平日の阿佐野店。
事務所では茂田が景品発注の画面とにらめっこをしていた。
「うーん……。」
「何発注するか迷うニダ。」
そこへ浜谷がやって来る。
「おっ!発注ですか?」
「そうニダ。」
「何入れるか迷うニダ。」
浜谷も画面を覗き込む。
「あっ!」
「オメメ人形あるじゃないですか!」
茂田は景品画像を拡大する。
「本当にこれ人気なの?」
「可愛くないニダ。」
浜谷は笑う。
「いやいや。」
「大学でもめっちゃ流行ってますよ。」
「SNSでもよく見ます。」
茂田は首をかしげる。
「私には分からないニダ……。」
その時。
「おはようございまーす!」
細井と樋口が出勤してきた。
浜谷は二人のカバンを見て驚く。
「ほら!」
「二人とも付けてるじゃないですか!」
細井のカバンにはチマナコオメメ人形。
樋口のカバンにはバキバキオメメ人形。
細井は樋口のカバンを見る。
「バキバキだ!」
「可愛いですね!」
樋口も笑う。
「チマナコも赤くて可愛い!」
浜谷は得意げ。
「ね?」
「人気なんですよ。」
しかし茂田は腕を組む。
「私は信じないニダ!」
「冨美子なら分かってくれるニダ!」
浜谷は思い出したように言う。
「そういえば。」
「古坂さんもオメメ人形付けてましたよ。」
「なにっ!」
茂田はすぐにインカムを取る。
「冨美子。」
「ちょっと事務所来るニダ。」
数分後。
古坂がやって来た。
「どうした?千歌ちゃん。」
茂田は画面を見せる。
「オメメ人形って知ってる?」
古坂は目を輝かせた。
「あー!」
「私昨日並んで買ったよ!」
そう言ってロッカーへ向かい、カバンを持って戻ってくる。
「ほら!」
「フタエオメメ人形!」
細井は大興奮。
「フタエだ!」
「よく手に入りましたね!」
樋口も驚く。
「本当だ!」
「今一番人気ですよね!」
浜谷はニヤリ。
「ほら。」
「人気なんですよ。」
茂田は悔しそうに唸る。
「ぐぬぬ……。」
「冨美子まで……。」
浜谷が笑う。
「発注しちゃっていいんじゃないですか?」
すると古坂がパソコンを覗き込む。
「えっ!?」
「オメメ人形景品になるの?」
細井と樋口も駆け寄る。
「どれどれ!」
古坂は画面を見て大興奮。
「うわ!」
「これゲームセンター限定のオクブタエオメメ人形だ!」
細井も歓声を上げる。
「すごい!」
「これうちに来るんですか!?」
樋口も身を乗り出す。
「これ絶対発注しましょう!」
三人の圧が一気に茂田へ向く。
浜谷も少し引き気味。
「すごい圧……。」
茂田は押されっぱなし。
「可愛くないのに……。」
「分かったニダ!」
「発注するニダ!」
「やったー!」
三人は大喜び。
一方、茂田は少しだけ不貞腐れた表情だった。
数日後。
オメメ人形の景品が阿佐野店へ届いた。
「来たー!」
古坂、細井、樋口は大興奮。
「これがオクブタエオメメ人形かぁ!」
「欲しいなぁ。」
浜谷は笑う。
「景品ですからね。」
「皆さん取ってください。」
すると。
満面の笑みの茂田が事務所へ入ってきた。
「みんな!」
「見るニダ!」
カバンには、一つのオメメ人形がぶら下がっていた。
三人の目が一斉に輝く。
「えっ!!」
古坂が叫ぶ。
「これって!」
「日本に30体しかない幻のヒトエオメメ人形じゃん!」
細井も興奮。
「ちょっと写真撮らせてください!」
樋口もスマホを取り出す。
「私も!」
茂田は満面の笑み。
「みんなに言われてから調べたら。」
「可愛くてたまらなくなったニダ!」
「どんどん撮るニダ!」
茂田は得意げにポーズを決める。
その様子を見ていた浜谷は苦笑い。
「あんなに。」
「『いらない。』『可愛くない。』って言ってたのに……。」
その一言に。
事務所は大きな笑いに包まれた。
結局——
「いらない、いらない」も、欲しいのうち。
そんな阿佐野店らしい一日だった。