朝の阿佐野店。
「おはようございます。」
「おはよう!」
出勤してきた浜谷を見た瞬間。
細井が吹き出した。
「ちょっと!浜谷くん!」
「寝癖すごい!」
浜谷は慌てて頭を触る。
「えっ!?」
鏡を見ると、後ろ髪が見事に跳ねていた。
「あー……。」
細井は笑いが止まらない。
「寝ながら竜巻でも来た?」
「いやいや!」
浜谷は苦笑いしながら髪を直した。
「寝坊してそのまま来ちゃいました。」
「珍しいね。」
「恥ずかしいです……。」
──数時間後。
クレーンコーナー。
浜谷が巡回していると。
段差に気付かず。
「うわっ!」
つまずいた。
幸い転びはしなかったものの、大きく体勢を崩す。
それを見ていた細井。
「また何やってるの!」
「今日は絶好調だね!」
「絶好調じゃないですよ!」
浜谷は恥ずかしそうに笑う。
「ちゃんと前見て歩いて。」
「はい……。」
──さらに夕方。
メダルゲームへ補充中。
バケツを傾けた瞬間。
ジャララララッ!
メダルが床へ散らばった。
「あぁぁぁ……。」
浜谷は思わず頭を抱える。
細井はまた笑い始める。
「今日は全部コンプリートじゃん!」
「寝癖。」
「つまずく。」
「最後はメダルぶちまけ!」
「勘弁してください……。」
浜谷は床に散らばったメダルを拾い集める。
その様子を見ながら、心の中でつぶやく。
(この人……。)
(悪魔だ……。)
その時だった。
細井もしゃがみ込み、一緒にメダルを拾い始めた。
「ほら。」
「一人で拾うと時間かかるでしょ。」
浜谷は少し驚く。
「ありがとうございます。」
細井は笑いながら言う。
「でもさ。」
「今日はいろいろあったけど。」
「それだけ一生懸命に働いてるってことじゃん。」
「忙しく動き回ってるから寝癖にも気付かないし。」
「急いで巡回してるからつまずくし。」
「メダル補充も頑張ってる。」
「私は、そういうところ好きだけどね。」
そう言って、細井は天使のような笑顔を見せた。
浜谷は思わず見とれてしまう。
(……素敵な笑顔だ。)
(やっぱり。天使かも。)
浜谷は照れ笑いを浮かべる。
「ありがとうございます。」
細井はニコッと笑う。
「また明日もいじるからね!」
「やっぱり悪魔じゃないですか!」
細井はニヤリと笑う。
「殴るよ?」
浜谷は慌てて両手を振る。
「一発だけですよ?」
「大丈夫。」
細井は満面の笑みで拳を握る。
「一発で仕留めるから。」
バックヤードには二人の笑い声が響く。
そのやり取りを見ていた古坂は苦笑い。
「結局、今日もいつも通りだね。」
茂田も笑って頷く。
「そういう二人が阿佐野店らしいね。」
今日も阿佐野店は、笑顔であふれていた。