魔法少女リリカルなのは~よくある転生記~   作:春夏冬 秋人

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第二話 バースデイショッピング

 

 翌日、二時間目の真っ最中。先生の声は念仏のように右から左へと抜けていく、別に俺の耳は馬の耳じゃないけど。

 俺はこの時間・・・いや、昨日はやてと別れてからずっと考えてることがある。

 (プレゼントどうしよう。)

 誕生日に呼ばれたことはあっても参加したことは無い。そもそもこのぐらいの年の女子って何が欲しいんだ? 

 わからない・・・適当に人形とかでいいのか? いやでもはやてだからなー、人形より本の方がいいか・・・? でも読み終わったらそれでおしまいだしな。

 なんかこう・・・、長く使ってもらえて尚且つ喜んでもらえる物がいい。でもなにがいいのかわからん。

 いや、本当は『喜ぶ』ものは分かってるんだけどな。

 一番喜ぶのは――欲しいものは――『家族』、要するに一人じゃなくなること。つまりは俺が一緒にはやてと住めばいい。

 でもそれは――いや・・・いいのか? もう人と関係しないことはやめたんだし、車椅子少女を一人にしておくのは正直心配だし・・・。でも一人暮らし気に入ってるんだよなー、気楽だから。

 他の人を気にしなくていいてのは素晴らしい。

 まぁさすがにそんな理由ではやてを拒絶するのはヤバイな、バレたらはやてに刺されるか監禁されそう。

 でも一人暮らし・・・か。

 その問題があったか。

「あいつはどうして一人暮らしなんてしてるんだ・・・?」

 思わず漏れた独り言に、あわてて誰かに聞かれてないか確認する。

 俺の席の周りをそれとなく確認するが・・・、みんないつもどおりの真面目ちゃんだ。・・・約一名俺がちゃんと授業聞いてないの気づいて睨んでる金髪娘がいるけど。

 まぁ俺が授業聞いてないのもアリサが睨んでくるのもいつもどおりだ。

 閑話休題(そんなことより)

 前にも思ったけど小学生で一人暮らしはそれだけで異常だ、それが足が不自由で車椅子ともなれば尚更だ。そもそも誰もはやてを引き取らなかったのか? 親戚が誰もいないとしても誰かが引き取るものだし、足が不自由ともなればめんどうがっても誰かが対面を気にして引き取るものだ。

 なのにいない。

 いや、書類上の引き取り手――後見人――はいるんだろうけど、それにしたって足が不自由な女子小学生に一人暮らしをさせるとは思えない。

 少なくともまともな人なら一緒に暮らすだろう、暮らす気が無い人はもとから引き取らない。

 つまりこれは意図的に誰か――つうかたぶん後見人――がこの狂った状況を作り出しているということ。目的は分からないし、後見人が何者なのかもわからない。

 

 

 

 この状況を壊していいのかどうかすら分からない。

 

 

 

 こんな大掛かりな状況を作り出してんだ、壊した瞬間に俺はまだしも――はやてになんらかの危害が加えられる可能性がある。そう思うと迂闊に一緒に暮らそうとかも言えないな・・・。

「しかしそうなると――」

「こら刃! もう授業終わった――ていうかアンタせいで終われないからさっさと立て!!」

「んあ?・・・あー、悪い考えごとしてた」

 アリサがまったくとでも言いそうな吹くれっ面で俺を見てるのに気づきながら、号令に従い頭を下げて、授業を終わらせる。

「それで? 来て早々物思いに耽って授業聴いてなかったみたいだけど? なんかあったの?」

「――おまえら女子って誕生日になにもらうと喜ぶんだ?」

 

 

 

‡  ‡

 

 

 

「――で? なんで俺はお前らと一緒に買い物に付き合ってるんだ?」

「アンタが私達にプレゼントをくれるって言うからでしょ?」

 言ってねーよ。

 そう言ったところでこいつらが俺を解放してくれるわけがないので黙っていることにした。

 放課後人が行きかう繁華街に、なのは、すずか、アリサに俺は連行されている。

 行きかう人々はせかせかと生き急ぐように早足だ。学生達は日が暮れるまでの短い時間を無駄なく無駄に楽しむために、スーツの大人は時間を金に換えるため、どちらも共通してるのは時間に急かされているということ。

