「待てゴラァァァ!!!」
修羅の怒号を背に俺は一人学校の廊下を駆ける。
え?後ろに誰かいるだろって?
ちらりと背後を確認する、そこには長い金髪を振り乱して鬼の形相の少女がいる。うんあれは人間じゃないよ、修羅だ。もしくは鬼だ。人間じゃあない。
だから俺は一人なんです。
「ええい!なんでアンタはそんなに足速いのよ!!」
「男子と女子との差に決まってんだろ!」
「同年代の男子でアンタ以外に負けたこと無いわよ!!」
なにそれこわい。
しかしどうして俺がこんな目に遭ってるんだ?オイ誰か説明しろ。
「あたしのお弁当返しなさいよぉぉぉ!!!」
「無茶言うなよ!?もう胃袋で解け始めてんだぞ!?」
「じゃあおとなしくあたしに殴られなさい!」
「暴力反対!」
というかあれだな、なんと言うか説明するまでもなく俺が悪いな。捕まる気も謝る気もないけどね。
まったく食い物の恨みは恐ろしい・・・、ちょっと食べただけじゃん。
「私の好物ばっかり狙って食べてんじゃないわよ!どうせなら苦手なもの食べてよ!」
至福のお食事タイムが拷問に変わったら誰だってキレるよね。
「おまえが先に俺の弁当食ったんじゃねーか!」
つまり俺だってキレる。
5月の終わり、そんな感じで俺は小学三年生を過ごしていた。
まるで成長していない・・・。
‡ ‡
フェイトと俺が友達になったあの日から数日が経過した。
その間の俺の行動といえば、まぁ相も変わらずテキトーだ。なのは達から誘われれば逃げるし、学校も遅刻の常連。まぁそれでも少しは付き合いが良くなったと自負している。逃げる回数も減らしてるしね。
でもやっぱり女子グループに黒一点はキツイよ、虐めかよ。しかもあいつら目立つから余計嫌なんだよ。
「だからこうして一人で帰ってるのはしょうがないことなんだ」
「いや、それしょうがなくないやろ・・・、友達としてどうなん?」
学校帰りにスーパーで今日の夕飯の材料を買いながら道端で拾った狸に突っ込まれていた。
「いやいや、べつにいいだろ?気が乗らないのに無理に付き合う必要はないと思うぜ?」
「まあ一理はあると思うで?それでもやっぱり付き合いってもんはあるやろ。あんま付き合いが悪いと友達なくすで?」
「ふむ・・・、付き合いが悪くなった程度で友達じゃなくなるんならそれはきっと最初から友達じゃねーんだよ。自分が楽しむためだけに利用するならそれは玩具と同じだよ」
というか俺はなぜ狸――八神はやての車椅子を押しながら『友達』についてなんて話してんだ?
「む、たしかにそやね。でも友達だからこそいつでも、それこそ毎日でも遊びたいって思うのは普通なんとちゃう?それを無下にされたらそら機嫌悪くなるやろ」
「あーたしかに・・・いやでも、それでも友達じゃなくなるってことはないだろ?怒られるし喧嘩になるかもしれないけど、本当に友達ならそれで友達じゃなくなるってことはない」
「そんなもんなんか?」
「そんなもんだ。たとえば俺が
車椅子から見上げるはやての顔はなんか表現しにくい微妙な表情だ。つかこういうときって普通照れて赤くなったりするもんじゃないの?
「なれへんのやからしょうがないやんか。今までずっと苗字やったんやし・・・」
「それでもそろそろ1週間だぞ?いいかげん慣れて欲しいもんだけどね。それともまだ気持ち悪いとか抜かす気か?」
このやろう初めて名前で呼んだとき、キャラに合わなくて気持ち悪っ!とか抜かしやがったからな・・・。
「いやそれは悪かったって、そんなにらまんでもええやんか。それにあれはただのテレ――」
「てれ?」
「――なんでもないで!それより私がなんなん!?続きはよ言わんかい!」
いきなり赤くなって怒鳴られた。
解せぬ。
いやまぁただの照れ隠しなんだろうけど。指摘したらパラリンピック重量上げ出場(予定)選手に足の指潰されるからしないけど。
「怒鳴るなよ恥ずかしい。たとえば俺がはやてに・・・そうだな一ヶ月くらい会いに行かなかったらどうする?もちろん連絡も無しだ」
「・・・心配するやろな」
俺が言ったことを想像したのか、少し口調が弱くなる。
「んでいきなり会いに行ったら?」
「怒るやろうな。下手したら監禁してしまうかもしれへんね」
「オイ、監禁は犯罪だぞ」
「心配掛けるほうが悪いんとちゃう?」
うわー、この子割と本気で言ってるよ、え?なに?ヤンデレ?ちょっとわからないですねぇ・・・。
「冗談やで?」
「・・・知ってるよ?」
でもとりあえず一ヶ月音信不通はやめとこう。
少なくともこいつに俺以外の誰かと関係を持つまでは・・・。一番いいのは『家族』ができることなんだろうけどね。
「それでだ、お前はそんな俺をもう友達じゃないて言うのか?」
「言うわけないやろ」
「そういうことだ」
「なるほどなー」
納得したようにうなずくはやてを押しながら俺は食材を調達していく。
「今日は何作るん?」
「焼きそば」
む・・・、このキャベツはいいキャベツだ。買いだな。
「焼きそばかー」
「一人だけだとどうにも凝った料理めんどくさくてな、一人分だけ作るのも意外とむずいし」
まぁ次の日の昼も兼ねるから二人分以上作るんだけど、それでもたまに料理がかったるくなる。
フェイト達が食いに来てた頃は作んの楽しかったなー、やっぱ食べてくれる奴がいると張り合いがあるんだよな。
「――それなら私が食いに行ったろか?どれだけ成長したか師匠じきじきに吟味してやるで?」
「それはありがたいけど家はダメ。俺は家に一人も上げたことないのが誇りでな」
嘘だけど。
「むー・・・、刃くん家がダメなら私の家に食べに来ん?ご馳走するで?」
「ああそれなら別にいいぜ。はやての料理は美味いからな」
「ホンマか!?それなら――」
「今日はダメだけど」
上げて落とす、人を効果的におちょくるいい方法だ。まぁ毎日のようにアリサやらすずかやらにやられてるからその効果は正しく身をもって知っている。
「ふんぬ!」
「メライテェッ!?」
だからこそ取り扱い注意ってのも今身をもって知った。
ていうか容赦なく足の小指狙うなよ!本気でいてーよ!なにこれ!?折れたんじゃね!?
