朝。
浜谷はいつものように阿佐野店へ向かっていた。
警備室で入館証を出そうとした、その時。
「あ。」
ポケットを探る。
もう一度探る。
カバンも探る。
「……ない。」
入館証を家に忘れてきた。
警備員が少し困った表情で言う。
「なんで忘れることがあるんですか。」
「次から気を付けてくださいよ。」
「すみません!」
浜谷は頭を下げた。
(……よくない予感がする。)
そんなことを思いながら急いで更衣室へ向かった。
着替えを済ませようとすると、インカムから古坂の声が飛ぶ。
「浜谷くん!」
「早く着替えて売り場出てきて!」
「もうエラーが多発して、大澤さんが一人で頑張ってる!」
浜谷は慌てて返事をする。
「はい!」
制服に着替え、工具箱を持って売り場へ走る。
目の前に広がっていたのは――
メダルゲーム三ブース停止。
さらにクレーンゲーム一ブース停止。
そして。
シューティングゲームの前では、大澤が汗を流しながら修理していた。
「浜谷くん!」
「助かった!」
浜谷は思わず苦笑いする。
「……これは。」
「よくない予感、的中ですね。」
大澤も苦笑い。
「今日は朝から大騒ぎだよ。」
浜谷は深呼吸する。
「よし!」
「やるぞ!」
まずはメダルゲーム。
説明書を確認。
エラーコードを調べる。
配線を点検。
一台復旧。
すぐ次の台へ。
その間も、大澤はシューティングゲームとクレーンゲームを修理していく。
浜谷はインカムを押した。
「古坂さん!」
「お店、頼みましたよ!」
すぐに返事が返ってくる。
「任せて!」
「こっちは私が回すから!」
浜谷は笑った。
「お願いします!」
そこからは時間との勝負だった。
一台。
また一台。
汗だくになりながら、大澤と協力してエラーを直していく。
そして――
最後の一台。
「……よし!」
エラー解除。
画面が正常に戻る。
「直った!」
浜谷と大澤は思わず顔を見合わせる。
「終わったぁ……。」
二人ともその場に座り込みそうになる。
汗で制服はびっしょり。
腕も足もくたくただった。
浜谷は笑いながら言う。
「直ったから良かったですね。」
「なんか。」
「いい予感がしてきました。」
大澤も笑った。
「朝とは真逆だね。」
営業終了後。
浜谷は警備室の前を通る。
朝の警備員が浜谷に声を掛けた。
「朝は少しきつく言ってしまって、すみませんでした。」
浜谷は笑顔で首を振る。
「いえ!」
「僕が忘れたのが悪いので!」
「ありがとうございました!」
警備員も笑顔になる。
「気を付けて帰ってくださいね。」
「はい!」
店を出る浜谷。
朝はよくないFEELINGで始まった一日。
でも。
たくさんのエラーを乗り越え。
仲間と力を合わせ。
最後は笑顔で終わることができた。
浜谷は夜空を見上げ、小さく笑う。
「今日は。」
「いいFEELINGでした。」
そんな一日だった。