「またですか……」
最近日課になってきた、登校前の郵便物のチェック。そこにはフェイトからビデオレターが送られてきた日から、毎日警告文が投書されている。
内容は前と特に変わっていない。
『八神はやてに関わるな』
結局書かれてることはこの一言に尽きる。
「罰のない警告なんて無意味だよな?」
差出人が近くにいるわけじゃないから、とりあえず近くにいた黒猫に向けて言っといた。なんか不機嫌そうに尻尾で地面をパシパシ叩いている。
この猫人の言葉理解できてるんじゃね?
「どうでもいいけど、おまえいつも不機嫌そうだな」
「なーうぅ……」
威嚇こそされなかったが、とりわけ低い声で鳴かれた。いや、これって威嚇なのか? ……わからん。
まぁいいや気にしてもしょうがない、学校行きますか。
例のごとく遅刻だけどな。
‡ ‡
「さて! 夏休みの作戦会議よッ!!」
「わー!!」
「最近熱くなってきたよね? 私喉乾いちゃって」
「それは分かったけど、さりげなく俺のお茶取ってんじゃねーよ。せめて一言言え一言」
すずかの言うとおり、確かに最近暑くなってきた今日この頃、俺たち4人は屋上でランチタイムを過ごしていた。
「ちゃんと言ったよ? 刃君のお茶を飲む理由」
「理由じゃなくて、断りを取れつってんだよ」
「理は説いたよ?」
口頭だと分からないボケかまさないでくれませんかねーすずかさん。
「しょうがないなー……返してあげるよ」
「ゴミだけ渡すなっ!飲みきったんなら自分で捨てろよ!」
渡された紙パックをすずかの額に投げる。見事当たったすずかは、傷つけられた~、とか言いながらアリサに抱きつくが、
「ええい! 暑苦しいっ! というか話聞けっ!!」
と引き剥がされた上にチョップで撃退されていた。
「うきゅ」
「ったく、あんたらはさっきから漫才みたいなやり取りばっかりしてんじゃないわよ!」
「まぁまぁアリサちゃん落ち着いて……」
ついに我慢の限界がきて、初夏の日差しにも負けないくらい熱く怒鳴るアリサを、なのはが諌める。まるで気性の荒い馬とそれに振り回される下女みたいだな……主人はすずかだな、部下をおちょくるのが趣味の女主人。……将来的にマジでありえそうで怖い。
「……で? 夏休みの計画だっけ?」
このまま延々とアリサをからかうのも、それはそれで面白いが、どう考えても待っているのは鉄拳制裁なのでここらへんで止めておく。だからすずかさん、物足りないならあとは自分一人でやってください、そんな目で見てもダメです。
「……それでアリサちゃんはどんな計画があるの?」
「なんで、すずかはちょっと不満そうなのよ……。まぁいいわ、計画とっても大したことじゃないわ、予定が合う日に旅行行ったり、お祭りとか行きましょうっていうだけよ」
「てことはだいたい去年と同じになるのかな?」
へー去年そんなことしてたんだな、俺なんかずっと家に引きこもってたぜ。寝て起きて寝る、最高だな。
「今年は刃くんも一緒に来てくれるんだよね?」
「……えーっと」
選択肢に”はい”か”YES”しか存在しないんですけど……、なのはの無垢な笑顔を裏切れない……のではもちろんなく、その他の二人の『てめぇわかってんだろうな?』的な笑顔のせいで。
まぁだとしても、
「だが断る」
俺は天邪鬼なので、取ってはいけない第3の選択肢を取ることができる。
「あらあらうふふ……」
「ほう……?」
「…………」
こ、後悔なんかしてないぜ? すずかの笑顔とか、アリサの目とかぜんぜん怖くないからな。
「いや、あれだ……行かないのは旅行だけで、夏祭りは行くから」
うん決してビビッて妥協したわけじゃない、もともとそういうつもりだったんだ。友達と遊びに行くくらい別になんてことないからな。
誰に言い訳してるんだろうな俺。
「何で旅行はダメなのよ?」
「あーいや……」
しかし、アリサは妥協など許さなかった。くだらない理由だったら、強制的に連れて行くと目が語っている。
どうしよう。
