フェレットを動物病院に無事届けたその夜。
『――僕の声が聞こえますか?』
聞こえねーよ。
今いいとこなんだよ黙れ!
俺はゲームでラスボスに挑んでいた。
そしてラスボスを倒し終わった頃にはすでに不思議な声はもう聞こえなくなっていた。
次の日。
学校に行くと。
「ちょっとあんたもこっちに来なさい!」
挨拶されるでもなくバニングスに連行された。
「おはよう、刃くん」
「おはようなの」
「・・・うーす」
高町の席まで連行されたらそこには高町(あたりまえ)と月村がいた。
「ちゃんと挨拶しなさいよ!」
「挨拶をしていないおまえには言われたくないな」
「うっ」
「んで何の用だ?」
朝っぱらからこいつらに絡まれんのは嫌なんだけど・・・眠いし。
「あいかわらず眠そうね」
ほっとけ。
「えっと・・・。なのはちゃんが昨日のフェレットを飼うことになったから見に行こうって話してたんだよ」
へー。
「それにしてもすごい偶然よね」
「なにがだ?」
「なのはちゃん、昨日あのあと気になって様子を見に行ったんだって、そしたら動物病院の近所で事故が起きて、それでちょうど逃げ出したあの子をなのはちゃんが見つけたんだって」
「・・・そりゃまたすごい偶然だな」
たぶん昨日聞こえた『声』が関係してんだろうなー。これは原作がもう始まったか?
「そ・れ・で。見に行くからあんたも来なさい!」
「だが断る!」
「なんでよ!」
「興味ない」
んじゃっと俺は自分の席に戻る。ちなみに修羅の手は伸びてきたが昨日とは違い今度は避けた。
なんども同じ手が通用すると思うなよ・・・!
昼休み、放課後、両方の時間を高町達から逃げ切り家に帰った。
俺としては一度遠くから高町が魔法少女やってるところを視てみたいが、どこでなにがあったのかまったく思い出せない・・・。
だからまぁとりあえず、夜散歩に出てみることにした。こういう現代ファンタジー的なのは大体夜がメインだと相場が決まっている、所謂テンプレというやつだ。
星が無い夜空の下を歩く、やっぱり徘徊するなら夜がいい。この空気、人がおらず昼間と違って眠ったように、或いは死んだように静寂な夜道、たまらないね。
そんな風に静かにテンションを上げながら歩いていると、道に何か光るものをみつけた。
近づいて拾ってみる。それは蒼い菱形をした宝石のようなものだった。
「蒼い宝石といえばサファイアだけど――おまえ、これが何か知ってんのか?」
「――ジュエルシード」
背後の声に振り返る。
そこには黒いレオタードのような衣装に漆黒のマントを羽織った金髪ツインテールの少女。
格好も十分ビックリだがそれよりなによりもビックリなのがその少女はやけに機械チックな戦斧を持っていこと――ではなく、原作キャラ『フェイト・テスタロッサ』その人であるということ。
「へー・・・知らない宝石だな」
フェイトさんとエンカウントしました・・・マジで?誰か後ろに居るのは気づいてたけど・・・マジで?
「それを渡してください」
「渡さないと痛い目に合うよ!」
フェイトの声に合わせる様に背後から声。
目を向けると、オレンジの長髪にタンクトップにホットパンツに黒いマント姿の引き締まったやけにスタイルのいい女性。
・・・エロいな。
てかこいつは誰だ・・・?やっぱあてになんねーな俺の記憶。
「別にいいけど・・・これはおまえ達のなのか?」
「・・・違います。でもそれは危険なもので――私たちが探してるものです」
・・・いい子というか正直というか――バカというか・・・、自分たちのですって言やーいいのに。
「ふーん、・・・危険ね」
「いいから早く寄越しな!!」
後ろのエロいネーちゃんさっきからうるせーな・・・。それが人に物を頼む態度かよ、ああいや頼んでんじゃなくて、命令、恐喝、強制かこれは・・・なら納得。
「まぁいいや・・・、ホレ」
「あ、っと」
これ以上怒鳴られんのもめんどいしフェイトに放り投げる。少し面食らったようだがどうにかキャッチするフェイト。
「・・・ありがとうございます」
「ちょい待ち」
もう用はないとばかりに立ち去ろうとするフェイトを呼び止めると意外なことに立ち止まってくれた。
「おまえ、飯食ってんのか?顔色悪いし、なんかやばそうだぜ?」
「あなたには関係――」
くーーー。
「・・・・・・」
「あぅ・・・」
食べてないんだな・・・。
「ちゃんと飯は食ったほうがいいぞ。何のために集めてるか知らんが倒れたら元も子もない」
「フェイト・・・それはあたしも同感だよ」
「でも急がないと・・・」
はぁ・・・しょうがないのかねー、俺が言ったんだし・・・責任くらいとりますか。
「・・・おまえちょっと着いて来い」
「え?」
「その宝石渡したんだ・・・ちょっとくらい聞いてくれたっていいだろ?」
「・・・・・・」
「フェイト・・・」
着いてこなきゃ着いてこないでべつにいいけど・・・選択肢は与えたぜ?
「・・・わかりました」
「え・・・と・・・?」
「なんだ食わないのか?でも食わないのは認めないぞ」
「フェイトこれ美味しいよ!」
ただいま俺の家で食卓を囲んで困惑気味のフェイトさん・・・うん、かわいいな。
「どういう・・・?」
「俺が、飯食えって言ったからな・・・、食えるように用意してやんのが筋だろ?」
そうなのかな・・・?っと首を捻りながら、とりあえず一口食べてみるフェイトさん。
「あ・・・おいしい」
「おう」
どうやら口に合ったらしい・・・、自分以外に食わせた事がないからちょい不安だったけど杞憂だったみたいだな。
おそるおそる、でも美味しそうに食べるフェイトと豪快に美味そうに食べるネーさん、例えるなら小型犬と大型犬だな。
「あの・・・美味しかったです。ありがとうございました」
「こんなに美味しいの久しぶりに食べたよ。あんた、いいやつだね」
「お口に合ってなによりだ。・・・俺は風切 刃おまえらは?」
飯が食い終わりとりあえず自己紹介することにした。
フェイトの事は名前だけ知っているがオネーさんの方は知らないし、自己紹介しないと相手の名前も呼べない。俺はこいつらのことを『知らない』のだから。
「あ・・・と。フェイト・テスタロッサです・・・」
「あたしはアルフだよ」
「テスタロッサにアルフな。おまえら何時でも飯食いに来ていいからな、つか来い」
「いや・・・でも・・・」
「いいのかい?」
「アルフ!?」
「ああいいよ。といってもおまえらの探し物が終るまでだけどな」
「・・・いいんですか?」
「いいよ、その代わり俺を面倒ごとに巻き込むなよ?でも来ないのはだめだからな」
「・・・・・・」
我ながら矛盾したこと言ってるなー・・・、まぁ今に始まったことじゃないからいいけどね。
「わかりました・・・お世話になります」
「おう。世話するぜ」
・・・・・・今気づいた、これって餌付けじゃないだろうか?