夕方の阿佐野店。
昼間の賑わいも少し落ち着き、お客様の数もまばらになってきた。
この時間になると始まるのが、メダルゲームのメダル回収。
浜谷は大きな青いバケツを持ち、メダルコーナーへ向かう。
「失礼します。」
ゲーム機を一台ずつ開け、ホッパーに溜まったメダルを回収していく。
シャラララララ……。
心地よい金属音が店内に響く。
一台。
また一台。
さらに一台。
メダルはみるみるバケツの中へ溜まっていく。
「今日は結構出てるなぁ。」
浜谷は笑顔で次のゲーム機へ向かう。
この日は休日明けということもあり、どのゲーム機にも普段以上にメダルが入っていた。
「もう少しでいっぱいだ。」
バケツの中は銀色のメダルでぎっしり。
持ち上げるだけでもかなり重そうだ。
浜谷は一度バケツを見つめる。
「……よし。」
「一気に持って行っちゃおう。」
本来なら二回に分けてもよかった。
でも少しでも早く作業を終わらせたかった浜谷は、そのまま両手でバケツを持ち上げようとする。
その瞬間だった。
ピキッ。
「痛っ!」
腰に鋭い痛みが走る。
浜谷は思わずその場にしゃがみ込んだ。
「いててて……。」
「やっちゃった……。」
腰を押さえながら苦笑いする。
ちょうどその様子を見ていた古坂が駆け寄ってきた。
「浜谷くん!」
「大丈夫?」
「はい……。」
「ちょっと腰を痛めたみたいです。」
古坂はバケツの中を見て目を丸くする。
「こんなに入ってるじゃん。」
「一人で持とうとしたの?」
「はい。」
浜谷は申し訳なさそうに笑う。
「二回に分けるの面倒かなって。」
古坂は苦笑いした。
「横着しちゃったね。」
「はい……。」
そこへ巡回していた茂田もやって来る。
「どうしたニダ?」
古坂が事情を説明する。
「メダルを一気に運ぼうとして、腰を痛めちゃったみたいです。」
茂田はバケツを見るなり苦笑い。
「これは重いニダ。」
「無理したらダメニダ。」
「すみません。」
浜谷は頭を下げた。
「ぎっくり腰ではなさそうですけど、ちょっと痛いです。」
「少し待ってるニダ。」
茂田はバックヤードへ向かう。
しばらくして戻ってくると、手には湿布があった。
「はい。」
「これ貼るニダ。」
「ありがとうございます。」
休憩室で湿布を貼る浜谷。
腰に冷たい感覚が広がる。
「うわぁ……。」
「冷たいですけど気持ちいい。」
古坂は笑う。
「若いからって無理したらダメだよ。」
「仕事は毎日あるんだから。」
「はい。」
浜谷は素直に頷いた。
その後のメダル回収は、古坂と二人で手分けして行うことになった。
作業を終えた帰り道。
浜谷は少しだけ腰をさすりながら笑う。
「横着して一気に回収しちゃダメですね。」
茂田も笑顔で頷く。
「仕事は速さも大事。」
「でも、一番大事なのは体ニダ。」
浜谷は深く頷いた。
「次からは欲張らずに二回に分けます。」
今日もまた一つ。
ゲームセンターの仕事から、大切なことを学んだ浜谷だった。