ある日の阿佐野店。
カウンターでは浜谷と細井が、お客様対応の合間に話していた。
浜谷は満面の笑みで言う。
「ちゃかじ!」
細井は首をかしげる。
「今日やたら言うけど。」
「それ何?」
浜谷は得意げに胸を張る。
「ちゃかじ!の意味はですね――」
「すみませーん!」
お客様に呼ばれる。
「あ、はーい!」
浜谷は慌てて駆けていった。
細井は一人取り残される。
「気になる……。」
そこへ。
茂田と古坂がやって来た。
茂田が笑顔で一言。
「ちゃかじ!」
古坂も続く。
「ちゃかじ!」
細井は目を丸くする。
「二人まで!?」
「意味は何なんですか?」
茂田が説明しようと口を開く。
しかし。
プルルルル。
茂田の携帯が鳴る。
「あ、本部からニダ。」
同時に。
「宅配便でーす。」
古坂が入口へ向かう。
細井はがっくり。
「また聞けなかった……。」
しばらくして。
今度は高村と矢水が巡回から戻ってくる。
高村。
「ちゃかじ!」
矢水。
「ちゃかじ!」
細井は思わず叫ぶ。
「またぁ!?」
「だから意味!」
「意味を教えてください!」
その瞬間。
茂田がインカムを押す。
「高村さん。」
「矢水さん。」
「休憩の時間ニダ!」
「はーい!」
二人は笑顔でバックヤードへ。
細井は肩を落とす。
「また逃げられた……。」
細井は半ば諦めながら店内を巡回する。
すると。
クレーンゲームの前で大澤が修理をしていた。
「大澤さん。」
「どうですか?」
「直ります?」
大澤は工具を回しながら笑う。
「うん。」
「あと少し。」
細井はほっと息をつく。
「良かった。」
「ちゃかじって言わなかった。」
その瞬間。
大澤は何気なく言った。
「あ。」
「細井ちゃん。」
「事務所からちゃかじ持ってきてくれない?」
細井は固まる。
「……。」
「油断してた!」
ぷんぷん怒りながら事務所へ向かう。
「もう!」
「ちゃかじって何なのよー!」
「名詞なのか動詞なのかすらわからない!」
そこへ。
接客を終えた浜谷が戻ってきた。
「細井さん!」
「ちゃかじの意味はですね!」
細井は目を輝かせる。
「意味は……?」
ごくり。
唾を飲み込む。
浜谷は満面の笑みで言った。
「ちゃかじは。」
「サロミンと同じです!」
細井は数秒固まる。
「……。」
「サロミンが何ぃぃぃぃぃ!!」
店内にツッコミが響く。
その声を聞いた茂田、古坂、高村、矢水、大澤は思わず吹き出した。
そうしてみんなは口を揃えて言った。
「今日の細井ちゃん、ちゃかじ!」
結局その日も。
細井は「ちゃかじ」の意味を知ることはできなかった。
そんな、少しだけ不思議で。
いつも通り賑やかな阿佐野店の一日だった。