ある日の阿佐野店。
開店準備をしていると、茂田がシフト表を見ながら声を掛けた。
「琉くん。」
「今週の土日だけ、原町中央店勤務だからね。」
「はい!」
シフトの関係で、今週の土日だけ久しぶりに原町中央店へ戻ることになった浜谷。
「久しぶりだなぁ。」
少しだけ緊張しながら、その日を迎えた。
⸻
土曜日。
久しぶりの原町中央店。
自動ドアをくぐる。
「おはようございます!」
「おはよう!」
この日の出勤スタッフは、
茂田、山神、日村、藤屋、大沼。
そして、最近入社した新人スタッフ、内藤。
大沼が笑顔で浜谷を呼ぶ。
「浜谷くん!」
「紹介するね。」
隣にいた女性スタッフへ目を向ける。
「内藤さん。」
「最近入った新人さん。」
「ちなみに私の高校の同級生!」
内藤は少し緊張しながら頭を下げる。
「初めまして。」
「内藤です。」
「よろしくお願いします。」
浜谷も笑顔で頭を下げた。
「浜谷です。」
「原町中央店所属なんですけど、最近は阿佐野店に応援勤務することが多いんです。」
「よろしくお願いします!」
内藤もホッとしたように笑う。
「こちらこそお願いします。」
日村が笑う。
「ヨロシクオネガイシマァス。」
「はい!」
事務所へ入ると、浜谷は思わず足を止めた。
「あれ?」
「冷蔵庫増えてる。」
前にはなかった冷蔵庫が置かれている。
日村が笑う。
「最近設置した。」
「便利になったでしょ?」
「知らない間に変わってますね。」
そんな小さな変化に驚きながらも、仕事が始まれば体は自然と動く。
クレーンゲームを巡回し。
メダルを補充し。
お客様を案内する。
何も変わらない。
それがどこか嬉しかった。
すると。
「おー!」
常連のおじさんが浜谷を見つけた。
「久しぶりだねぇ!」
「辞めたかと思ったよ!」
浜谷は笑って首を振る。
「ご無沙汰してます!」
「辞めてないですよ。」
「最近はずっと阿佐野店なんです。」
「そうだったのか。」
常連は少し寂しそうに笑う。
「また原町にも来てよ。」
「寂しいもん。」
浜谷も自然と笑顔になる。
「ありがとうございます。」
「また来ます!」
その一言に、常連も嬉しそうに頷いた。
仕事がひと段落した頃。
景品を整えている浜谷のもとへ、山神が歩いてきた。
「琉くん。」
「はい。」
「阿佐野店はどうだ?」
浜谷は笑顔で答える。
「毎日楽しいです。」
「個性的な人ばっかりで。」
山神も小さく笑う。
「おぅ。」
「いい経験してるみたいだな。」
「はい。」
「メンテナンスも任せてもらえるようになりました。」
山神は静かに頷く。
「技術は一日じゃ身につかん。」
「失敗して覚えて。」
「それを繰り返して一人前になる。」
浜谷は力強く頷いた。
「はい!」
山神は浜谷の肩を軽く叩く。
「原町でも、阿佐野でも。」
「琉くんらしく頑張れ。」
「ありがとうございます!」
浜谷はその背中を見送りながら、小さくつぶやいた。
「……やっぱり山神さんだな。」
⸻
日曜日。
この日の出勤スタッフは、
高崎、石村、川原、相馬、大沼。
「おはよう!」
「おはようございます!」
久しぶりに顔を合わせても、会話は昨日の続きのように自然だった。
クレーンゲーム。
メダルゲーム。
景品手直し。
接客。
入社した頃から何度も繰り返してきた、いつもの日常。
浜谷は店内を歩きながら思う。
(やっぱり原町中央店も落ち着くな。)
景品手直しを終え、バックヤードへ戻ると、川原が飲み物を片手に声を掛けた。
「浜谷さん!久しぶりです!」
「川原さん!ご無沙汰です!」
「元気でした?」
「そっちこそ!」
「僕は阿佐野店で毎日走り回ってます。」
川原は笑う。
「顔見たら分かります。」
「なんか前より頼もしくなりました。」
浜谷は照れ笑い。
「そんなことないですよ。」
「ありますよ!」
川原は頷いた。
「阿佐野店で鍛えられてるんですね。」
浜谷は嬉しそうに笑う。
「いろんな人に助けてもらってます。」
「私もです!でもそれが一番。」
川原は優しく微笑む。
「原町でも阿佐野でも。」
「浜谷さんらしく頑張ればいいよ。」
「はい!」
浜谷は元気よく返事をした。
そういえば。
最近入社したメンテナンス担当の新人スタッフ。
浜谷が密かに対抗心を抱くスタッフ。
「今日はもう1人の新人さん休みなんですね。」
石村が頷く。
「今日はシフト入ってないよ。」
「そっか。」
少しだけ会ってみたかった浜谷は、残念そうに笑った。
「また今度ですね。」
あっという間に二日間は終わった。
帰り支度をしながら、浜谷はふと思い出す。
「あっ!そうだ!」
「生田さんに発注してもらったメダルゲームの部品!」
「もう届いてるかも!」
頭の中には、阿佐野店のメダルゲームが浮かぶ。
「大澤さんが交換してくれてたらいいけど……。」
少し考えて笑う。
「もしまだだったら。」
「次に阿佐野店へ行った時、僕が取り替えよう。」
原町中央店。
そして阿佐野店。
どちらも浜谷にとって、大切な居場所。
二つの店舗を行き来しながら、浜谷は今日も少しずつ成長していくのだった。