お盆が終わり、店内も少し落ち着きを取り戻していた。
この日、浜谷は茂田から一つの仕事を任される。
「今日はヒムについて回ってみて。」
「メンテナンスの見学ニダ。」
「はい!」
浜谷は少し緊張しながら、メダルコーナーへ向かった。
そこには、工具箱を持った日村がいた。
「オハヨウゴザイマス。」
「今日はよろしくお願いします!」
「ヨロシクオネガイシマス。」
相変わらず声は小さい。
それでも表情は優しかった。
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最初に向かったのは、メダルゲーム。
エラーが出て動かなくなっていた。
日村は筐体を開ける。
「あ、ココガ……ツマッテ……ソレデ……。」
「コノブヒンガ……。」
浜谷は耳を澄ませる。
「えっと……。」
「もう一回お願いしてもいいですか?」
「アッ、スイマセン。」
日村は少し照れながら、もう一度説明する。
しかし。
「ココヲハズシテ、コッチモ……ソウスルト……。」
今度はものすごく早口だった。
「えっ……。」
「すみません、もう一回だけ……。」
「アッ、スイマセン。」
浜谷は心の中で思う。
(声は小さいのに……。)
(めちゃくちゃおしゃべりだ……。)
⸻
それからも日村の説明は続く。
「コノエラーハ……。」
「コッチノセンサーガ……。」
「ダカラ……。」
説明はとても丁寧だ。
知識も豊富。
ただ、とにかく声が小さくて早い。
浜谷は必死にメモを取りながら付いていく。
何度も聞き返してしまうが、日村は嫌な顔一つしない。
「イイデスヨ。」
「ワカルマデ……。」
その優しさに、浜谷は少し安心した。
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昼頃。
クレーンゲームの呼び出しが入る。
日村は素早く工具を持って向かう。
「あ、コレハ……。」
筐体を開けると、数十秒で原因を見つけた。
部品を調整し、動作確認。
「あ、ナオリマシタ。」
「すごい……!」
浜谷は思わず声を上げる。
「こんなに早く直せるんですね。」
日村は少し照れながら笑う。
「ナレ……デス。」
浜谷は改めて思った。
(日村さん、本当にすごい人なんだ。)
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閉店後。
工具を片付けながら日村が小さく言う。
「キョウハ……アリガトウゴザイマシタ。」
「こちらこそありがとうございました!」
「まだ全然分からなかったですけど……。」
「でも、すごく勉強になりました。」
日村は少し笑う。
「アセラナクテ……イイデス。」
「スコシズツ……。」
浜谷は力強くうなずいた。
「はい!」
メンテナンスは、工具を使うだけではない。
経験。
観察力。
そして積み重ねてきた知識。
そのすべてがあって初めて、お客様の「遊べない」を「遊べる」に変えられる。
浜谷は、日村という頼れる先輩の背中を見つめながら、新しい目標を胸に刻んだ。
店長をはじめベテランメンバーはみんな日村さんのことをヒムって言ってたなぁと。あだ名で呼ばれるのが少し羨ましかったり…