魔法少女リリカルなのは~よくある転生記~   作:春夏冬 秋人

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第六話 最終警告

 

 

 深夜。

 子供も大人も大半が眠りにつく丑三つ時、とはいえ現代社会、この時間に起きているものがいてもおかしくない。だというのに、その住宅街には人が起きている気配のする家が一軒も無かった。眠っているというよりも、そもそも人がいないかのように、死んでいるかのように静まり返っている。

 そんな住宅街にある一軒の家の前に、浮かぶようにポツリと一人の男がいた。ショートカットの黒髪、がたいが良く、白い制服の様なもの着て、白い手袋を着けたその男、これだけならまぁギリギリ不審者と認定され無いかも入れないが、着けている白い仮面のせいで完全無欠の不審者となっている。

 仮面の男は一度その家を見上げてから、玄関の扉を当然のように開け、そのまま土足で上がりこんだ。

「………………」

 上がった瞬間立ち止まる、視界に映るその光景に立ち尽くす。

「…………」

 しかし直ぐに立ち直り、歩を進めた。

 まるで空き巣のようだが、生憎この家には住民が一人自室で寝ている。ならば強盗か、しかしソレにしては家を荒らすような真似をせず、まるで何が何所に何があるか知っているかのように、音も立てず猫のようにするすると歩みを進めている。

 しかし、彼を表すとするならやはり強盗だろう。

 彼はあるモノを無理やりに奪いに来た。

 せっかくの警告を再三にわたり無視し続けた愚か者。

 罰の無い警告には意味は無い、無視するに当たってリスクが無いのなら意味が無い、そう愚か者は言っていたが、ソレは違う。そもそも無視をすれば嫌な思いをするからこその警告、罰は食らわないが、無視した未来で嫌な思いをする。つまりは罰する必要が無いのだ、後悔することが分かっているのだから、放っておけばいい。

 あの手紙は脅迫ではなく、警告なのだから。

 だから、これは言うなればボランティア。手を出さなければ相手は後悔するだろう、ソレをさせないために強制的に止めに入るのだ、これをボランティアと言わずなんと言えばいい。少なくとも、もろもろに対するする言い訳としては十分だろう。

 たとえ本音はイラッとしたから、望みどおり『罰』を与えに来たとしてもだ。

 二階にある目的の部屋の前に、たどり着いた仮面の男。

 一瞬、何かを探るように扉に見据え、それからゆっくりと音もなく、扉を開け這入った。

 そこは子供の私室なのだろう、床には男の子物の洋服やゲームソフトのパッケージ、そしてその本体とコントローラーが置かれ、この部屋の主が寝ているベットの枕元には、文庫本が数冊置かれている。

 豆電球すら点いておらず、ベットの側面にある、窓には厚手のカーテンが掛かっているため、月明かりすら這入らないこの部屋は、夜よりも暗い。それにも関わらず、床にある物を起用に避け、仮面の男は、ベットへと歩を進め、眠る少年へと手を伸ばしたその瞬間――、

 

 

 

‡  ‡

 

 

 

 ――俺は仮面を被った不法侵入者にナイフを三本投げつけた。

 狙いは、額、首、心臓に一本づつ。

 すべて急所だということに投げてから気づいたが、その心配は杞憂に終わる。

 仮面の男は蹈鞴を踏んで下がりながら、三本の内、首に投擲された一本を手で防ぐ、残り二本は狙った箇所に当たりはしたが効果がない。結果にしてみれば結局三本とも同じだ、仮面の男の衣服を貫くことが出来ず、服の下は無傷、防がれたのと何も変わらない。

「おいおい……ッ!」

 悪態を吐く暇もなく、直ぐにベットから飛びぬく。横目で自分のいたところを見てみると、青く光る輪のような物が浮かんでいる。

 アレが何なのかは良く分からないが、食らうわけにはいかない。なにか厄介な能力があるかもしれないし、極論触った瞬間死ぬことだってありえなくは無い。

 だがそれでも分かったことはある、アレは『魔法』だ。過去に見たことある『魔法』は全部あんなふうに光って(色は違うが)いたからおそらく間違ってはいない。

 つまり相手は『魔導師』。

 つまりは俺の圧倒的不利。

 その事実を冷静に理解しながら、仮面の男の魔法を避け続ける。

 目の前に広がるのは弾丸のような青い光の群、暗い部屋に煌くソレは、当事者じゃなかったらさぞ綺麗だったんだろうが、生憎と今はそんなことを感じる暇などはない。今度はやてんところの奴らに、コレと同じようなこと頼んでみたいね、部屋でプラネタリウムごっご出来るぜ。

「つッ!……?」

 なんてことを余裕がないのに考えてたからか、ついに避けられず肩に一発掠る。急いで傷を確認するが、そこに傷は無かった。

 痛みはあるの(・・・・・・)に傷が無い(・・・・・)……?

