午後の阿佐野店。
休日ということもあり、店内は家族連れで賑わっていた。
浜谷はクレーンコーナーを巡回している。
「お兄さん!」
一人の男の子が浜谷を呼び止めた。
「どうした?」
「これ取れない!」
クレーンゲームのガラスの向こうには、ぬいぐるみがアームの届かない位置にある。
浜谷は景品の位置を確認する。
「届く位置に動かそうか。」
鍵を開け、景品を少しだけ手直しする。
「これでどうかな?」
「ありがとう!」
男の子は満面の笑み。
「頑張って!」
「うん!」
男の子は元気よくゲームを始める。
浜谷は笑顔で頷いた。
「はーい。」
そのままクレーンコーナーを巡回する。
景品を整えたり、お客様に声を掛けたり。
いつも通りの仕事。
すると。
浜谷の後ろから、小さな影がそっと近付いてくる。
気配はない。
浜谷は全く気付かない。
そして。
「カンチョー!」
「ひっ!」
浜谷は思わず飛び上がった。
振り返ると、さっきの男の子がケラケラ笑っている。
「えへへ!」
浜谷は胸を押さえながら苦笑い。
「びっくりしたぁ……。」
少し間を置いて、小さくつぶやく。
「僕、痔持ちなんだよ……。」
「だから結構痛い……。」
その一言に、近くで見ていた細井は大笑い。
「琉くん、めっちゃ驚いてる!」
古坂も笑いをこらえきれない。
「そこ!?」
「心配するのそこなんだ。」
男の子のお母さんが慌てて駆け寄る。
「こら!」
「お兄さんにそんなことしちゃダメでしょ!」
男の子は少ししょんぼりする。
「ごめんなさい……。」
浜谷は笑顔で首を振った。
「大丈夫ですよ。」
「びっくりはしましたけど。」
男の子はもう一度、小さな声で言った。
「ごめんなさい。」
浜谷はしゃがみ、男の子と目線を合わせる。
「ちゃんと謝れたね。」
「えらい。」
そう言うと、ポケットからシールを一枚取り出した。
「はい。」
「頑張って謝れたから、ごほうび。」
男の子は目を輝かせる。
「いいの?」
「もちろん。」
「ありがとう!」
今度はさっきよりも元気な声でお礼を言った。
お母さんも頭を下げる。
「ありがとうございます。」
「いえいえ。」
浜谷は笑顔で男の子に言う。
「今度は普通に『お兄さん!』って呼んでくれたら嬉しいな。」
「うん!」
男の子は元気いっぱいに頷き、シールを大事そうに握りしめながらお母さんの元へ戻っていった。
その様子を見ていた茂田が笑う。
「琉くんらしいニダ。」
細井も優しく微笑む。
「怒るだけじゃなくて、ちゃんと褒めるところがいいよね。」
浜谷は少し照れながら笑った。
「ちゃんと謝れる子は、きっといい子ですから。」
今日も阿佐野店には、子どもたちの元気な笑い声と、スタッフの優しい笑顔があふれていた。