ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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みんなの呼び方

ある日の昼休み。

 

休憩室でお弁当を食べていた浜谷は、ふと気になったことがあった。

 

(そういえば……。)

 

(みんな、お互いの呼び方ってバラバラだな。)

 

普段は何気なく聞いていたが、改めて考えると不思議だった。

 

⸻

 

まずは店長・茂田。

 

「石村さん。」

 

「冠。」

 

「麻美。」

 

「邦美。」

 

「冨美子。」

 

「ヒム。」

 

「藤。」

 

「奏子。」

 

「相馬さん。」

 

そして、

 

「琉くん。」

 

浜谷は思う。

 

(茂田さんらしいな。)

 

親しい人ほど呼び方も自然と変わっている。

 

⸻

 

次は石村。

 

「浜谷くん。」

 

「大沼ちゃん。」

 

以外は全員「さん」付け。

 

「石村さんって、意外ときっちりしてるんだ。」

 

浜谷は一人納得する。

 

⸻

 

続いて山神。

 

「千歌ちゃん。」

 

「石村。」

 

「ヒム。」

 

「高崎。」

 

「琉くん。」

 

「藤。」

 

「大沼ちゃん。」

 

それ以外は「さん」付け。

 

長い付き合いの人だけ、少し砕けた呼び方になっていた。

 

⸻

 

日村は、

 

「浜谷くん。」

 

以外は全員「さん」付け。

 

いかにも日村らしい。

 

⸻

 

そして高崎。

 

「しげちゃん。」

 

「石村氏。」

 

「大沼ちゃん。」

 

「浜谷くん。」

 

それ以外は基本的に「さん」付けだった。

 

浜谷は思わず口にする。

 

「あれ?」

 

「麻美さんも『大沼ちゃん』なんですね。」

 

「うん!」

 

高崎は笑う。

 

「なんとなく最初からそう呼んでたら、そのままになっちゃった!」

 

すると事務所に入ってきた大沼も話を聞いて笑った。

 

「私、みんなから『大沼ちゃん』って呼ばれること多いんだよ。」

 

浜谷は少し驚く。

 

「えっ……。」

 

「じゃあ僕だけ『大沼さん』ですか?」

 

その言葉に石村が吹き出す。

 

「そうだね。」

 

「浜谷くんだけかな。」

 

山神も短く言う。

 

「おぅ。」

 

「琉くんが1番後輩だからな」

 

高崎も笑う。

 

「なんか浜谷くんらしいよね〜。」

 

大沼は優しく首を振った。

 

「私はどっちでも嬉しいよ。」

 

「浜谷くんの呼び方、丁寧で好きだし。」

 

浜谷は少し照れながら笑った。

 

「じゃあ……。」

 

「しばらくはこのままでいきます。」

 

「もっと慣れてきたら、皆さんの下の名前で呼びたいですね。」

 

⸻

 

その日の営業中。

 

「浜谷くん!」

 

「琉くん!」

 

「浜谷くん!」

 

「琉くん!」

 

店内のあちこちから自分を呼ぶ声が聞こえる。

 

気付けば、ほとんどのスタッフが「浜谷くん」と呼び、

 

茂田と山神だけが「琉くん」と呼んでいた。

 

呼び方一つにも、その人らしさや人との距離感が表れている。

 

そんな小さな違いに気付いた浜谷は、少しだけこの職場を前より深く知れた気がした。

 

「はい!」

 

今日もファンステージには、いつも通り温かい声が響いていた。

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