 急いで他に自分の身体に異常がないかを確認する、結果――異常なし。

 眼前の弾幕はさらに密度を増してはいるが……今ならまだ抜けられる。

逡巡は一瞬だった、俺は多少弾幕を掠るのを……最悪多少の被弾を覚悟して、弾幕の中に飛び込んだ。

「な……ッ!?」

 イッテェ……、でもただ痛いだけだ(・・・・・・・)致命傷にはならないし、何か身体が欠損するわけではない、ならば――耐えようと思えば耐えられる。

「シッ!!」

 驚きの声を上げる仮面の男の足を狙ってナイフを奔らせる、まず機動力を奪いそれから無力化させる算段だったが、

「……」

「マジすか」

 しかしソレは瓦解する。

 ナイフをとっさに避けようとして、跳びずさった仮面の男は無傷だった。避けられた訳ではない、事実手ごたえはあったし、ズボン自体にも少しキズがついている、しかし切ることはできなかった。

 つまりソレはこちらの攻撃は相手に利かないという事、事実現状であの服を貫くのは難しい。

「…………諦めるか」

 仮面の男は先ほどの魔法より、速く、威力の高そうな魔法を弾幕のように撃ち出した。

 すぐさま弾幕が薄い右側に避ける。

 しかしそれは意図的に薄くされた道、積み将棋のように動きを誘導された行き止まり。

 それには気づいていた、気づいていてその道を行った。

 ――だって俺は諦めたのだ。

 仮面の男の魔法が起動する。誘導した箇所に、青い光の輪が現れる。

 ――そう俺は諦めた。

 

 

 

 

 殺さずに、勝つことを諦めた。

 

 

 

「ッ!?!?」

 仮面の男が目を向けた罠の先にはもう俺はいない、そこには空しく青い光が浮かんでいるだけ。

 いきなり俺が姿を消したことに、動揺する仮面の男を頭上から見る――狙いを定める。仮面の男の首を刈るのに絶好のポジション、相手は気づいておらず、今からでは防ぐのも避けるのも間に合わない。

 ナイフが弧を描き首目掛けて走る。

 だが俺は理解していなかった。

 相手が『魔導師』だというそのそのことを正しく理解していなかった。

 

 

 ガキキ……ッ!!

 

 

「はぁ……!?」

 仮面の男の首を切断するはずだったナイフは、見えない壁を少し切り裂いたところで塞き止められていた。肉体の制限を外した腕力と落下と遠心力を利用した一撃を防がれた。

 防御魔法……!? まさかとっさに間に合わせた? いやそんなことよりここいるとマズイ!!

 ナイフを持っていない左腕で、仮面の男の頭を掴みベットへと自分の身体を投げ出す。

「がっ……は……っ!」

 ベットに落ちるまで数十発と魔法の弾丸を打ち込まれ、意識が飛びそうになるが、何とか耐え切る。

「……」

「クソが!!」

 堪えきれず悪態を吐いてしまう、ソレぐらい今の状況は最悪だった。こちらの攻撃は一つも通らず満身創痍、しかも相手は無表情(仮面してるから表情が見えないけど)で止めを刺さそうと魔法を起動させている。

 勝ち目が薄いどころか無い。正に絶体絶命。

 だったら答えは一つ――逃げるんだよ!!

「弁償しろよ!!」

 そう言いながら、ベットに置いてあった本でナイフを作り、相手の視界を塞ぐように投げつけ――俺は窓から飛び降りた。

 

 

‡  ‡

 

 

 仮面の男は投げつけられたナイフごと目の前を少年を、撃ち抜こうと放たれた射撃魔法は、しかしナイフとベットを撃ち抜くだけで、少年には一発も当たらなかった。

「……」

 直ぐに少年が逃げたと思われる窓から下を見下ろすが、そこには少年の姿はすでに無かった。

 後を追おうと窓枠に足を掛けるが、ふと考える。

(べつに深追いする必要は無いんじゃないか……?)

