とある夕方の阿佐野店。
浜谷はバックヤードで一枚のメモを書いていた。
休みの大澤へ向けた引き継ぎメモ。
「メダルゲームのホッパー部品交換済みです。」
「クレーンゲームの部品を生田さんに発注してもらったので、届いたら交換お願いします!」
書き終えたところへ、細井がやって来た。
「浜谷くん。」
「はい?」
「浜谷くんの字って癖あるよね。」
浜谷はメモを見つめる。
「そうですかね?」
「確かに……。」
「変っていうか、丸文字かもです。」
細井は笑う。
「うん。」
「なんか可愛い字。」
「優しい感じする。」
浜谷は少し照れ笑い。
「ありがとうございます。」
そこへ茂田がやって来る。
「何の話してるニダ?」
浜谷はメモを見せる。
「僕の字が変じゃないかって話です。」
茂田はじっと眺める。
「確かに丸いニダ。」
細井も頷く。
「可愛い字してますよね。」
浜谷は苦笑い。
「男なんですけどね。」
茂田は笑う。
「でも。」
「浜谷くん。」
「私の字も丸いニダ。」
浜谷は思わず笑う。
「確かに。」
「茂田さんの字も丸いですよね。」
細井も吹き出す。
「うん。」
「丸っこい!」
茂田は得意げに胸を張る。
「可愛いでしょ?」
三人は大笑いした。
笑いが落ち着いた頃。
茂田がふと思い出したように口を開く。
「でもね。」
「阿佐野店って字が綺麗な人多いニダ。」
「特にこれ。」
そう言って、クレーンゲームの展開書に挟まっていた一枚のメモを見せる。
浜谷は思わず目を丸くした。
「うわっ!」
「めっちゃ達筆!」
「これ誰が書いたんですか?」
細井も覗き込む。
「本当だ。」
「すごく綺麗。」
茂田はニヤリと笑う。
「ちょっと連れてくるニダ。」
そう言ってバックヤードへ向かった。
浜谷と細井は顔を見合わせる。
「誰だろう?」
「全然分からない。」
しばらくして。
茂田が一人のスタッフを連れて戻ってきた。
「連れて来たニダ。」
「なんですかー?」
やって来たのは樋口だった。
浜谷は驚く。
「えっ!」
「樋口さんなんですね!」
「意外でした!」
樋口は少し照れくさそうに笑う。
「学生の頃。」
「書道やってたんですよ。」
「えー!」
細井も驚く。
「そうだったの?」
「初めて聞いた!」
樋口は照れながら頭をかく。
「普段書く機会あんまりないですからね。」
浜谷は改めてメモを見る。
「本当に綺麗ですね。」
「憧れます。」
樋口は笑う。
「浜谷くんの字もいいと思うよ。」
「丸くて読みやすい!」
浜谷は少し照れる。
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
茂田は満足そうに頷いた。
「字にも性格が出るニダ。」
「丸い字。」
「達筆な字。」
「どっちもその人らしさニダ。」
四人は笑い合う。
その時。
樋口がふと浜谷のメモを見ながら口を開いた。
「そういえば浜谷くん。」
「この丸文字。」
「信濃路モンスターのパッケージの文字みたいで好きだよ。」
浜谷は思わず笑う。
「またシナモンですか!」
細井も吹き出す。
「ほんと好きですねぇ。」
茂田も笑う。
「何でもシナモンに結びつけるニダ。」
樋口は照れ笑い。
「だって好きなんですもん。」
四人はまた笑い合う。
その日も阿佐野店には、それぞれ違う”字”と、それぞれ違う個性、そして今日も変わらず信濃路モンスター愛を語る樋口がいたのだった。