今日は久しぶりの原町中央店勤務。
最近は阿佐野店で働くことが多い浜谷だが、所属はあくまで原町中央店。慣れ親しんだ店内に入ると、どこか安心するものがある。
「おはようございまーす!」
出勤して着替えを済ませ、売り場へ出た浜谷。
しかし、その直後だった。
「浜谷くーん!」
高崎が手招きしている。
「はい!」
「このメダルゲーム、センサーのエラー出てるんだけど見てくれない?」
「分かりました!」
出勤早々のメンテナンス。
浜谷は工具を持って筐体の前へ向かった。
エラー内容を確認し、問題がありそうなセンサーを取り外してみる。
「……あ。」
配線を見る。
「断線してますね。」
「交換できそう?」
「ちょっと在庫見てきます!」
浜谷は交換部品を探しに向かう。
棚を確認。
工具箱の周辺も確認。
別の部品置き場も探す。
しかし――。
「ないなぁ……。」
交換できるセンサーが見つからない。
浜谷は高崎のところへ戻った。
「高崎さん、在庫なかったです。」
「あらー。」
「在庫がないので、僕じゃどうしようもないですね。次、生田さん来る時にお願いします。」
「そうしよっか。」
浜谷は筐体を見る。
「……一敗目。」
「何が?」
「いや、こっちの話です。」
今日最初のメンテナンス。
敗北。
とはいえ、まだ一日は始まったばかり。
すると今度は、別のメダルゲームで通信エラーが発生した。
「次はこっちか。」
エラー内容を見る。
「あ、これはやったことある。」
浜谷は迷わず再起動をかける。
しばらく待つ。
そして――。
正常画面。
「よし!」
無事復旧。
「一勝目!」
先ほどの一敗を、早くも取り返した。
その後。
今度はクレーンゲーム。
「アーム動かないな……。」
操作しても、アームが正常に動かない。
浜谷は内部を確認する。
「なんだこれ……。」
一つずつ原因を探る。
配線。
モーター。
各部品。
しばらく苦戦していると。
「ん?」
浜谷が顔を近づける。
「これか?」
歯車を見る。
うまく噛み合っていない。
位置を調整し、慎重に噛み合わせる。
「これでどうだ。」
動作確認。
アームが動く。
「よっしゃ!」
二勝目。
さらにその後。
またメダルゲーム。
今度はメダルが内部で詰まっていた。
「これは初めてだな……。」
浜谷は少し考える。
経験したことのないエラー。
しかし、すぐに諦めることはしない。
内部を確認しながら、メダルがどこを通っているのかを追っていく。
「ここじゃない。」
さらに奥。
「……あ。」
詰まっている場所を発見。
慎重に取り除く。
動作確認。
正常。
「直った!」
初見のエラーにも、自力で対応できた。
三勝目。
しばらくして。
イベントコーナーの近くで川原と顔を合わせる。
「浜谷さん、お疲れ様です。」
「お疲れ様です!」
浜谷はどこか満足そうだった。
川原が首をかしげる。
「なんか嬉しそうですね。」
「いやぁ。」
浜谷は得意げに言う。
「今日は三勝一敗ですね。」
「何の成績ですか?」
「メンテです。」
川原が笑う。
「数えてるんですか?」
「今日は数えてます!」
朝一番こそ負けた。
しかし、そこから三連勝。
通信エラー。
クレーンゲーム。
メダル詰まり。
しかも最後の一つは、初めて遭遇した症状を自力で直した。
「今日は勝ち越しですよ。」
「よかったですね!」
「このまま気持ちよく帰ります!」
そして時間は流れ――。
退勤まで、あと十分。
浜谷は時計を見る。
「よし。」
「あと十分!」
今日はいい一日だった。
最初の一敗こそあったものの、その後は三連勝。
このまま何事もなく終われば――。
その時。
メダルゲームからエラー音が響いた。
「……。」
浜谷が止まる。
ゆっくり振り返る。
「……マジ?」
筐体へ向かい、エラーを確認する。
内部を見る。
少し触ってみる。
「……。」
時計を見る。
退勤まで、あと十分。
もう一度筐体を見る。
「これ。」
「十分じゃ無理だな。」
しばらく考えた浜谷だったが、無理に手を出すことはしなかった。
「……諦めよう。」
次の日には生田が来る。
中途半端に分解して時間切れになるより、任せた方がいい。
浜谷は静かに工具を片付けた。
そこへ川原が通りかかる。
「あれ?」
「浜谷さん、さっき三勝一敗って言ってませんでした?」
浜谷は遠い目で答える。
「三勝二敗になりました。」
「最後に負けたんですね。」
「はい……。」
今日の浜谷。
最初のエラーで、一敗。
そこから怒涛の三連勝。
そして――。
最後の最後で、もう一敗。
浜谷は退勤しながら呟いた。
「初めの一敗……。」
少し間を置く。
「あ、最後も。」
本日の戦績――三勝二敗。
それでも。
しっかり勝ち越しである。