 もともと、これは警告を無視したその罰なのだ、ならばもう目的は果たしたといえるだろう。それに一般人に……こちらが手加減していたとはいえ、アレだけ戦える者を一般人と呼んでいいかは不明だが――最後の一撃は予め最初にナイフを投げられた後、念のため張っておいた防御魔法が無かったらおそらく死んでいただろう――それでも危害を加えるのは本意じゃない。警告を無視したらどうなるかも、思い知っただろう。

 これでまだ無視するようだったら、逆にもう放っておいていいだろう。それだけの覚悟があるのなら、いつか来る別れ(・・・・・・・)も耐えられるだろう。いや、耐えられなかったとしても、そのときは自分たちが責任を持って対処しよう。

 私たちは間違ったことはしていないが……それでも、これが絶対に正しいと胸を張れないのも、また事実なのだから。

 そう考えた仮面の男は夜空へと姿を消した。

 

 

 

‡  ‡

 

 

 

 夜空に消えていく様子を眺めながら俺は胸を撫で下ろした。どうやら助かったらしい。

「あー……キツ、足痛ってーよ、ちくしょお……」

 そう言いながら自分の家の玄関に倒れこんだ。ひんやりとした床が熱くなった身体を冷ましてくれて実にきもちいい。

 逃げたはずの俺がどうしてここにいるかというと、簡単な話、俺の逃走先がここだったから。

 あの時、窓から飛び降りた俺は、速攻で玄関に回り家の中に戻った。その理由は、相手が『魔導師』だったからという一言に尽きる。空を飛ばれたらどんなに速く逃げても、直ぐに補足されるだろうし、飛んでいる相手とは戦闘にすらならない。だったら屋根のある屋内に逃げ込んだほうがいい、そしてここは住宅街だから、俺の家以外戦場にしていい場所は無い(したくないけど)。それに灯台下暗しとも言うしな、もしかしたら撒けるかもという心算もあった。実際探しに行ったのか、諦めたのかは知らないが、どこかに行ってくれたしな。

「ああー……子供ってキツイなー……やっぱり」

 負け惜しみのように呟く、まぁようにというかモロ負け惜しみだけど。 

 身体能力が低い。どうしようもなく低い。もう少し成長していればいい勝負が出来ていただろうし、正直言って勝っていた可能性もかなりある。ナイフ以外の武器も満足に使えただろうし、ナイフでもあの服と、あの最後の防御魔法だったら恐らく貫けただろうなと思う。

 とはいえ、現状の実力で勝てないのなら、やっぱりただの言い訳だし、負け惜しみだろう。

 いや、正直手が無かったわけではないだけどな……あの服をいつかの誘拐犯のときのように、アイアンメイデンにするとか。だけど、あの服『魔法』だろうしな……『魔法』を『材料』にできるかどうかわかんないから使えなかったんだよな、正直あの状況でぶっつけ本番を試すのは難易度が高すぎるし。

 やっぱただのいい訳だな。

 まぁでも完敗だ、完敗。

 次ぎ襲われたらやばいから、家の中にナイフ以外の武器用意しとこ……アレならきっとあの服も斬れるだろ。

「次は勝つ……たぶん」

 でも無理だろうなー……次は手を抜いてくれないだろうし、まぁ無理そうだったら逃げよう、そのときはいっそはやてん家に逃げ込もう、そんでヴィータ達に俺も護ってもらおう、そうしよう。

 さて、んじゃ部屋に戻るかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベット壊れてるどころか、俺の部屋メチャクチャなんだけど……どうすりゃいいんだよ」

 どこで寝ればいいんだよ俺。




ではでは第六話です。
今回は久しぶりの戦闘回。魔法を使えない今の主人公が勝てる可能性がある魔導師は、実戦経験が少ないなのはか、装甲が薄いフェイトぐらいじゃないでしょうか? ただし、それも室内戦――というより相手が空を飛べない状況――に限ります。飛ばれたら絶対に勝てません。
今回の戦闘も、相手がなめてくれていたからあそこまで善戦できましたが、本気でこられたら逃げることも出来ずやられていたでしょう。
リリなのの世界なのに魔導師に勝てない主人公(笑)そもそも魔法まだ使えませんしね……。


さて7月。
七夕が過ぎましたね。
しかし、七夕伝説を読んで疑問が一つ……笹の葉と短冊関係なくね?
昔昔につるした短冊を笹ごと燃やすことで、空にいる彦星と織姫に届け、そして二人に願いを叶えてもらう、というような話を聴かされ実際やらされたんですが……嘘っぱちでしたね。
そんな作者の願い事は、嫁との間に次元の壁が隔ているため会えずにいる作者を見かねてかささぎが飛んで来てくれることです。







とりあえず彦星と織姫は爆発すればいいと思いました、まる(コナミカン)。

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