ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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あいつが来ちまった

ある日の阿佐野店。

 

夕方。

 

浜谷はいつものようにクレーンゲームコーナーを巡回していた。

 

景品の位置。

 

お客様の様子。

 

異常がないか確認しながら歩く。

 

その時だった。

 

クレーンゲームの前に見覚えのある人影。

 

(……まさか。)

 

浜谷の血の気が引く。

 

人影はこちらへ歩いてくる。

 

そして浜谷の目の前で立ち止まった。

 

「おっ!いた!浜谷!」

 

「今日は阿佐野なんだ!」

 

浜谷は頭を抱える。

 

「……やっぱりお前か。」

 

その人物は、大学の友人――

 

長北長介(ながきた ちょうすけ)。

 

「最近さ、原町行ってもいないから。」

 

浜谷は呆れたように言う。

 

「最近は阿佐野だって言ったじゃん。」

 

長北は笑う。

 

「そうだっけ?」

 

「てか、真面目に働いてるじゃん。」

 

浜谷はため息をつく。

 

「恥ずかしいから来るなって言ったじゃん。」

 

長北は大笑い。

 

「いいじゃんいいじゃん!」

 

「働いてる浜谷、新鮮だわ。」

 

そこへ樋口と矢水が巡回から戻ってきた。

 

樋口が首をかしげる。

 

「浜谷くんのお友達?」

 

長北は笑顔で一礼する。

 

「そうです!」

 

「長北です!」

 

「いつも浜谷がお世話になってます!」

 

浜谷は慌てる。

 

「やめろって!」

 

矢水は笑顔で返す。

 

「こちらこそ。」

 

「浜谷さんにはお世話になってます。」

 

長北は浜谷の肩を叩く。

 

「浜谷が迷惑かけたら言ってください!」

 

「シメるんで!」

 

「もう!変なこと言うな!」

 

浜谷は顔を真っ赤にする。

 

長北は今度は樋口の前へ。

 

「ところで。」

 

「お姉さん、このあと暇ですか?」

 

樋口はきょとん。

 

「え?」

 

浜谷は慌てて止める。

 

「やめろやめろ!」

 

長北はお構いなし。

 

「ご飯でもいかがですか?」

 

樋口は左手を見せて笑う。

 

「ごめん。」

 

「私、結婚してる!」

 

左手の薬指には結婚指輪。

 

長北はその場で固まる。

 

「……ガーン。」

 

樋口と矢水は笑いながらその場を離れた。

 

長北は苦笑い。

 

「いやー。」

 

「見事に振られた。」

 

浜谷は呆れ顔。

 

「だから言っただろ。」

 

「ナンパやめろ!」

 

長北は笑う。

 

「冗談だよ。」

 

少し真面目な表情になる。

 

「でもさ、浜谷頑張ってんじゃん。」

 

浜谷は照れくさそうに笑う。

 

「頑張ってるよ。」

 

長北は頷く。

 

「ファンステージの話する時。」

 

「お前、いつも楽しそうだもんな。」

 

浜谷は照れ隠しに笑う。

 

「やめろよ。」

 

「恥ずかしい。」

 

長北は腕時計を見る。

 

「てか今日何時まで?」

 

「十九時かな。」

 

「じゃあ待ってるわ。」

 

浜谷は少し驚く。

 

「え?」

 

「いいの?」

 

長北は笑う。

 

「終わったらメシ行こうぜ!」

 

浜谷も笑顔になる。

 

「よし!」

 

「じゃんけん負けた方が奢りな!」

 

長北はニヤリ。

 

「浜谷。」

 

「十七連敗中だけど大丈夫か?」

 

浜谷は胸を張る。

 

「任せな!」

 

「次こそは!」

 

長北は笑いながら店内を歩き始める。

 

「じゃあ色々見てくるわ。」

 

浜谷も笑顔で手を振った。

 

「じゃあ後で!」

 

友達に少し振り回されながらも。

 

どこか嬉しそうな浜谷だった。

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