原町中央店。
ゲームコーナー。
浜谷が歩いていた。
「…………痛っ」
右足を庇いながら。
ゆっくり。
一歩。
また一歩。
その姿を。
川原が見つけた。
「浜谷さん?」
「はい?」
「どうしたんですか、その歩き方」
「…………」
浜谷は立ち止まる。
そして。
深刻な顔で言った。
「僕……」
「はい」
「痛風になったかもしれません……」
「痛風!?」
川原の声が店内に響いた。
「ちょ、声大きいです!」
「だって痛風って!」
「足が痛いんですよ!」
「どこですか?」
「ここら辺」
浜谷が足を指差す。
「原町中央店に来たくらいから痛くて」
「ぶつけたとかじゃなくて?」
「記憶にないです」
「じゃあなんでいきなり痛風なんですか?」
「足が痛いからです」
「判断材料それだけ!?」
浜谷は真剣だった。
「ネットで見たら、痛風って足が痛くなるらしいですよ」
「足が痛くなる病気、ほかにもいっぱいあると思いますけど」
「でも怖いじゃないですか!」
そこへ。
石村がやってきた。
「どうした?」
「石村さん」
川原が言う。
「浜谷さん、痛風らしいです」
「らしいとは言ってないです!」
「自分で言ったじゃないですか」
「『かもしれない』です!」
石村が浜谷を見る。
「浜谷くん、痛風なの?」
「まだ分かりません」
「何食べた?」
「え?」
「最近」
浜谷は考える。
「パフェ」
「…………」
「あと家でよくビール…」
川原が浜谷を見る。
「それが原因じゃないですか?」
「普通ですって!」
石村が腕を組む。
「浜谷くん、まだ若いのに」
「まだ痛風って決まってないです!」
そこへ。
山神が歩いてきた。
「おぅ」
「山神さん!」
浜谷が助けを求めるように見る。
山神が足を引きずる浜谷を見る。
「どうした」
「僕、痛風になったかもしれないです」
「おぅ」
「驚かないんですか!?」
「痛いのか」
「痛いです」
「病院行け」
「正論!」
川原が笑う。
「その通りすぎる!」
「おぅ」
浜谷は足を見る。
「嫌だなぁ……」
「そんなに怖いんですか?」
「そりゃ怖いですよ」
浜谷は遠くを見る。
「もし本当に痛風だったら……」
「だったら?」
「これから俺は……」
妙に神妙な顔になる。
「大学生で痛風持ちになる……」
「ならないでください」
川原が即答した。
「いいから仕事してください!」
石村が吹き出す。
「川原ちゃん、辛辣だな」
「怖いんですよ!」
「まだ診断すらされてないじゃないですか」
山神。
「おぅ」
その時。
浜谷がふと。
靴を見る。
「…………あれ?」
「どうしました?」
浜谷がしゃがむ。
靴を脱ぐ。
そして。
靴の中に手を入れた。
「…………」
何かを取り出す。
小さな。
硬いもの。
「石……?」
沈黙。
川原。
石村。
山神。
三人が浜谷を見る。
「…………」
浜谷も。
小石を見る。
「これが……」
川原が聞く。
「まさか」
浜谷は靴を履き直す。
立ち上がる。
一歩。
二歩。
普通に歩く。
「…………痛くない」
「小石じゃないですか!」
「…………」
「痛風じゃなくて、小石じゃないですか!」
石村が笑い出す。
「浜谷くん!」
「いや、朝からずっと痛かったんですよ!」
「なんで靴の中確認しなかったんですか!」
「まさか石入ってると思わないじゃないですか!」
山神が浜谷を見る。
「痛風」
「やめてください」
「おぅ」
「山神さんまで!」
浜谷は。
手のひらの小石を見る。
朝から自分を苦しめ。
痛風かもしれないと恐怖させ。
さらには。
現役大学生痛風持ちにまでなりかけた。
その正体。
わずか数ミリの。
小石。
川原が笑う。
「なんか残念ですね、浜谷さん」
「何がですか」
「痛風にならなくて」
「怖すぎるだろ!」
原町中央店。
今日も。
浜谷は元気だった。