「乙女の期待を裏切るとこうなるんやで?」
乙女は自分の乗っている車椅子をハンマー代わりにしません。
言ったら今度小は指じゃなくて頭カチ割られそうだから言わないけど。
「それで?何で今日はダメなん?」
「・・・っ。いや、あしった平日じゃん・・・っ、学校・・・ぁるわけですよ・・・」
痛みで口が回らない、背中に脂汗が伝っていくのがわかる。やべぇちょっはやてさんそこ代わってー俺も車椅子で移動したいー。
「痛いだけで歩けるやろ?甘えるんじゃないで?んで、学校関係ないやろ、晩御飯食べにくるだけやで?」
「ヘイヘイ歩きますヨット。いや、おまえん家で晩飯食ったら何だかんだで泊まりそうだし、というか帰してくれなさそうだし」
まぁでも何だかんだで居心地いいから俺も流されそうだし。
「っち。・・・まぁそうれならそれで家から行けばええんちゃう?」
「おい、今舌打ちしたよな?というか開き直ってるよな?」
「なんのことや?」
この狸が!茶髪で丸顔でかわいいという狸的容姿をしてるからって性格まで狸にならなくていいんだよ!!
「かわいいとかそんなほんとのこと思わんといて」
「おまえ実は人間じゃなくて妖怪だろ」
心が読めるのは狸じゃなくて覚だけど。
俺が思うに覚妖怪の恐ろしいところってのは心を読むことじゃなく、心を読んでもなお狂わずにいられる精神力だと思うけどね。サイコメトラーのメンタルこそが怪しいよ。
「泊まるのは無理。俺の格好見たら分かるだろ?家のガッコ制服なんだよ」
「ああなんや、見慣れないクソ似合わない白い服着とると思ったら制服やったんやね」
似合わないとか言うんじゃねーよ、俺だって思ってんだから。しかもほぼ毎日そんな似合わない服着てるんだぜ?そりゃ早く帰って着替えたくなるよ。このまま遊びになんて行きたくねーよ。
「いつもは刃くん黒い服やからね。全身黒はどうかと思うけど」
「うるせーな黒好きなんだよ。汚れ目立たないし」
「男の子やねー」
「やめろっ!人を厨二病っぽく見るな!俺はまだ小学3年生だ!!14歳まであと5年くらいあるんだぞ!!」
右手も右目も疼かねーよ!
「じゃあ14歳の誕生日になったら盛大に笑って祝ってやるで?」
「んじゃ俺は換わりに呪ってやるよ」
藁人形で部屋を飾り付けてお出迎えだ・・・嫌な誕生会だな。
「まぁ着替えを用意するのがめんどくさいっていうのはわかった。なら私の誕生日に泊まりに来てくれへん?」
「あん?誕生日いつよ?」
「6月4日」
もうすぐじゃねーか。
「まぁ・・・土日だし、いいぜ、一日中夜通しで呪ってやるよ。寝かせねーからな?」
「なんや寝かせないって言われると卑猥やな」
なんでだよ。
というかおまえホントに9歳児かよ。
「ほんならその日は腕によりを掛けてご飯作ったるでー!!」
なんでこいつは祝われる側なのに飯作ろうとしてるんだろう・・・?まぁなんかやけにうれしそうだからいっか。
というわけで、今生初のお誕生日会参加が決まった。
なのはとかのはガン逃げしてたからな。まぁこれからは参加するけど・・・・・・誘われたらね。
というか誕生日プレゼントどうしよう・・・・。
さてさて一話目。
新章なので一話です。
今回はほぼというか全部会話だけで終わりましたね。しかもキャラも殆ど出てこないという・・・。
さてと8月・・・本当は7月中に更新するつもりだったのに・・・。
マニアワナカッタ。
これも全部夏の暑さがいけないんだ!!作者は悪くないんだ!!
嘘ですごめんなさい作者が悪いです。
あーでも本当に太陽爆発しろよ。暑いんだよ・・・。