今回のことはいつもの理由(女3男1で旅行とか拷問じゃね?)だけでなく、他にも理由がある、だがそれを言うわけにはいかない。言えばこいつらも巻き込まれる可能性がある、なにせこっちは毎日警告文を送られているんだ、こいつらにまで累及ぼすわけにはいかない。
さてなんて言い訳しようかね。
‡ ‡
「で結局、あることないこと言って断ったんか」
「うい」
夕方の八神家。俺はここ最近毎日のように晩飯をたかりに来ている。
晩飯を食い終わってまったりしながら俺は、食器を洗ってるはやてに今日あったことを適当に話している。
「行けばええのに、めっちゃ楽しそうやん。それに美少女3人とのハーレムなんやろ? もったいないわー」
「男が俺だけってのが嫌なんだよ……、この気持ちザフィーラなら分かってくれるよな」
「…………そうだな」
普段女所帯の黒一点であるザフィーラはしみじみと呟いた。きっと誰にも言えないような苦労や心労があるんだろう。
けっして、めんどくせぇなこいつ、と狼形体のザフィーラをモフモフしている俺に、ため息混じりに言った言葉ではない。俺は分かってるぞザフィーラ、だから次ぎそんな鼻でため息つきやがったらその毛全部剃ってやるから覚悟しろよ。
「ていうかおまえ女以外に友達いないのかよ。あ、ザフィーラ除いてな」
「おまえそれは……」
ザフィーラと戯れていた俺に向かって、言ってはならぬことを言ってしまう赤毛の幼女。ゲームに夢中で聞いてないと思ってたら、ちゃっかり聞いてたんだなこいつ。
「ヴィータちゃん……人にね、言っていいことと言ってはいけないことがあるのよ」
「あ……そうか、そうだな……ジン、あたしが悪かったよ」
「……おい」
いやな? 確かに俺は男友達がいないよ? それどころか友達の数自体が少ないよ? 学校の友達なんてあの3人以外いないよ? わかってるよ? だからってそれはないだろう。そんなゲーム中断してまで真剣にあやまるなよ、気にしてないのに気にするだろうが。それになにより、さっきから笑い堪えてるシャマルが一番許せん。言ってはならないことって正にお前が言ったソレだよチクショウ!
「くっ……くく……っ」
「あー?」
何を思ったか、いきなり笑い出したシグナムを睨みつける。コイツまで俺をからかうというのか!?
「ああ、いやすまない……ジンを笑ったわけじゃないんだ。ただ、ヴィータやシャマルが人をからかうようになるなんて……と考えたら可笑しくてな」
「ソレを言うたらシグナムが笑うのもやね。家に来たばっかのころは、いっつも冷たい目してたで? こうして笑ってるのが夢見たいや」
洗物が終わり、リビングに戻ってきたはやてがやさしく微笑みながら言われ、シグナムは不思議そうに、口元に手を当てる、そして、初めて気づいたという風にポツリと、
「そうか……私は笑っているのか」
そう言った。
ソレを聞き、それを見た同属たちも、皆一様に、口元に手を運ぶ。そこに例外はなく、皆笑っていた。
そして自分に感情があることを自覚する。
道具じゃない自分がいることを自覚した。
ソレがいい事なのか、悪いことなのか、俺には分からない。分からないが――それでもこの楽しい毎日が続けばいいなと思った。
柄にも無くそう思った。
そして俺は思い知る。
平和な日常を続けることがどれだけ難しく――代償が高いかを。
それでは5話です。
今回は平和な日常的なお話。
夏休みが近くなり、ヴォルケンリッターが感情を出し始めました。
この後平和が続くかどうかは当人次第、平和は意外なところからあっさり崩れ、そして当然のように崩れるもの。
少年少女がどういう道をたどるのかどうかご観覧ください。
さぁさて7月。そして5ヶ月。
上記のように気取ったことを書いて誤魔化していますが、更新が大幅に遅れたことは変わりません。
真、ごめんなさい。
今回の言い訳は――アイマスです。
OFAがすべて悪いんです。
やよいがかわいいのが悪いんです。
響がかわいいのが悪いんです。
亜美が可愛いのが悪いんです。
真美がかわいいのが悪いんです。
作者はロリコンではありません。
ですが失踪だけはしないのでそれだけは信じてください!!
ちなみにモバマスで一番好きなキャラは双葉杏(身長139cm 年齢17歳)です