも経験と記憶が引き継がれようと、前世と同じ『俺』だと認められなかった。
だって死んだんだぜ?しかも転生した世界がアニメときたらもうわけが分からない。
異能を持っていたというのも俺が『俺』だと認められなかった理由の一つだ、前世ではそんなもの持ってなかった。なら持ってる『俺』は誰だ?てな感じで。
幸い考える時間があった俺は考えた、結果俺は『俺』だという結論、というか認めることができた。
そして俺は世界と関係を持つことをやめようと思った。
簡単に言えば逃げ出したんだ。『俺』この世界で生きるべきじゃない、そもそももう終わった人間だ。ならば世界と関係を持たず人と関係を持たず適当に傍観して過ごそうと決めた。舞台には上がらず、舞台裏で暗躍もせず、ただ観客席から眺めて野次を飛ばすだけ。
だがまぁそれも今日で終わり――いや今朝終わりを迎えた。だいたい逃げるのも中途半端だったしな。
だからそろそろ――俺も舞台に上がろう。
屋上に続くドアを開ける。
太陽が光を降り注ぎ空は高く澄み渡っている。
「遅い!」
響くような声が届く。
指定席と化した屋上奥に設置されたベンチから他の生徒のノイズをかわし淀みなくアリサの声は俺の鼓膜を振るわせた。
「おまえらが早いんだよ」
いつものようにぶっきらぼうに返す。意識しないといつもどおりできないのはどうなんでしょうかねー。
「まぁまぁ、逃げずにちゃんと約束を護っただけよしとしようよアリサちゃん。お仕置きができなくて残念なのはわかるけど・・・ね?」
「いや、あたしそんなこと言ってないんだけど・・・」
「あれ?そうなの?」
「それが楽しみなのはすずかちゃんだけだと思うの」
「えー?そーかなー・・・?」
なのは達の否定に疑問いっぱいのすずか。こいつにとって俺を苛めることは全世界で常識的な娯楽らしい。
つーか俺は今日ここに来なかったら何されてたんだよ・・・
「じゃあさっそく食べましょ?もうお腹ぺこぺこよ」
「ああいや、食べる前にちょっと話があるんだがいいか?」
弁当を開けようとしたアリサ達を止める。
「んにゃ?話?刃君が?なんだかめずらしいの」
「たしかに・・・刃君から私達に話をふるのってあんまりないもんね」
「基本私達が話してるのに混ざってる感じだしね。まぁなんにせよ態々食べる直前に言うんだから・・・、くだらない話だったら張り倒すわよ」
好き放題言ってくれるなこいつら。
「まぁ大した話じゃない」
実に今更なことだ。
「
「うにゃ!?」
「
「ふえ!?」
「
「なっ!?」
初めて
「おまえら俺と友達になってくれ」
言った瞬間周りの音が消えた気がした。
周りには様々な学生が楽しい昼食を楽しみわいわいがやがやと混ざりすぎてただの音としか認識できない音声を響かしているが、俺の耳には届かない。今俺が聞こえる声はこの三人以外いない。冗談じゃなく今の俺にはこの三人以外は見えない。
「はぁ・・・。これは――張り倒すくらいじゃ済まないわね」
「そうだね――私も今のはひどいと思うな」
嫌に冷たい声がクリアに届く。
周りの音に紛れて聞こえなければいいのに、なんでうるさいはずなのにこいつらの声しか聞こえないんですかね?
「――うん、うん!そうだね!ここまで待たせた刃君にはお仕置きが必要だよね!!」
うわーすっごいうれしそう、涙まで浮かべてるよ。そんなに俺にお仕置きできるのがうれしいの?てめーさっき自分が言った言葉思い出せよ!?
「とりあえず!いっっぱぁぁっっつ!!」
火花が弾けた。実に見事な腰の入ったアリサの一撃が俺の頬を打ち抜いた。
痛い・・・めちゃくちゃ痛い・・・。これはあれですかね?振られた?
「ふん!友達?アンタねぇ――こっちはもうとっくに友達で居る気だったのよ!ふざけてんの!?アンタとあたし達はとっくに友達でしょうが!!!」
ガツンともう一発ぶん殴られた気がした。
関係なんて誰ともないなんて思ってたけど・・・それこそ思い上がりだったんだな。
「ああ、まったく。そうだったみたいだな」
「気づくの遅いのよ」
んじゃまぁ俺もこの世界を生きることをはじめよう。
いやはや、プロローグ(無印)はこれで終了です。うん、ここまでがプロローグなんだ。
作者はなのはシーリズの一昨目つまり無印はあの物語の中のプロローグだと思ってます。なのでこの小説でも無印編の扱いはプロローグです。だから主人公は舞台に上がらず何もしない。役者は観客に影響されるが舞台の台本に変化はない。
しかしここで観客は舞台に上がることを決めた。もう台本どうりには行かないでしょう。ここからが本番です。主人公は関係することに決めたのだから。
ということで近況報告。
誕生日を迎えた以上!
次章は空白期、Asが始まる前の5月とか6月~8月まで。メインは夏のお話(予定)でございます。