7月の終わり。
営業を終えたファンステージ原町中央店。
今日は仕事が終わったあと、スタッフ全員で食事会が開かれることになっていた。
小瀧の送別会。
そして、新型ウイルスの影響で延期になっていた大野、大沼、そして浜谷の歓迎会も兼ねている。
参加するのは、茂田、石村、山神、武藤、高崎、小瀧、大野、大沼、そして浜谷。
仕事以外でスタッフと会うのは、浜谷にとって今日が初めてだった。
「なんか緊張しますね。」
私服に着替えながら浜谷が言うと、石村が笑った。
「仕事じゃないんだから気楽でいいよ。」
「今日は食べるのが仕事!」
武藤も笑う。
「いっぱい食べなさい!」
そんな和やかな雰囲気のまま、一行は近くのしゃぶしゃぶ店へ向かった。
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席は二つの鍋に分かれた。
一卓目は、茂田、山神、高崎、小瀧。
もう一卓は、石村、大野、武藤、大沼、浜谷。
全員が席に着くと、茂田がグラスを持ち上げる。
「今日は翠ちゃんの送別会と、大野さん、大沼さん、浜谷くんの歓迎会です!」
「それでは……。」
「かんぱーい!」
「乾杯!」
グラスの音と笑い声が店内に響いた。
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浜谷の卓では、石村が率先して肉を鍋へ入れていく。
「浜谷くん、遠慮しないで食べな。」
「ありがとうございます!」
大野は野菜を鍋へ入れながら笑う。
「お肉ばっかりじゃダメだよ。」
武藤は器用に灰汁を取りながら、
「鍋は灰汁取りが大事なの。」
と得意げに話す。
「武藤さん、手際いいですね。」
「家じゃ毎日やってるからね。」
その一言に全員が笑った。
大沼も浜谷へ微笑む。
「最初の頃より本当に落ち着いたよね。」
「ありがとうございます。」
「まだまだ勉強中です。」
すると石村が笑う。
「勉強中でも、一歩ずつ前に進んでる。」
「その調子だ。」
浜谷は照れながら「はい」と返事をした。
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一方、その頃。
茂田たちの卓では、終始笑い声が絶えなかった。
「しげちゃん、それ違う違う!」
高崎が大笑いする。
「帰るニダ!」
茂田が真顔で言うと、
「まだ始まったばっかりですよ!」
小瀧が思わず吹き出す。
山神は黙々と肉を食べながら、
「おぅ。」
とだけ返す。
その一言だけで全員がまた笑った。
「このメンバー、本当に好きだなぁ。」
小瀧がそうつぶやくと、茂田も優しく笑う。
「ファンステージらしいよね。」
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食事も終盤。
浜谷は店内を見渡した。
店長。
副店長。
学生。
主婦。
ベテラン。
新人。
年齢も性別も違う人たちが、一つの鍋を囲み、笑い合っている。
仕事の話。
家族の話。
昔の失敗談。
他愛もない話で盛り上がる姿を見ていると、不思議な気持ちになった。
(家族みたいだな……。)
アルバイトを始める前は、仕事が終わればそこで終わりだと思っていた。
でも違った。
困った時は助け合い、
嬉しいことは一緒に喜び、
こうして仕事が終わってからも同じ時間を過ごす。
浜谷は、この職場がますます好きになっていた。
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食事会も終わり、店の前で解散する。
「じゃあ、また明日!」
茂田が笑顔で手を振る。
「おつかれさまぁ〜ず♪」
「お疲れさまでした!」
それぞれ帰ろうとした時だった。
「じゃあね、琉くん。」
茂田が自然にそう呼んだ。
浜谷は少し驚く。
すると山神も、
「おぅ。琉くん。」
と、いつもの穏やかな口調で言った。
その呼び方が、なんだか嬉しかった。
仲間として認めてもらえたような気がした。
浜谷も笑顔で返す。
「はい! お疲れさまでした!」
そして武藤へ向き直る。
「邦美さん、今日はありがとうございました。」
「こちらこそ。またご飯行こうね。」
続いて高崎へ。
「麻美さん、ありがとうございました。」
高崎は少し驚いたあと、にっこり笑う。
「こちらこそ〜!」
「またみんなで集まろうね!」
今日を境に、少しだけ呼び方が変わった。
それは、お互いの距離が少し近づいた証。
夜風を感じながら歩く浜谷の表情は、どこかいつもより柔らかかった。
ファンステージは、ただ働く場所ではない。
ここには、一緒に笑い、一緒に成長していける仲間がいる。
そして今日、その仲間たちは浜谷にとって、本当の家族のような存在になっていた。