午後の阿佐野店。
店内を巡回していた浜谷は、メダルゲームの椅子の下で何かを見つけた。
「……あれ?」
拾い上げる。
「うわぁ。」
「財布だ……。」
すぐにカウンターへ持っていく。
「茂田さん。」
「財布の落とし物です。」
茂田は受け取りながら頷く。
「ありがとうニダ。」
すると、高村が笑った。
「メダルゲームに夢中になると、財布忘れる人多いんだよね。」
浜谷は驚く。
「そうなんですか?」
「うん。」
「景品とかメダルに夢中になっちゃうから。」
「へぇ……。」
財布はすぐに落とし物として保管された。
しばらくして。
今度は入口付近で茂田が声を上げる。
「あっ。」
「傘の落とし物ニダ。」
高村が笑う。
「雨の日は傘が多いね。」
「忘れないようにって思ってても。」
「意外と置いて帰っちゃうんですよね。」
浜谷は感心する。
「落とし物にも季節がありますね。」
「そうそう。」
「冬は手袋。」
「夏は帽子も多いよ。」
そんな話をしていると。
クレーンコーナーから矢水がやって来た。
「茂田さん。」
「これも落とし物です。」
手に持っていたのは、家庭用ゲーム機のコントローラー。
一同が固まる。
「……。」
茂田が思わず聞く。
「なんで!?」
高村は笑いながら答える。
「お子様が持って来て、そのまま忘れたのかもね。」
浜谷も苦笑い。
「ゲームセンターにゲームのコントローラー忘れるって面白いですね。」
みんなで笑っていると。
今度は細井がクレーンコーナーからやって来た。
「また落とし物。」
手には、大きなぬいぐるみ。
浜谷は目を丸くする。
「えっ!?」
「クレーンゲームの景品ですか!?」
「うん。」
「景品口に置いたまま帰っちゃったみたい。」
浜谷は思わず声を上げる。
「せっかく取ったのに!?」
高村は笑って頷く。
「これもよくあるよ。」
「取れた安心感で、そのまま帰っちゃう人。」
「結構いるんだ。」
浜谷は驚きを隠せない。
「財布も。」
「傘も。」
「コントローラーも。」
「景品まで……。」
「ゲームセンターっていろんな落とし物がありますね。」
茂田は笑顔で頷く。
「だから大事に保管するニダ。」
「持ち主が困ってるかもしれないからね。」
その日の閉店後。
落とし物棚には、財布、傘、コントローラー、そしてぬいぐるみがきれいに並んでいた。
浜谷はそれを見ながら、小さくつぶやく。
「みんな。」
「ちゃんと持ち主のところへ帰れるといいですね。」
茂田も優しく頷く。
「きっと帰れるニダ。」
その日も阿佐野店では、お客様の”大切なもの”を預かりながら、スタッフたちは誰かが笑顔で取りに来るのを静かに待っていた。