週末の阿佐野店。
土曜日ということもあり、店内は家族連れや学生で大賑わい。
クレーンゲームの前には順番待ちのお客様。
メダルコーナーも満席。
浜谷は店内を走り回っていた。
「すみません。」
一人の女性が浜谷に声を掛ける。
「手直しお願いできますか?」
「はーい!」
浜谷は笑顔でクレーンゲームへ向かう。
景品を少しだけ動かす。
「これでどうでしょう?」
「ありがとうございます!」
女性は笑顔でお礼を言い、再びプレイを始めた。
浜谷はカウンターへ戻る。
しかし。
(……。)
(あの人。)
(すごく可愛いなぁ。)
思わず女性のいる方向を見てしまう。
景品を狙っている姿。
楽しそうな笑顔。
気付けば目で追っていた。
その浜谷の瞳の様子を細井は見逃さなかった。
「浜谷くん。」
「はい?」
「どうしたの?」
浜谷は少し照れながら答える。
「いや……。」
「あの人、すごく可愛いなと思って……。」
細井はニヤリと笑う。
「へぇ〜。」
「珍しいじゃん。」
「まぁ……。」
浜谷は照れ笑いを浮かべた。
細井は女性の方をちらっと見る。
「確かに美人さんだね。」
「ですよね。」
浜谷は思わず頷いた。
細井は悪戯っぽく笑う。
「でもさ。」
「私の方が可愛くない?」
「……え?」
浜谷は一瞬固まる。
「ほら。」
「毎日会ってるじゃん。」
「見慣れちゃった?」
浜谷は慌てて両手を振る。
「いやいやいや!」
「細井さんも可愛いですよ!」
細井は思わず吹き出した。
「“も”なんだ(笑)」
「あっ……。」
浜谷は自分の言葉に気付き頭を抱える。
「違います!」
「そういう意味じゃなくて!」
そこへ古坂が通りかかった。
「何やってるの?」
細井は笑いながら答える。
「浜谷くんが慌ててる。」
古坂は浜谷を見る。
「完全に遊ばれてるね。」
浜谷は苦笑い。
「勝てません……。」
細井は満足そうに笑う。
「うん。」
「その反応が見たかった。」
その時。
先ほどの女性が景品を見事にゲットした。
「やった!」
嬉しそうに景品を抱え、出口へ向かう。
浜谷は自然と笑顔になる。
「取れてよかった。」
細井はその横顔を見て微笑んだ。
「そういうところ。」
「浜谷くんらしいね。」
営業終了後。
浜谷は苦笑いしながら荷物をまとめる。
「今日は完全に看破されました。」
細井はニヤリ。
「だって珍しかったんだもん。」
「可愛いって思うくらいは許してくださいよ。」
「もちろん。」
「でも。」
細井は少し間を置いて笑う。
「やっぱり私の方が可愛いでしょ?」
「まだ言うの!」
バックヤードには笑い声が響いた。
週末の阿佐野店。
今日も笑顔と、ちょっとした勘違いがあふれていた。