阿佐野店。
浜谷はメダルゲームコーナーで、一台の筐体を開けていた。
「よし、こんなもんかな」
少なくなっていたメダルの補充を終え、内部を軽く確認する。
問題なし。
あとは扉を閉めるだけ。
浜谷は扉に手をかけ、そのまま勢いよく閉じた。
ばーん!!!
「うわっ!!」
すぐ近くにいた細井が、ビクッと肩を跳ねさせた。
「びっくりした!!」
「あっ、すみません!」
浜谷は慌てて振り返る。
「思ったより勢いついちゃいました」
「もう、何事かと思ったよ!」
「爆発したみたいな音でしたね」
「自分で言う?」
細井は胸元に手を当てる。
「心臓止まるかと思った」
「そこまで!?」
「殴るよ?」
「一発だけですよ?」
「一発で仕留めるから」
「すみませんでした」
浜谷は素直に頭を下げた。
今日一発目の、ばーん。
しばらくして。
浜谷は用事があり、事務所へ向かっていた。
扉に手をかけようとした、その時。
陰に誰かがいることなど、浜谷は知る由もない。
そして――。
「わーっ!!!」
「うわぁぁぁ!!!」
茂田だった。
浜谷はあまりの驚きに、その場で大げさに後ろへ倒れ込んだ。
ばーん!!!
「アハハハハ!」
「茂田さん!!!」
床に倒れたまま浜谷が叫ぶ。
「何するんですか!」
「そんなに驚くと思わなかった!」
「驚きますよ! 完全に油断してたんですから!」
「いい倒れ方だったニダ」
「評価しなくていいですよ!」
浜谷は起き上がり、服を軽く払った。
「今日なんなんだ……ばーんばーんって……」
「?」
「こっちの話です」
今日二発目の、ばーん。
そして午後。
今度はメンテナンスのことで分からないことがあり、浜谷は大澤を探していた。
「あ、大澤さん」
「ん?」
「ちょっと聞きたいんですけど、この前のメダルゲームの――」
大澤の方へ歩いていく。
その瞬間。
「うおっ!」
浜谷の足がわずかな段差につまずいた。
体が前へ傾く。
目の前には大澤。
「危なっ――」
ぶつかる。
そう思った瞬間、大澤は――。
スッ。
無言で横へ避けた。
「えっ」
支えを失った浜谷はそのまま前へ。
ばーん!!!
壁に激突した。
「…………」
「…………」
大澤が浜谷を見る。
浜谷は壁に手をついたまま固まっていた。
「大丈夫?」
「…………」
浜谷はゆっくり顔を上げる。
そして真っ先に、自分の前歯を触った。
「……よかった」
「?」
「歯が折れてなくて……」
「歯?」
「この前、茂田さんの前歯が折れた話を聞いたばっかりなんで……」
少し離れたところから声が飛んできた。
「呼んだ?」
茂田である。
「呼んでません!」
浜谷は即答した。
大澤は壁と浜谷を交互に見る。
「避けた。」
「いや、避けますよね普通!」
「ぶつかった方がよかった?」
「それはそれで大澤さん吹っ飛ばす可能性あるんでダメです!」
「じゃあ、これで正解」
「正解ですけど壁が不正解でした!」
大澤は少し笑った。
そこへ、先ほど大きな音に驚かされた細井までやってくる。
「今の音なに?」
「浜谷くんが壁にぶつかった」
「また、ばーん?」
「またってなんですか!」
浜谷は思い返す。
メダルゲームの扉を閉めて――。
ばーん。
茂田に驚かされて倒れて――。
ばーん。
大澤を避けようとして壁に激突して――。
ばーん。
「……今日、ばーん多くないですか?」
「多いね」
細井が笑う。
茂田も笑う。
大澤も静かに頷いた。
浜谷はもう一度、念のため前歯を触った。
「とりあえず……歯が無事ならいいです」
「琉くんもダンスして壁にぶつからないようにね!」
「今回はダンスしてないですから!」
今日の阿佐野店。
何かと、ばーん続きの一日だった。