 俺としては時間に急かされるより時間を急かしたい、日が暮れれば何も買わされずに帰れるから。

「でもビックリしたの、いきなり一緒に買い物に刃君が行ってくれるなんて、それもプレゼントをくれるなんて!」

「そうだよねなのはちゃん。今まで誕生日に誘っても無視してきたのに・・・、でもせっかくのプレゼントなんだから今までの分もまとめてもらっちゃおうか」

「あ、それはいい考えね・・・。ふふふ、楽しい買い物になりそうね」

 ああ、三人の女神のごとき悪魔が囁きあっている。というかなのは以外の二人は絶対ワザと毒吐いてるだろ。

 というか俺金ないんだけど、むしろ俺がお前らブルジョア組みに恵んで欲しいんだけど。

 はやての誕生日プレゼントを選びたいだけなのにどうしてこうなった・・・、いや不用意にアリサに洩らした俺が浅はかだったんだけどね。

 そんなこんなで三人の悪魔が俺に何を買わせようかという、今すぐ逃げ出したくなるような楽しげな会話を憂鬱に聞き流すこと数十分、なのはが小物屋に釣られて俺達も続いて入店する。

「あ、これかわいいーっ!」

「なのはちゃん!あっちにもかわいいのあるよっ」

「けっこういい感じの店ね」

 黄色い声を上げて商品に突撃していくなのは達。これ、俺逃げられるんじゃね?

「逃がすと思ってるの?」

「デスヨネー」

 だから振り上げた拳を収めてよアリサさん。

「ったく・・・、アンタは目を離すと直ぐ逃げようとするんだから。まぁ今回はわからなくもなけど」

「でも逃がす気はないんだよな?」

「あたりまえでしょ」

 元凶はおまえだしな。

「ま、相談には乗ってあげるから勘弁しなさいよ」

「相談料高くね?」

「慰謝料込みよ」

 むしろ俺が訴えたいぜ。

「それにしてもアンタに私達以外に誕生日を祝うような友達――それも女の子――がいるなんて思わなかったわ・・・」

「一応二人ほどいるよ」

「・・・もう一人も女の子?」

「そうだけど」

「アンタ男の友達居るの?」

「・・・いねーな」

「・・・アンタ自分で女子だらけの関係築いてるじゃないのよ、それを理由に逃げるのはどうなのよ」

 たしかに・・・て、いやいや俺望んで女子ばっかと関係築いてるわけじゃ・・・ただ友達になろうと思ったのが人が全員女子だっただけだし――あれ? 自分で望んでね?

「いや、でも男友達もほしいぜ? それに女子だらけの中に一人ってのが嫌なだけだし二人っきりなら問題ねーよ」

 実際はやてとかからは逃げてねーし、高町家道場が終わったらなのはと遊ぶしな。

「あら? それはデートのお誘いかしら」

「分かってるくせに言うなよ」

 ニヤつきながら言うアリサの後頭部を軽くはたく。

「叩くことないでしょうに・・・ま、確かにアンタと二人で出かけてもデートにはならないでしょうね」

 男女が二人で遊びに行けばそれはもうデートだとか人はよく言うけれど、それは違う。少なくともどちらかが相手に好意を抱いていなければ二人で遊びに行ってもデートとは言わない。

 俺とアリサの間に”そういう感情”は皆無だ。だから俺達が二人で遊びに行ってもデートにはならない。

 男女間でも友情は成立するんだよ。

「ってそんなことはどうでもいいのよ。そのプレゼントあげる相手のこととアンタがどういうものをあげたいか教えなさいよ。知らなきゃ選べないでしょう?」

「――それは私も知りたいかな」

 不意に背後からすずかの声がする。

 というかおまえまで気づいてたんですか・・・てことはなのはも?

