阿佐野店。
外では朝から冷たい雨が降っていた。
「今日は一日雨ですねぇ。」
出勤してきた浜谷が窓の外を見上げる。
「その分、お客さんも室内で遊びに来てくれるかもね。」
細井が笑顔で答える。
浜谷はいつものようにメダルコーナーを巡回していた。
すると。
「ピーーーッ!」
一台のメダルゲームが突然エラーを起こす。
「来たか。」
浜谷は工具箱を持って駆け寄る。
説明書を開き、原因を探す。
しかし。
「……分からん。」
配線を確認しても異常なし。
センサーも正常。
何度再起動してもエラーが消えない。
「うーん……。」
浜谷は原因不明のエラーと格闘を始めた。
その頃。
クレーンゲームコーナーでは。
茂田と古坂が新景品の展開について話し合っていた。
「この景品は橋渡しがいいニダ。」
「私はフック設定の方が面白いと思う。」
二人の意見は真っ向からぶつかる。
「いや、この景品は……。」
「でも、お客様目線なら……。」
普段は息の合う二人だったが、この日ばかりは譲らない。
少しだけ。
店内の空気が重くなった。
細井と高村は顔を見合わせる。
「珍しいですね。」
「うん……。」
その頃。
浜谷はまだメダルゲームの前。
「ここじゃない……。」
「じゃあこっちか?」
汗をかきながら原因を探し続ける。
「ん?ここのホッパーにメダル入ってるのおかしくね?」
しばらくして。
茂田が小さくため息をついた。
「……冨美子、ごめんニダ。」
古坂も少し照れ笑いする。
「私も言い過ぎたかも。」
二人は顔を見合わせる。
「やっぱり。」
「一緒に考えよ。」
「そうニダ。」
握手こそしなかったが、二人の表情はもういつもの笑顔だった。
高村がほっと息をつく。
「良かった。」
細井も笑う。
「いつもの阿佐野店だ。」
その頃。
「……よし!」
浜谷が声を上げる。
「直った!」
原因は、本来メダルが入らないホッパーにメダルが入り込んでいたことだった。
ようやくエラーが解消された。
「よっしゃぁ!」
工具を片付け、カウンターへ戻る。
「終わりました!」
細井が拍手する。
「お疲れさま!」
古坂も笑顔。
「助かったよ。」
茂田も親指を立てる。
「流石ニダ!」
「琉くんも頑張ったニダ!」
浜谷は周りを見回した。
さっきまでとは違い、店内には穏やかな空気が流れている。
浜谷は首をかしげた。
「……で。」
「何があったんですか?」
一瞬。
全員が固まる。
茂田。
古坂。
高村。
細井。
四人は顔を見合わせる。
そして――
「いや、お前何も知らんのかーい!!」
店内にツッコミが響く。
浜谷は目を丸くする。
「え?」
「僕、ずっとメダルゲーム直してたんで……。」
細井は笑いながら肩を叩く。
「ほんとに何も知らなかったんだ。」
高村も大笑い。
「別世界にいたもんね。」
古坂は苦笑い。
「エラーと戦ってたからね。」
茂田も笑う。
「今日は琉くんも大変だったニダ。」
浜谷もつられて笑った。
外では相変わらず雨が降り続いている。
けれど。
阿佐野店の中は、雨を忘れるくらい温かな空気に包まれていた。
まさに――
雨降ってTHE あったまる。
そんな一日だった。