いつもの営業日。
浜谷はメダルコーナーを巡回していた。
すると後ろから――
「わっ!」
「うわぁっ!」
振り返ると、高崎が大笑いしていた。
「アハハハ!」
「びっくりした〜!」
「麻美さん!」
「やめてくださいよ!」
「だって反応がおもしろいんだもん!」
浜谷は苦笑いしながら仕事へ戻る。
しかし、それが始まりだった。
⸻
景品倉庫。
箱を運んでいると、
「わっ!」
「うわっ!」
また高崎だった。
「またですか!」
「成功〜!」
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休憩室。
飲み物を取ろうとすると、
「わっ!」
「うわぁ!」
「麻美さん!」
「もう勘弁してください!」
その頃には浜谷は、少しの物音でも肩が跳ねるようになっていた。
誰かがドアを閉めても、
インカムが鳴っても、
「ビクッ!」
と反応してしまう。
その様子を見た石村が笑う。
「完全に条件反射になってるね。」
山神も一言。
「おぅ。」
「驚きすぎ。」
事務所は笑いに包まれた。
⸻
昼過ぎ。
高崎は悪そうな笑顔で古坂へ近づく。
「古坂さん。」
「ちょっと協力して。」
「え?」
「面白いことするから。」
古坂は少し困った顔をした。
「えぇ……。」
「そんなに驚くかな?」
「絶対驚く!」
結局、古坂も笑いながら協力することになった。
⸻
夕方。
浜谷は更衣室で忘れ物を取りに行き、戻ってきた。
事務所のドアを開ける。
その瞬間。
「わっ!」
「うわぁっ!」
まず、高崎が物陰から飛び出してきた。
浜谷は胸を押さえる。
「もう!」
「また麻美さんですか!」
高崎は笑いが止まらない。
「まだ終わりじゃないよ。」
「え?」
浜谷が事務所へ一歩入った、その時だった。
ガタッ。
机の下が動く。
「……え?」
ゆっくりと。
机の下から何かが這い出してくる。
黒髪のロングヘア。
顔を隠したまま、こちらへ近づいてくる。
浜谷の思考が止まった。
「……。」
「……え?」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
腰が抜け、その場に座り込んでしまう。
「む、無理です!」
「怖い怖い怖い!」
黒髪の人物はゆっくり顔を上げた。
「ふふっ。」
カツラを外す。
「古坂さん!?」
「ごめんね。」
「麻美さんにお願いされちゃって。」
浜谷は力が抜け、その場に寝転がった。
「本当に幽霊かと思いました……。」
⸻
事務所では大爆笑。
高崎は涙が出るほど笑っている。
「最高!」
「今の反応百点!」
古坂も笑いながら謝る。
「本当にごめんね。」
石村は笑いをこらえながら言う。
「ここまで見事に引っ掛かる人も珍しい。」
山神も静かに笑った。
「おぅ。」
「いい反応。」
浜谷は苦笑いするしかなかった。
「もう誰も信用できません……。」
その言葉に、事務所は再び笑いに包まれた。
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それからしばらくの間。
浜谷は物陰を通るたびに周囲を確認するようになった。
すると高崎が笑いながら一言。
「しばらくはイタズラしないから安心して〜。」
浜谷は少し考えてから答えた。
「……その言葉が一番信用できません。」
事務所には今日一番の笑い声が響いた。