「なのはちゃんは気づいてないから安心していいよ」

「ナチュラルに人の心を読むんじゃねーよ」

 ほんと、コイツ実は吸血鬼じゃなくて覚なんじゃね? 第三の目はどこだ。

「というか別になのはに気づかれてもいいけどな。ただこう・・・俺の柄じゃ無さ過ぎてハズイだけだし、もうお前にもバレてるんだったらもう気にしても――」

「だめだよ、なのはちゃんには隠し通さなくちゃ」

「そうね、なのはには気づかせちゃいけないわね」

「なんでさ」

 よくわからん。

 まぁなのはのセンスはあてにならないのかも知れないが、ハブにするのはどうかと思うけどねー。

「いやだから、また話が逸れた。プレゼントを選ぶんでしょうが、さっさと相手の特徴教えなさいよ」

 逸らしてるのは俺じゃないんだからそんな睨むなよ・・・話せばいいんでしょう話せば。

「特徴ねー、狸?」

「あたし達は人間の話をしてるんだけど・・・もしかしてペットの誕生日とかいうオチじゃないわよね?」

「ちげーよ。こう・・・ほら、例えばお前は犬か狐だろ?」

「あー・・・」

「納得してんじゃないわよ!」

 がっくがくとアリサに揺さぶられるすずかは、あははー、と笑って流している。

「何のお話してるの?」

 そしてそんな感じで話しているとハブられた人が小首を傾げて寄ってきた。そりゃあ自分だけ仲間はずれで盛り上がってたら気になるだろうな。

「猫だな」

「猫ね」

「猫だね」

「うにゃっ!?」

 俺達の心は一つだった。

 いきなり全員から猫と言われたなのはは混乱していたが、ねこさんはかわいいの! と自画自賛(違う)の話だと解釈していた。

「そうだよね! ところでなのはちゃん、向こうにかわいい猫のストラップがあったから見に行こ!」

「うん! ・・・うん?」

 多少疑問を覚えながらもすずかに連れて行かれるなのは。その様子を見ていたアリサがポツリと洩らす。

「すずかも意外と猫かもね」

「被ってるからな」

 中身は絶対違うだろうけど。

「中身は何かしらねー・・・」

「蝙蝠?」

 ほら、吸血鬼だし。

「いや、別にどっちつかずではないでしょう・・・たしかにビジュアル的には不思議と羽も牙も似合う気がするけれど」

 そりゃあ吸血鬼だからな、牙と羽は似合うだろうなー・・・今度コスプレしてもらおうかな。

「私は蛇だと思うわ。こう・・・耳元で囁きそうじゃない?」

「知恵の実を食べなさいってか? 楽園は追い出されるけどその代わり世界を認識できるようになるんだよな・・・そう考えると黒いな」

「ついでに男と女の概念も知恵の実が原因なのよね・・・」

 正確には羞恥心だった気がするが・・・、まぁそれがなきゃ性別の違いに意味なんてなかったのかもな。

「てかそうなると俺は追い出されるのか?」

「追い出す神が居ないから大丈夫でしょ。日曜日に神は楽園(せかい)そのものを見捨てたのよ、罪を問う者がいなければ罰は与えられないわよ」

 だから代わりに俺達人間は法律を作った。擬似的な神とも言える、ただそれは人知が及び人に管理され都合がいいというだけだ。

 俺達の宗教となにも変わらない。

「話が盛大に逸れたわね・・・、なんでアンタと話すと話が進まないのから?」

「楽しいだろ?」

「気に食わないけどね」

 というか小学生が話すようなことじゃないんだよ、俺は転生者だからまだしもアリサのこれは異常だろ。なのに小学生らしいんだからホント恐れ入る。

 閑話休題。

「いつまで経ってもプレゼント選びが終わらないわね。アンタはどういうものをあげたいの?」

「喜ぶものだな」

「そんな当たり前のこと訊いてないわよ。なんかあるでしょう? 例えば常に身に付けられる物とか」

 ふむ。

 俺だって考えてないわけじゃない、アクセサリーや人形類も喜んでくれるだろうが俺が渡したいって思ったのは。

「実用性がある物だな」

「小学生に渡すものじゃないわね」

 バッサリだ。

 いや確かに小学生になーてのも分かるんだけど・・・、こう・・・使ってもらいたいんだよ・・・一人暮らし大変だから少しでも支えてやりたいなーと。

「でもそうね・・・実用性って言ったら文房具とかどうかしら?」

「文房具?」

 たしかにそれは実用的だけど、誕生日に鉛筆やノート渡されても微妙だろうよ。

「もちろん、鉛筆とかノートじゃないわ、筆箱、ペンケースよ。これならセンスのいいものを選べばプレゼントになるわ、言ってみれば一種のファッションだもの、系統としてはものすごく大雑把に言えば鞄と一緒よ」

