ある日。
大学の健康診断。
身長、体重を測り終えた浜谷は、結果を見て固まった。
「……あれ。」
「太ったなぁ。」
ファンステで働き始めた頃より、体重はプラス6kg。
原因はすぐに思い当たった。
休憩時間のハンバーガーセット。
夜中につい食べてしまうカップラーメン。
そして何より——
大学の学食のカキフライ。
「昼も。」
「夜も。」
「ほぼ毎日食べてたな……。」
浜谷は深く反省する。
「よし。」
「カキフライ禁しよう!」
数日後。
阿佐野店。
「おはようございます!」
開店準備中、浜谷は茂田と細井に健康診断の結果を話していた。
「というわけで。」
「しばらくカキフライ禁止です。」
細井は笑う。
「そんなに好きだったんだ。」
「めちゃくちゃ好きです。」
茂田も頷く。
「誘惑に負けちゃダメニダ。」
「頑張ります!」
そう力強く宣言した浜谷。
しかし。
クレーンゲームコーナーから会話が聞こえてきた。
高村。
矢水。
二人が楽しそうに話している。
「ねぇねぇ。」
「あそこの定食屋のカキフライ、美味しいらしいよ!」
「えー!」
「食べたいですね!」
「今度行きましょう!」
浜谷の耳がピクリと動く。
(カキフライ……。)
思わず生唾を飲み込む。
(いやいや。)
(我慢だ。)
その時だった。
新景品が届く。
箱を開けると、中には——
リアルなカキフライのキーホルダー。
茂田が目を輝かせる。
「可愛いニダ!」
細井も手に取る。
「すごいリアル!」
「おいしそー!」
浜谷は景品を見つめたまま固まる。
「カキフライ……。」
細井がニヤリと笑って近付いてくる。
「浜谷くん。」
「見て!」
「カキフライ!」
「カキフライ……。」
昼休憩。
茂田がみんなの前に弁当を並べる。
「今日はみんなのために。」
「カキフライ弁当頼んどいたニダ!」
「わーい!」
細井、高村、矢水は大喜び。
浜谷だけが固まる。
「カキフライ……。」
茂田はニヤニヤしながら浜谷の前へ。
「ほぉら。」
「琉くん。」
「カキフライだよ〜。」
弁当をゆっくり見せつける。
「目の前にあるニダ〜。」
浜谷の目が泳ぐ。
「カキフライ……。」
細井も笑いながら追い打ちをかける。
「我慢しなよ〜。」
「カキフライ……。」
「カキフライ……。」
浜谷の目がだんだん鋭くなっていく。
「カキフライ……。」
「カキフライ!!」
次の瞬間。
浜谷は勢いよく弁当を開けると、カキフライを口いっぱいに頬張った。
「おいしいっ!」
その様子を見て、
高村と矢水は大笑い。
茂田と細井はお腹を抱えて笑っている。
高村は笑いながら言った。
「二人ともカキフライの悪魔じゃん!」
矢水も苦笑い。
「浜谷さん、カキフライになると理性失うんですね。」
浜谷は夢中で食べ続け、あっという間に完食。
満足そうにお茶を飲む。
そして我に返る。
「あっ……。」
静まり返る休憩室。
浜谷は照れ笑いを浮かべながら頭をかいた。
「……今日だけですよ!」
その言葉に、休憩室は再び大きな笑いに包まれた。
結局その日、浜谷の「カキフライ禁」は、わずか数日で幕を閉じたのだった。