原町中央店。
休憩室。
茂田、高崎、相馬、藤屋。
四人が休憩を取っていた。
何気ない雑談の途中。
藤屋が思い出したように言った。
「そういえば、この前喫茶店に行ったら浜谷くんがいて」
「琉くん?」
茂田が反応する。
「はい」
「一人で?」
「一人で」
高崎が笑う。
「浜谷くん、一人で喫茶店行くんだ」
「それは別にいいんだけど」
藤屋が続ける。
「すごいもの食べてて」
「すごいもの?」
「パフェ」
相馬が首を傾げる。
「パフェ?」
「巨大なパフェ」
「巨大?」
「これくらい」
藤屋が両手で大きさを表現する。
「えぇ!?」
高崎が目を丸くする。
茂田も驚いた。
「ちょっと待って」
「はい」
「琉くんって小食じゃなかったっけ?」
「私もそう思ってたけど」
相馬が頷く。
「浜谷くん、あんまり食べないイメージあるね」
「そう!」
藤屋が言う。
「だから私もびっくりして」
その時。
休憩室の扉が開いた。
「お疲れ様です」
浜谷だった。
「あ」
四人が一斉に浜谷を見る。
「……なんですか?」
浜谷が立ち止まる。
「なんで全員こっち見てるんですか?」
茂田が立ち上がる。
「琉くん!」
「はい?」
「パフェ食べたニダ!?」
「……はい?」
「この前、喫茶店で!」
浜谷の目が泳ぐ。
「なんで知ってるんですか!?」
藤屋が手を挙げる。
「私もいたから」
「え!?」
浜谷が藤屋を見る。
「ふじさん、あの喫茶店にいたんですか!?」
「いたよ」
「全然気づかなかった!」
「浜谷くん、パフェしか見てなかったもん」
「恥ずかしい……!」
高崎が笑う。
「浜谷くん、小食じゃないの?」
「小食ですよ」
「巨大パフェ食べてるじゃん!」
「パフェは別です」
「何が別なの!?」
「パフェは食べられます」
相馬が笑う。
「ご飯はあんまり食べないのに?」
「そうですね」
「巨大パフェは?」
「食べられます」
「巨大でも?」
「食べられます」
茂田が腕を組む。
「意味が分からないニダ」
「僕も分かりません」
「本人も分かってない!」
藤屋が笑う。
「しかも浜谷くん、めちゃくちゃ速かったよ」
「え?」
「私がコーヒー飲んでる間に、どんどんなくなっていって」
「そんな速かったですか?」
「速かった」
「無心で食べてたんで」
高崎が吹き出す。
「巨大パフェを無心で食べる大学生!」
浜谷は恥ずかしそうに頭を掻いた。
藤屋が聞く。
「浜谷くん、あのあとどうしたの?」
「パフェ食べたあとですか?」
「うん」
「海行きました」
「……海?」
四人が止まった。
「はい」
茂田が首を傾げる。
「誰と?」
「一人です」
「一人!?」
「はい。一人で海見てました」
高崎が笑う。
「巨大パフェ食べたあとに!?」
「はい」
相馬が尋ねる。
「何しに行ったの?」
「海を見に」
「そのまんま!」
「何か悩みでもあったの?」
「いや、全然」
「じゃあなんで?」
「なんとなく海見たくなって」
「…………」
四人が黙る。
浜谷だけが普通の顔をしている。
「海、綺麗でしたよ」
「知らないニダ!」
浜谷が首を傾げる。
「そんな変ですか?」
「巨大パフェを一人で食べて、そのまま一人で海を見に行く休日はちょっと気になるよ」
藤屋が笑う。
「そうですかね?」
「ちなみに、そのあと何したの?」
高崎が聞く。
浜谷は少し考える。
「帰りました」
「急に普通!」
相馬が笑う。
「浜谷くんの私生活、知れば知るほど分からなくなるね」
「普通に生活してるだけなんですけど」
「普通……?」
茂田が疑わしそうに浜谷を見る。
浜谷は時計を確認した。
「あ、僕も休憩入ります」
そして。
鞄から昼食を取り出す。
「…………」
高崎が固まった。
「浜谷くん」
「はい?」
「それ何?」
浜谷の手には。
イカの干物。
「イカの干物です」
「それは見れば分かる!」
「じゃあなんで聞いたんですか!」
相馬が覗き込む。
「ご飯は?」
「ないです」
藤屋が浜谷を見る。
「この前、あんな巨大なパフェ食べてたのに?」
「今日はこれで十分です」
浜谷は。
イカの干物を噛む。
茂田が首を傾げた。
「琉くんの食生活、どうなってるニダ……?」
「普通ですよ」
「普通じゃないニダ!」
一人で喫茶店へ行き。
巨大パフェを平らげ。
そのまま。
一人で渚へ向かう。
そして。
今日の昼食は。
イカの干物。
誰にも理解できない。
浜谷の胃袋。
そして。
誰にも全貌が見えない。
浜谷の私生活。
その男、まさに。
渚のハイカラパフェ男。