ある日の午前の阿佐野店。
事務所。
古坂と樋口は届いたばかりの新景品を箱から取り出していた。
「うわぁ……。」
古坂が思わず苦笑いする。
「これ人気出ますかね?」
樋口も首をかしげる。
箱の中に入っていたのは、手のひらサイズのガイコツ。
しかもカラーバリエーションは三種類。
白。
黒。
そして——
メタリックレインボー。
古坂はレインボーのガイコツを手に取る。
「メタリックレインボー!?」
「何この色……。」
樋口も覗き込む。
「なんか少し気持ち悪いかも……。」
そこへ巡回中の浜谷と細井がやって来る。
「どうしたんですか?」
古坂が景品を見せる。
「見て、この新景品。」
細井は少し驚く。
「ガイコツ……。」
浜谷もレインボーのガイコツを見る。
「しかも何ですか、この色……。」
樋口が箱を見ながら言う。
「メタリックレインボーなんだって。」
四人は顔を見合わせる。
そして声を揃えた。
「人気出なそう……。」
とはいえ。
仕事は仕事。
古坂と樋口はクレーンゲームへ景品を展開する。
位置を調整し。
設定を確認し。
テストプレイも終了。
「よし。」
「開放!」
営業が始まる。
すると——
「えっ?」
最初のお客様がガイコツを狙う。
さらに次のお客様。
また次のお客様。
気付けば、その台の前には人だかり。
「すみません!」
「景品補充お願いします!」
古坂と樋口は慌てて補充へ向かう。
「えっ!」
「こんな人気なの!?」
浜谷も驚く。
「さっきまで人気出ないって言ってましたよね?」
細井も笑う。
「完全に予想外。」
補充しても。
補充しても。
どんどん減っていく。
古坂は笑いながら首を振る。
「まさかこんな人気だとは……。」
樋口も景品を見つめる。
「手のひらサイズっていうのが良かったのかな。」
「集めたくなるのかも。」
夕方。
ついに景品は最後の一個になった。
「まずい!」
「ラス1だ!」
古坂が慌てる。
その時。
矢水がバックヤードへ入ってきた。
「古坂さん。」
「今日、茂田さん休みだから。」
「代わりに発注しておいたよ。」
古坂は目を輝かせる。
「矢水さん!」
「ナイスすぎる!」
樋口も笑顔。
「助かります!」
浜谷もホッとする。
「これで安心ですね。」
すると。
古坂があることに気付いた。
「……あれ?」
「矢水さん。」
「そのポーチ。」
仕事用ポーチには、小さなガイコツがぶら下がっていた。
浜谷が驚く。
「えっ!」
「もう持ってるんですか!?」
矢水は少し照れながら笑う。
「これ。」
「可愛くて、この前買っちゃった。」
「気付いたら付けてた。」
古坂は思わず笑った。
「矢水さん。」
「先見の明があったんだ。」
樋口も笑う。
「流行るって分かってたんですね。」
矢水は首を横に振る。
「そんなつもりじゃなかったんだけど。」
「可愛いなって思っただけ。」
浜谷はガイコツを見つめる。
「人気出なそうって決めつけちゃダメですね。」
古坂も頷く。
「景品って。」
「本当に何が人気になるか分からない。」
その日も阿佐野店では、スタッフの予想を裏切りながら、一つ、また一つとガイコツたちが新しい持ち主のもとへ旅立っていったのだった。