休日の阿佐野店。
開店直後から店内は大賑わい。
「手直しお願いしまーす!」
「メダル詰まりました!」
「両替お願いしまーす!」
あちこちから呼び出しが飛ぶ。
浜谷は店内を走り回っていた。
「はーい!」
クレーンゲームを直し。
メダルゲームへ駆けつけ。
カウンター対応もこなす。
気付けば汗だく。
「今日すごいですね……。」
浜谷が息を切らしながら言うと、細井は笑った。
「土日はこんなもんだよ!」
そこへ茂田もやって来る。
「今日は覚悟してね。」
「忙しいよ。」
「はい!」
浜谷は再び店内へ飛び出していく。
昼前。
景品補充を終えた浜谷は思わず壁にもたれた。
「はぁ……。」
「ここ……地獄だ……。」
その一言を細井は聞き逃さなかった。
「ん?」
「今、地獄って言った?」
浜谷は慌てて笑う。
「違います違います!」
「嬉しい悲鳴です!」
「ならよし。」
細井は笑いながら浜谷の背中を軽く叩いた。
午後。
店内はさらに混み合う。
それでも浜谷は走り続ける。
すると。
「取れたー!」
子どもの大きな声。
クレーンゲームで景品を獲得したらしい。
隣では。
「やった!」
メダルゲームでジャックポットが当たり、お客様が仲間とハイタッチをしている。
「ありがとう!」
「また来るね!」
そんな言葉が次々と聞こえてきた。
浜谷はその笑顔を見て、小さく微笑む。
(忙しいけど……。)
(この笑顔を見ると。)
(頑張ってよかったって思える。)
休憩時間。
バックヤード。
椅子に座った浜谷は、大きく息を吐いた。
「疲れたぁ……。」
茂田がスポーツドリンクを差し出す。
「良かったら飲むニダ。」
「ありがとうございます!」
細井は笑いながら聞く。
「どう?」
「阿佐野店。」
浜谷は少し考えたあと答えた。
「忙しい時は地獄です。」
二人は笑う。
「でも。」
「お客様が笑って帰る姿を見ると。」
「天国ですね。」
茂田は満足そうに頷いた。
「それが接客業。」
「大変なこともある。」
「でも、その分だけ嬉しいこともあるニダ。」
「はい。」
営業終了後。
シャッターを閉めながら、浜谷は空を見上げた。
「今日の阿佐野店は。」
「天国だったのか。」
「地獄だったのか。」
少し考えて笑う。
「……両方ですね。」
細井は笑いながら言った。
「正解。」
茂田も頷く。
「だからまた明日も頑張れるニダ。」
浜谷は大きく返事をした。
「はい!」
忙しくて息つく暇もない日もある。
それでも、お客様の笑顔があるから頑張れる。
浜谷にとって阿佐野店は――
天国でもあり、地獄でもある。
そんな大切な場所なのだった。