 へーそーなのかー。

 でもそもそも、

「文房具はちょっとダメだなー。あいつ使わないから」

 学校休学中だから文房具は意味無いんだよな。

「文房具がダメってなると・・・服とかどうかしら?」

「服かー・・・いいんだけど問題があるな」

「そうね、アンタセンス無いものね。正直全身黒はどうかと思うわ」

「黒好きなんだよ。汚れ目立たないし」

「黒を着るのはいいのよ、アンタ黒に合うし。でもだからって全身はダメね」

「俺のファッションは不評だな」

「ファッションて言えるほど気をつかってないんだから当然ね」

 無難であればそれでいいよメンドクサイ。

 外を着飾るのはいいけど、繕う気はないし。

「まぁ、さすがに服は実際にその子見ないと選びようが無いわね。写真とか――ああ、アンタ携帯持ってないんだったわね」

「言っとくけど、おまえらが異常なんだからな? 普通はこの歳で携帯なんか持ってないからな!?」

「はいはい、僻まない僻まない」

 ひ、僻んでねーし! 

「でも、服か・・・それはありかもな」

「黒い服渡すの?」

「ちげーよ!」

 はやてに黒はなんとなく似合わない気がするし、これがフェイトだったら黒を奨めるんんだけどなー。

「アイツは料理するからなエプロンとかどうだ?」

「親の手伝い? ・・・いいんじゃない? 実用的だしプレゼントとしては申し分ないわ」

「じゃああとで選ぶの手伝って」

「なんでよ? 黒でいいじゃない」

「あんたもいい加減しつこいな!」

 黒ディスってんじゃねーよ! 

 なんで選択肢が黒しかないんだよ!?

「そう言われても実物見ないと何が合うかなんてわかんないのよ。黒なら無難だし汚れが目立たないでしょう? エプロンということなら黒でいいと思うわよ?」

「うぬう・・・たしかに」

 服としては似合わないが――エプロンなら案外似合うんじゃないか? 

 はやてが俺の買ったエプロンを着て料理を作ってるとこを想像する。

 

 

 

 ありだな。

 

 

 

 なんかこうグッッと来るな。

 毎日飯作ってもらいたい。

「決定だな」

「・・・いいんだ」

「あん? なんか言ったか?」

「い、言ってないわよ!?」

「???」

 まぁいいや。

 さて、目的は果たしたし帰るとしますか――、

「刃くん買って欲しいものが決まったの!!」

「っち」

 逃げられなかったか。

「向こうにね! このかわいいウサギさんのキーホルダーがあったの!!」

 俺の腕を掴み目をキラッキラさせながら薄いピンク色の兎のキーホルダーを見せてくる。たしかになのはが付ける分にはかわいくていいかもしれない。

「あら? 猫じゃなくて?」

「この兎さん4つ種類があったから、なのはちゃんが皆でお揃いにしようって」

 後からやってきたすずかの持つ兎の色は薄紫だ。これもすずかならよく似合うだろうな。

「へー、いいわね、ならあたしもそれにするわ」

 そこのバカが逃げないように捕まえておきなさいよと残して兎を取りに行くアリサ。

 いや、逃げないから・・・そんな強く腕に抱きつかないでくれないなのはさん? すずかもうなじを鷲掴みしないで!?

「逃げたらキュッとイクからね?」

 笑顔が黒いよー、目がマジだよこいつ。

 というかいくって絶対行くじゃなくて逝くだよな!?

「何してんのあんた達・・・」

「おまえが余計なこと言うからだよ!」

 薄黄色の兎と灰色の兎のキーホルダーを取ってきたアリサに叫ぶ。

「日ごろの行いよ。ほら、さっさと会計行ってきなさいよ」

「いや数が多いだろ」

 手渡された兎は計4つ。

 俺が買わされる人数は3人。

「多くないわよ」

「は?」

「私達は何人?」

「・・・4人」

 まったくこいつらは――、

「友情の証なの!!」

 最高の友達だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、金払うのは俺なんだな」




お待たせいたしました2話です。
今回はプレゼントを買いに逝く(誤字にあらず)話。
しかし気がつくとアリサとばっかり会話させてしまう・・・。


というわけで9月です。まだ暑いです!
最近流行りの艦これをはじめました。友人がみんなぜかましちゃんと出会っているのに作者だけ未だに出会えない・・・、友人曰く「初めて戦艦レシピ試して長門なんて当てるから運を使い果たしたんだよ」らしいです。
でも家の長門さんなぜか駆逐艦しか攻撃してくれません、母艦と戦艦を打ち抜いて欲しいと思う今日この頃。






!すでのな
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