ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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爆音版ロミオとジュリエット

休日の午後の阿佐野店。

 

店内は多くのお客様で賑わっていた。

 

クレーンゲームのBGM。

 

メダルゲームの演出音。

 

太鼓ゲームの音楽。

 

店内BGM。

 

ゲームセンターならではの音が、店いっぱいに響いている。

 

浜谷はクレーンコーナーで景品の位置を直していた。

 

そこへ少し離れた場所から細井が声を掛ける。

 

「浜谷くん!」

 

しかし。

 

ゲームの音にかき消される。

 

浜谷は全く気付かない。

 

細井はもう一度。

 

「浜谷くんーー!」

 

そのタイミングで、ちょうどメダルゲームのジャックポット演出が始まる。

 

♪ジャジャジャジャーン!!

 

完全にかき消された。

 

細井は苦笑いする。

 

「聞こえてないか。」

 

その頃。

 

浜谷も景品を直し終え、辺りを見回していた。

 

「……あれ?」

 

「細井さん、どこだろう。」

 

さっきまで近くにいたはずなのに姿が見えない。

 

「探さないと。」

 

浜谷も店内を歩き始めた。

 

しかし。

 

細井がクレーンコーナーへ向かうと、

 

浜谷はメダルコーナーへ。

 

細井が右へ曲がると、

 

浜谷は左へ曲がる。

 

一本違う通路を歩く二人。

 

「浜谷くん!」

 

「細井さん!」

 

お互いを探しているのに。

 

なぜか会えない。

 

古坂はその様子を見ながら笑う。

 

「またすれ違った。」

 

茂田も思わず吹き出す。

 

「二人とも探してるニダ。」

 

「でも全然会えないニダ。」

 

浜谷が振り返る。

 

その瞬間。

 

細井は別の通路へ。

 

細井が振り返る。

 

その瞬間。

 

浜谷はまた別の通路へ。

 

「なんで会えないんだろう。」

 

「どこ行ったの……。」

 

二人とも同じことを考えていた。

 

その様子を見ていた茂田は、とうとうインカムを手に取る。

 

『琉くん。』

 

「はい!」

 

『細井ちゃん。』

 

「はい!」

 

『二人ともカウンター集合ニダ。』

 

「「はい!」」

 

数秒後。

 

二人は同時にカウンターへやって来た。

 

「いた!」

 

「いました!」

 

二人は顔を見合わせる。

 

細井が笑う。

 

「さっきから探してたのに!」

 

浜谷も苦笑いする。

 

「僕もです!」

 

古坂は笑いをこらえながら言う。

 

「二人とも、お互い探してたんだけどね。」

 

「ゲームの音で全然気付いてなかった。」

 

二人は思わず顔を見合わせて笑った。

 

浜谷が尋ねる。

 

「ところで、何の用だったんですか?」

 

細井は少し考える。

 

「……。」

 

「あ。」

 

「忘れた。」

 

一瞬静まり返る。

 

浜谷は思わず笑う。

 

「探してた本人が忘れたんですか?」

 

「うん。」

 

「探してるうちに忘れちゃった。」

 

茂田は大笑い。

 

「何してるニダー!」

 

古坂も吹き出す。

 

「まさに爆音版ロミオとジュリエットだね。」

 

ゲームセンターは今日も賑やかだった。

 

会いたいのに会えない。

 

そんな小さなすれ違いも、爆音に包まれたゲームセンターならではの日常だった。

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